キャンベル事務局長を有り体に言えば
こうして、コーブ事務局次長の部屋において、キャンベル事務局長とコーブ事務局次長の間で、要領を得ない激論が交わされることとなった。議論の詳細を逐一記載するのも煩雑なので、ここは、要点をかいつまんで示すこととしよう。
キャンベル事務局長がコーブ事務局次長の部屋に、文字どおり、ねじ込んできたのは、わたしの教団内での身分をエリート信徒から聖戦士に変更したいため。しかし、この点については、コーブ事務局次長はにべもなく却下。キャンベル事務局長は抵抗したものの、コーブ事務局次長に言葉巧みに言いくるめられてしまった。事務局長は、有り体に言えばアホ、つまり、こういった理屈の言い合いはサッパリで、事務局次長の敵ではなかった。
ちなみに、事務局次長曰く、「どうして今になって身分変更なのか分からない」と、これは、正直な感想だろう。ただし、キャンベル事務局長は、そもそも「話を聞かない我が道を往くタイプ」なので、今日まで(驚くべきだが)わたしが教団本部にいたことに気付いていなかったと考えられる。
また、キャンベル事務局長の「ブタ野郎ども」を成敗するといった話についても、コーブ事務局次長はまったく相手にせず、「いつまでも子どもみたいに」と、渋い顔をするばかりだった。
結局、キャンベル事務局長は、怒りで顔をグシャグシャにして(しかし、コーブ事務局次長に対し手は上げなかった)、
「うおおぉーーー!!!」
と、まるで猛獣のような雄叫びを上げると、バタンと暴力的に事務局次長の部屋のドアを開け、教団本部の薄暗い廊下の彼方に消えていった。
そして、コーブ事務局次長の部屋には、わたしと事務局次長が残され、
「まったく、あの馬鹿…… 本当に、どうしようもないんだから……」
コーブ事務局次長は、ぼんやりと天井に顔を向け、「ふぅ」とため息をついた。
しかし、事務局次長が疲れたような表情・そぶりを見せたのはその一瞬で、次の瞬間には、わたしに顔を向け、
「ところで、あなた、どうして彼といっしょにいるの? 今日は何があったの??」
「はい、その点につきましては、かくかくしかじかの事情、つまり……」
わたしはコーブ事務局次長に対し、今日の公園での一部始終をかいつまんで説明した(なお、キャンベル事務局長が、こういう前段階・前置き的な話をせず、いきなり「エリート信徒のカトリーナを聖戦士によこせ」と言い出したことも、彼と事務局次長の話がかみ合わず、要領を得ないまま終わってしまったことの要因と思われる)。
ともかくも、わたしの説明が終わると、コーブ事務局次長は、うんうんと何度かうなずき、
「なるほど、そういうことだったのね。ようやく事情が分かってきたわ。それにつけても、あの馬鹿……」
と、もう一度ため息。そして、わたしの顔をギロリとにらみ、
「それに、あなたも……、派手にやってくれたのね」
「いけませんか?」
「いけないわけじゃないけどね」
コーブ事務局次長は、更にもう一度「ふぅ」と、小さくため息をついた。




