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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第15章 常識を外れた人たち
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キャンベル事務局長の馬車にて

 なんだか、妙なことになってしまった。キャンベル事務局長は真っ先に、自分(専用だろう、多分)の馬車に乗り込み、わたしに向かって「早く乗れ」と大声を張り上げている。わけが分からないが、相手が事務局長だけに、逆らわない方がよさそうだ。わたしはプチドラを抱き、事務局長の馬車に乗った。

「よしっ、乗ったな。座ったな。行くぞ、出発進行!」

 と、上機嫌なキャンベル事務局長の合図により、馬車は教団本部に向けて発進した。

 ちなみに、後に確認したところによれば、キャンベル事務局長の馬車に続いたのは、聖戦士を乗せた馬車10台で、チャック支部長や一般信徒を乗せた馬車は、事務局長とは別行動をとり、自分たちの支部に戻っていった。なお、この日の公園での布教活動の主体はチャック支部長の支部の一般信徒であり、聖戦士は、武装盗賊団等による妨害行為を排除するため(実際には、あまり役に立たなかったが)、教団本部が要請を受けて派遣したものだという。

 また、キャンベル事務局長がその場にいた理由は、単に暇だったのでしゃしゃり出てきたのか、教団本部に居づらかったので聖戦士に同道したのか不明であるが、教団としては把握していないらしい。組織のトップの動静を組織として把握していないなんて、一般的にあり得ない話だと思うけど、そもそもアンタッチャブルな事務局長だから、仕方ないだろう。


 馬車が動き出すと、キャンベル事務局長はポケットから怪しげな革袋を取り出し、

「酒は~、飲むべ~し! どうだ、おまえも一杯やるか?」

「いえ、遠慮しておきます」

「そうか、実に残念だな!」

 と、革袋から(キャンベル事務局長言うところの)「酒」を、自らの口の中にドボドボと流し入れた。

 実際、キャンベル事務局長は、飲んだ後、より一層気分を良くして、

「これで、我が事は、半分は成ったようなものだ。あと半分だ。がんばろう~!」

 と、頼まれもしないのに、饒舌に、あるいは情熱的に、とりとめもないことを語り始めた。


 どうでもいい話かもしれないが、その「とりとめもないこと」とは……

 例えば、自分が(キャンベル事務局長のこと、念のため)いかに優秀な、社会的に有用な人物であるかということ。なのに、どういうわけか教団内部では実権がなく、聖戦士を指揮する立場とはいっても現場監督のごとくで、聖戦士を動員する最終的決定権が委ねられていないのは、納得がいかないという。

 でも、それは、事務局長が自分で有用と思っているだけで、他の誰が見ても、キャンベル事務局長に何らかの権限を任せるのは大変危険だと感じるからではないだろうか。ついでに言えば、酒癖は悪いし、暴れるし、備品は壊すし……、そもそも仕事を任せるという以前に、どうしてこんな人がクビにならないで教団に(しかも、名ばかりとはいえ事務局長として)留まっていられるのか、わたしとしては非常に不可解だったりする。

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