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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第14章 公園での流血沙汰
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武装盗賊団は壊滅

 わたしはプチドラを抱き、物陰から歩み出た。公園は、唯一神教の聖戦士と武装盗賊団の間で、文字どおり、血みどろの斬り合い・殴り合いの最中。ただ、そんな中にあっても、わたしの姿は彼らの目に留まったのだろう。唯一神教信徒も武装盗賊団も戦いを止め、わたしに顔を向けた。多分、わたしの服装が宮殿向けのきらびやかなドレスだったので、場違いな雰囲気に思わず体がフリーズしてしまったのだと思う。

 わたしはおもむろに(ただし、特に意味があるわけでなく)ニッコリと笑みを浮かべ、

「あなたたち、公共の場での暴力行為は、言うまでもなく御法度ですよ」

 すると、武装盗賊団の一人(多分、リーダー)は、「はっはっ!」と高らかに笑い、

「ほぉ! どこの貴婦人かは存ぜぬが、我々に意見しようと言うのかな? 実に見上げたド根性だ。面白い、これは実に面白いぞぉ!!」

 わたしは、チラリとプチドラに目を遣り、

「能書きはお終いにして、さっさと片付けちゃいましょう」

 プチドラはこくりとうなずき、口をモゴモゴと動かし始めた。いわゆる呪文の詠唱だろう。

 わたしは右手を高く上げ、叫ぶ。

「唯一神の名において、異教徒に聖なる鉄槌を!」

 わたしの叫びと同時に、黒雲が垂れ込め、幾筋もの稲妻が武装盗賊団の団員をめがけて走った。辺りは閃光に包まれ、すさまじい雷鳴が響き渡る。次の瞬間には、数十個の真っ黒焦げの物体(すなわち、元は武装盗賊団。ただ、唯一神教の聖戦士も幾人か混じっているかもしれない)が転がっていた。


 こうして、武装盗賊団が実にアッサリと片付けられてしまったのを見ると、最初、唯一神教の信徒たちは、何事が起こったのか分からないというように静まりかえった。

 しかし、次の瞬間には「わぁ!」と歓喜の声を上げ、わたしの周りに集まり、「あなたも唯一神に仕える仲間だったのですね!」とか、「これぞ唯一神の奇跡の力だ、素晴らしい!」など、この前に武装盗賊団をやっつけた時と同じような反応を示している。本当のところは、唯一神ではなくプチドラの魔法の力だけど、勘違いするのは彼らの勝手なので、そうさせておこう。

 のみならず、チャック支部長も、ほんの少し前まで絶望的な表情だったのに、

「どなたかは存じませぬが、あなたにも唯一神の『奇跡の力』が備わっていたとは。しかも、唯一神に仕える我等の仲間とお見受けいたします」

 と、今は満面の笑みを浮かべている。なんと言っていいか……、本当に分かりやすい人。

 わたしはチャック支部長を見上げ、

「お久しぶりですね、チャック支部長、わたしを忘れましたか?」

 チャック支部長は、じろじろと(慣用的表現としては)穴の開くほどわたしの顔を見つめると、「ああ!」と驚嘆の声を上げた。以前の部下(当時は支部の一般信徒)が目の前にいるのに、今まで気がついていなかったようだ。

「支部長、その節はお世話になりました。わたしは今現在、教祖様直々の特命を受けて、宮殿に出入りしているのです」

 すると、支部長は「ええっ!?」と仰天し、目を白黒させた。

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