表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第14章 公園での流血沙汰
129/185

神がかり行者は神出鬼没

 武装盗賊団は馬を走らせ、あっという間に、団子状態になった唯一神教の信徒たちを取り囲んだ。唯一神教にも武装盗賊団にも関係のない一般の市民は、既に逃げ出しており、今公園にいるのは、唯一神教信徒と武装盗賊団と、もう一人……のはず。ところが……

「あれ? 神がかり行者はどこに行ったのかしら。おかしいわね」

 神がかり行者は、忽然と姿を消していた。ほんの数秒前まで、唯一神教信徒の団子の中にいたのに。

「あの人は神出鬼没だからね。きっと、こういうこともある」

 プチドラは腕を組み、自らに納得させるように「うんうん」とうなずいている。神がかり行者が神出鬼没という点についてはわたしも同意だけど、せっかく登場したのだから、もう少しストーリー的に盛り上げていってくれてもよかったのに……


 でも、それはそれとして……

 やがて、唯一神教の信徒たちを取り囲んでいる武装盗賊団のうちの一人が(多分、リーダーだろう)、自ら騎乗する馬を半歩前に進めると、右手を上げて合図を送った。すると、先ほどからやかましく耳に飛び込んできていた不気味なコーラスが止み、公園は(音響的には)静けさを取り戻した。

「よこしまなる教えを信奉し、我々に刃向かう、愚かな者どもよ!」

 その武装盗賊団の一人(多分、リーダー)が口を開いた。あえて唯一神教と会話(あるいは交渉)する必要はないと思うけど、武装盗賊団にも、彼らなりの美学やポリシーといったものもあるのだろう。

 ちなみに、教団側から応じたのはチャック支部長で、支部長は、キャンベル事務局長の背中に隠れるようにして、

「異教徒ごときが何を言うか! 唯一神を畏れよ、降参するなら今のうちだぞ!!」

 しかし、緊張しているのか、慣れていないのか、声は上ずっているようだ。


 わたしは物陰でプチドラを軽く抱き上げ、

「唯一神教VS武装盗賊団か。前にもあったわね。唯一神教の聖戦士といっても、所詮、素人。前は全然相手にならなかったわ」

「そうだね。今回も、唯一神教は、ほぼ一方的にやられちゃうんじゃないかな。マスター、この前みたいに、魔法で助太刀する?」

「たのむわ。とりあえず、キャンベル事務局長には生きていてもらわないと。介入のタイミングが来たら声をかけるから、よろしく」

 すると、プチドラは「任せて」というように、小さな手を小さな胸にポンと当てた。

 ただ、それにつけても……、わたしが今、武装盗賊団が唯一神教を攻撃する現場に居合わせているのは、何かの因縁だろうか。先刻、宮殿で帝都の宗教界の代表と会ったとき、「唯一神教を攻撃してもよいというお墨付き」みたいな話になっていたけど、「昨日の今日」ならぬ「さっきの今」で(物理法則を超越するように)、帝都の宗教界の代表が武装盗賊団に唯一神教の撲滅を依頼し、武装盗賊団が動き出したということもあるのだろうか。でも、まさか……

「マスター、どうしたの? 何か考えてるみたいだけど」

 プチドラは、不思議そうにわたしを見上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ