再び武装盗賊団
「また、ややこしいのが登場かしら」
わたしは小さくため息をついた。聞こえてきたのは、(今や「毎度おなじみの」と言ってよいだろうか)武装盗賊団のテーマソングに間違いない。
プチドラはピョンとわたしの膝の上に飛び移ると、苦笑しながらわたしを見上げ、
「マスター、どうしよう。武装盗賊団まで公園に乱入してきたら、わけの分からない修羅場になっちゃうかも」
「そうね、どうしようか……」
わたしは、見るともなしに(虚空のつもりで)馬車の天井を見上げた。武装盗賊団は唯一神教と対立関係にあるから、教団の布教活動の妨害を狙って攻撃を仕掛けるということは、十分にあり得る話だと思う。教団側も、襲撃を考慮に入れているからこそ、聖戦士を同道させているのだろう。「君子危うきに近寄らず」を実践するならば、武装盗賊団が公園に到着する前に、さっさと退散すべきところだけど……
「プチドラ、馬車から出ましょう」
わたしはプチドラを抱き、馬車を降りた。そして、御者に言い含めて馬車を屋敷に引き揚げさせ、わたしはプチドラとともに近くの物陰に身を隠した。プチドラは怪訝な顔をしてわたしを見上げているが、馬車を屋敷に帰したのは、馬が武装盗賊団に驚いて暴れ、制御不能になっても面倒なので、そうならないようにという意味。
そうこうしているうちに、武装盗賊団のコーラスの音量も少し大きくなって、
……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……
……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……
わたしは物陰から、じっと公園の様子をうかがい、
「特に理由はないけど……、このまましばらく、成り行きを見物することにしましょう」
プチドラは少々あきれたのか、「やれやれ」というような顔でわたしを見上げている。
そして、程なくして、見た目はコミカルに、(バケツかゴミ箱のような)円筒型の兜をかぶり、灰色のマントを身に着け、灰色の馬にまたがった集団(すなわち、武装盗賊団)が、規律正しく二列縦隊を組み、公園に乗り入れてきた。その数は数十人といったところか。
唯一神教の信徒たち(厳密に言えば一般信徒たち)は、これまでも武装盗賊団の襲撃を受けた経験があるのだろう、「ひぃ-」とか「きゃー」とか悲鳴を上げ、恐慌を来している様子。彼らは小魚の群れのように、キャンベル事務局長を中心に集まって、団子状態になってしまった。ちなみに、その団子の中、キャンベル事務局長の傍らには、心細そうな顔をしたチャック支部長とともに、神がかり行者が巻き込まれるような形で、バタバタと手足をばたつかせている。
なお、教団の自衛部門である聖戦士たちは、それなりに肝が据わっているのだろう、団子状態になった一般信徒を包むように並び、武装盗賊団の攻撃に備えて武器を構えている。聖戦士たちも、総勢数十人。人数的には、いい勝負だけど……




