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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第13章 毎度の宮殿の奇怪な面々
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役柄も月日を経てグダグダに

 コリー最高神官官房次長の話は数分間続いた(数分間で済んでよかったと言うべきか)。そして、話の最後に結び(締め)として

「……長くなりまして恐縮でございますが、ここは是非とも、神祇庁次官には、断固とした対応を御決断いただかなければ、天下国家に対し示しがつかないと考えるのであります」

 わたしは適当に愛想笑いを浮かべながらも、内心、「この人は……、一体、何が言いたいのだろう」と、首をかしげた。

 総務部長は、そんなわたしの顔色を読んだのか、わたしの耳元に口を近づけ、

「彼らは、早い話、唯一神教を取り締まるという言質を求めているのです。でも、神祇庁には、そんな権限はないのです」

 権限がないのなら、言質も何もないと思うけど……

 コリー最高神官官房次長以下、帝都の宗教界の代表は、次官室のわたしの机の周りに群がり、口々に「御決断を」と迫った。


 わたしは例によって、「ふぅ」と(このところ頻度が増えた)ため息をつき、

「あなたたちの言い分は分かったけど……、個人的には、唯一神教を禁止して解散に追い込みたいと思うけど、神祇庁にそんな権限はないんでしょ。無理を言ってはいけないわ」

 すると、どういうわけか、総務部長からは「ひぃ」と小さく悲鳴が、帝都の宗教界の代表からは「おお」と大きな歓声が上がった。

 のみならず、わたしの肩に乗っかっていたプチドラも、血相を変え、

「マスター、神祇庁次官の役柄で、中立性を疑われるような……、それはマズイよ」

 と、小さい声で、しかし語調を強めてささやいた。確かに、役柄を言われると、そのとおりだろう。ただ、神祇庁次官に就任してから日が経つと、就任当初の心構えも(仮にそういうものがあったとして)グダグダになり、普段の地が出てこようというもの。

 一方、帝都の宗教界の代表の中で更に代表的な立場にあるコリー最高神官官房次長は、やにわに色めき立ち、

「唯一神教の禁止とは、そういうお考えでございますかな。間違いということは、ありますまいな」

「できれば、そうしたいわね。ついでに財産の没収も……」

 わたしは特に意味があるわけではないが、なんとなく流れにしたがって、ニッコリ。すると、プチドラは大きな口をあんぐりと開け、総務部長はへなへなと力を失って、その場に崩れ落ちた。

「ただ、そうは言ってもね……」

 わたしは椅子の背もたれにもたれかかり、言葉を続けた。

「言ったでしょ、神祇庁には、教団の活動を制限する権限も、教団に対して助言や指導を行う権限もないって。どこかの第三者的な暴力組織が教団をたたきつぶしてくれるなら個人的には万々歳。でも、神祇庁が職員を使って大立ち回りを演じるわけにはいかないわ」

 ちなみに、第三者的な暴力組織とは、唯一神教と対立関係にある武装盗賊団のこと。よく考えてみたら、教団の宝物庫から金銀財宝を奪い取るための「どさくさ」状態を作り出せるのは、帝国政府に限られるわけではなかった。

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