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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第13章 毎度の宮殿の奇怪な面々
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帝国宰相は動かず

 帝国宰相は文書を手に、「ハテ」と怪訝な表情を浮かべている。それは、そうだろう。コーブ事務局次長から渡された文書は、そもそも意味のない怪文書の類なのだから。

 わたしはおもむろに、帝国宰相の耳元に口を近づけ、

「実は、その、なんだか分からないところが、一種の隠語・暗号なのです。放置すれば、教団は近々、帝都で暴動・破壊活動などを始めるに違いありません」

 しかし、帝国宰相は「うーん」と首をひねり、

「じゃから……、連中が近々そういう騒乱行為に及ぶのであれば、その明白な……、誰が見ても明らかな証拠、確たる証拠がほしいのじゃ。この前も言ったであろう」

「確たる証拠ですか。確かに、わたしもそう思いますが……」

 すると、帝国宰相は、ギロリと鋭い眼光でわたしをにらんだ。なんだか、雲行きが怪しくなってきたような雰囲気。このまま話を続け、文書の出所や入手の経緯等を訪ねられては、面倒なことになる。ここは、「玉の早逃げ八手の得」の精神でいこう。

「承知いたしました。次回は必ず、帝国宰相の期待に添うものを手に入れてまいります」

 わたしはプチドラを抱き、帝国宰相に深々と一礼すると、くるりと向きを変えて足早にその場を離れた。


 そのまま宮殿の長い廊下を進むこと数分、帝国宰相の姿が完全に見えなくなったところで、わたしは(いつもの癖で)手近にあった物陰に身を隠し、

「ふぅ~、やっぱりダメだったわね」

「ダメだろうね、あれでは……」

 プチドラはため息をついて、わたしを見上げた。心なしか、プチドラの口調や視線が冷ややかな感じがする。

 わたしはプチドラを自分の顔の高さまで持ち上げ、

「でも、帝国宰相は、あれでいいのよ。怪文書の類を真に受けるとは思っていないわ。問題は、ツンドラ侯。あの人をだまくらかして、調子に乗せて、教団への挑発行為をしてもらうの。もちろん、可能な限りゲテモンには話を持って行かない方向でね」

「う~ん、うまくいくかなぁ……」

 プチドラは首をかしげ、腕を組んだ(なおも懐疑的な様子)。


 わたしはプチドラを抱き、宮殿の長い廊下をゆっくりと歩き出した。いつもの御都合主義であれば、そろそろツンドラ侯にも出会うはず。ニューバーグ男爵に急かされ、廊下を猛スピードで走ってくるのが、通常の登場パターンだが……

「おかしいわね。今日は、どうして……」

「そうだね、今日はツンドラ侯、どうしたのかな」

 プチドラを抱いて歩き回ること十数分。いつもなら向こうから問答無用でやって来てくれるのに、今日は、どういうわけか、ツンドラ侯の影も形もない。

「少し休憩するわ」

 わたしはヘタリと廊下に座り込んだ(行儀が悪いのは分かってるけど、誰も見てないし……)。

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