ゲテモンのバーベキュー
パーシュ=カーニス評議員は、突如、笑いをこらえられなくなったのだろう、「ハッハッハッ」と笑い出した。一体、なんなんだろう。わたしはプチドラと顔を見合わせ、見をぱちくり。
やがて、パーシュ=カーニス評議員は、ひとしきり笑って気分が落ち着いたのか、
「いやはや、失礼しました。面白かったので、つい、笑っちまいましたよ。話を本筋に戻しましょう。その『最悪の場合』とは、ズバリ、ゲテモンパーティーなのです」
「ゲテモン!?」
わたしはそう言いかけて、言葉を失った。「大盤振る舞い」の出し物は、ツンドラ侯対サイクロプスのデスマッチと、バーベキュー大会ではなかったのか。
「ですから、そのバーベキュー大会における食材が、ゲテモンというわけです」
言われてみれば確かに、「バーベキュー大会」という表現は、食材を示す言葉ではない。でも……、ゲテモンのバーベキューでは、ある意味、詐欺的ではないか。
ところが、パーシュ=カーニス評議員は朗らかに、もう一度「ハッハッハッ」と笑い、
「しかし、安心して下さい……と言っていいのかな。実は、ゲテモンになる可能性は非常に低いのです。私としては、ゲテモンでバーベキュー大会が面白いと思うのですが、ツンドラ侯以外は、全員悉く、ゲテモンのバーベキューに反対しているのですよ」
「そうなのですか。よかった……」
わたしはホッと胸を撫で下ろした。ちなみに、評議員の話によれば、食材については明日の会議で最終的に決定される予定であり、ツンドラ侯以外の出席者の圧倒的多数の意見により、(一般的な)牛肉によるバーベキューに落ち着くだろうとのこと。
「というわけなので、私はこれにて失礼しますよ」
パーシュ=カーニス評議員は、高らかに「ハッハッハッ」という笑い声を響かせ、宮殿の長い廊下の奥に消えていった。
「マスター、なんというか……、危機一髪なのかな」
プチドラは額の脂汗をぬぐい、わたしを見上げた。
「一体、なんなんだか……」
わたしは思わず「ふぅ」とため息。ゲテモンバーベキューの可能性が非常に低いなら、何も、そう面白そうに言わなくてもと思う。ただ、冷静になって考えてみれば、バーベキュー大会といっても出席義務はないのだから、仮にゲテモンに決まっても、なんのことはなかったのだが……
その時……
「それはおかしいであろう、いくらなんでも!」
宮殿の長い廊下の奥から、聞き覚えのある声が響いてきた。声色やトーン等々から考えると、その声の主は帝国宰相に違いない。また、宰相の声に加え、もう一つ、これまた覚えのある、どことなくメカニックな声が聞こえた。
「いや、おかしくはないはずです。当社としても、ギリギリのところですからね」
声のする方向を見てみると、果して、帝国宰相とマーチャント商会会長が連れだって、こちらに向かって歩いてくるところだった。




