報告を終えて
コーブ事務局次長は、ひととおりわたしの話が終わると、果して「はて」と首をひねり、
「話としては分かったわ。唯一神教に好意を持っていない人が多いことは、知っている。でも、あなたを信用していないわけじゃないけど……、だからといって、帝国政府が教団を弾圧って、どこをどう転んだら、そんな話になるの?」
事務局次長は、「信用していないわけじゃない」と言いながらも、少々、いや、結構な疑念を抱いているような様子。
「ですから、これは、ほんの一握りの人しか知らないトップシークレットの情報で……」
「トップシークレット? あいつは、そんな話、しなかったけど……」
「はい? 『あいつ』ですか。それは、どなたのことでしょうか」
しかし、コーブ事務局次長は、わたしの問いには答えず、
「まあ、いいわ。これからもよろしく。弾圧や根絶やしなら、具体的な内容を知りたいわね。今度報告に来るときは、もっと詳細な情報を集めてきなさい。期待してるからね」
と、金貨が50枚程度入っているであろう小袋をわたしに握らせた。事務局次長の言う「あいつ」とは、おそらく、ウェストゲート公のことだろう。事務局次長は公爵への枕営業の見返りに、政府内の情報を(秘密情報も含めて)得ていたに違いない。
わたしはアメリアの手を引き、軽く会釈してコーブ事務局次長の部屋を出た。
コーブ事務局次長への報告は終わった。先刻の調子では、事務局次長は、帝国政府に対する暴動・反乱・武装蜂起など、まったく思いもよらないだろう。ただ、キャンベル事務局長なら、嫉妬心を激しく燃え上がらせるなど、場合によっては「暴発してくれるかもしれない」という期待は持てそうな気がする。少なくとも、コーブ事務局次長より可能性は高いだろう。
また(キャンベル事務局長に御礼を言わなければならないが)、「とある不届きな政府高官」の正体が判明したのは、思わぬ収穫だった。宮殿で三匹のブタさんが輪になって話していた猥談は、あまりその内容を想像したくはないが、コーブ事務局次長のことだったのだろう。
ただ、ここで少々疑問が湧く。帝国宰相が唯一神教の「違法行為の証拠」を求めているのは、どう理解すればよいのだろう。三匹のブタさんとコーブ事務局次長がいわゆる懇ろな関係にあり、かつ、教団が重大な違法行為を行っているとすれば、三匹のブタさんを、重大な違法行為に荷担したという廉で(コジツケみたいな感じもするが)罪に問うことができるという判断だろうか。つまり、三匹のブタさんたちを政治的に抹殺するためのダシとして、教団を利用しようという……、よく分からないけど……
自室までの帰り道、アメリアは、何やら心細そうな顔で、
「え~っと、カトリーナさん、これからどうしましょう」
「とりあえず屋敷に戻りましょう。宮殿で情報収集しなければならないみたいだから」
「ですか! え~っと、じゃあ……、ごちそうですね!」
その瞬間、アメリアの目がキラリと輝いた。何やらにやけた表情になって、口元を動かしている。屋敷での食事を想像しているのだろうか(なんと分かりやすい性格!)。




