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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第12章 無理筋の計画
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コーブ事務局次長は口調も穏やか

 コーブ事務局次長の部屋からは、それから数分間、キャンベル事務局長とコーブ事務局次長の言い争う声が聞こえた。次いで、キャンベル事務局長のひと際大きな(言葉にできない)わめき声と、バシーン、ドーンという物と物が激しくぶつかり合うような音が響き渡り、そのすぐ後に、部屋の入り口のドアがバタンと大きな音をたてて開いた。

 出てきたのは、言うまでもなくキャンベル事務局長で、

「くそったれぇ! 覚えてろよ、あんなブタ野郎ども、ブタ、ブタ、うおぉー!!」

 と、鬼のような形相となって、ドッタンバッタンと大きな音を伴い、廊下を駆けていった。ドアのすぐ脇にいたわたしたちは、事務局長の目に入らなかったようだ。

 アメリアは、キャンベル事務局長の後ろ姿に目をやりながら、

「あの~、カトリーナさん、どうしましょう」

「どうするって……、情報収集の成果を報告するんでしょう」

「そうですよね、え~っと、そうだと思うんですけどね……」

 アメリアは、先ほどとは一転して、煮え切らない態度。キャンベル事務局長のがなり声にペースを乱されたのだろう。でも、ここまで来て何もしないで帰るのも馬鹿馬鹿しいし、今のコーブ事務局長がどんな顔をしているのかという興味もあり……

 わたしはコーブ事務局次長の部屋をコンコンコンとノックし、

「朝早くから失礼します。情報収集、いえ、二重スパイの成果の報告に参りましたが……」

「あら、そう。本当に早いけど……、まあ、いいわ。入りなさい」

 部屋の中から、事務局次長の声が聞こえた。


 わたしとアメリアが「失礼します」と足を踏み入れてみると、部屋の中には、壊れた家具の破片や書類があちこちに散らばっていた。先刻はキャンベル事務局長との間で、かなり激しいやり取りがあったようだ。

 コーブ事務局次長は、しかし、部屋の散らかり具合について全く意に介する様子がなく、

「で、何か分かったの? 二重スパイの成果は??」

 と、ギロリと射るような視線でわたしをにらんだ。事務局長は、ほんの数分前までは、キャンベル事務局長との間で修羅場を演じていたはずだ。でも、今はすっかり落ち着いて(少々くたびれたような感はあるが、枕営業の影響だろうか)、口調も穏やかになっている。

 わたしは、おもむろにゴホンと咳払いを一つして、

「宮殿で情報を収集してきましたが、実は、大変なことが分かったのです」

「へーえ、大変なこと? 興味があるわね。一体、どんなことかしら?」

 わたしは「ちょっと失礼」と、コーブ事務局次長の傍らに進み、その耳元でゴニョゴニョ、

「実は、帝国政府が唯一神教の弾圧を検討しているようなのです。つまり、信徒を逮捕し、教団を根絶やしにしようという恐ろしい企てを……」

 と、完全な創作(つまりウソ八百)を、事務局次長の耳に、文字どおり吹き込んでみた。その「こころ」は、言うまでもないだろう、コーブ事務局次長の不安を掻き立て、あわよくば教団として先制攻撃に動いてくれたらというもの(非常に淡い期待)だが……

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