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ザ☆旅行記Ⅹ 神と神々の都  作者: 小宮登志子
第12章 無理筋の計画
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財宝の所有及び占有を移す方法

 プチドラは、何やら合点がいかなさそうな顔で、

「あの、マスター、今の『わたしたちのものに』って、一体、どういう意味?」

「決まってるでしょ。正確に表現すれば、あの宝物庫の財宝の所有及び占有をわたしたちに移すということ。これ以上に明快・明瞭なことはないと思うわ」

「でも、所有及び占有を移すって……、合法的にそういうことができるかどうか……」

「合法か違法かって……、妙なこと言うのね。合法的にできるわけがないでしょう」

 所有及び占有を移すとは、有り体に言えば、窃盗あるいは強盗ということ。プチドラは、ポカンと(先刻よりも)大きく口を開けた。でも、実際に、あの部屋(宝物庫)で生活するわけにはいかないのだから、代案としては、その部屋の中身を自分の物にする以外ないだろう。違法行為や非合法活動の類は、今回が初めてではないし、何もそう驚くことはないと思う。なお(付言すれば)、わたし自身、金銀財宝や宝石・貴金属に惹かれたということも、(大いに)ある。


 プチドラは何度か深呼吸して、呼吸を整えると、

「マスター、合法か非合法かは、この際、問わないとしても、あの部屋の金銀財宝をすべて物理的に運び出すとなると、すごく大変なことになるよ」

「分かってる。だから知恵を絞るのよ。頭は帽子や兜を乗っけるためのものじゃないわ」

「そうなんだ……」

 プチドラは、その眼差しに一種の敬意のようなものを込めて、わたしを見上げた。何かうまい秘策(教団の宝物庫あるいは「開かずの間」から、その部屋の中にある金銀財宝を、そっくりそのまま、屋敷にあるわたしの部屋に移すための方法)が、既にわたしの頭の中にあると、期待しているのだろう。

 でも、正直、そんな都合のよい話があるわけがない。言うまでもなく、(強盗のように)帝都の駐在武官(親衛隊)や隻眼の黒龍により教団本部を攻撃し、実力で財宝を取り上げるのは、優美さに欠け、論外。また、こっそりと盗むという意味では、ガイウスたちダーク・エルフに頼んで、(教団内にいる人を全員眠らせてその間に運び出す、みたいに)魔法でなんとかしてもらうことも考えられるけど、さすがにタダで手伝ってもらうわけにもいかないだろう(あまり彼らに借りを作りたくないということもある)。分け前を渡すとすれば、こちらの取り分が減るし……

 わたしは「う~ん」と腕を組み、考え込んだ。目の前で大量の金銀財宝が手招きしているのに、こちらの手が届かないのは、なんとももどかしいものだ。プチドラはわたしの内心など知るよしもなく、口の端から少しよだれを垂らし、わたしを見上げている。

 わたしは、おもむろにゴホンと咳払いをして、

「とにかく、通常の状態なら、窃盗や強盗は非合法よ。でも、そうでなければ、手はあるわ」

「通常の状態でなければということ? なんだか、意味が……」

「だから、例えば……、教団に武装蜂起でも起こしてもらうのよ。その鎮圧に参加して、財宝を戦利品として分捕ってしまうなら、問題ないでしょう」

「武装蜂起!?」

 プチドラは、完全に予想外の返答だったのか、目(隻眼)を丸くしてわたしを見上げた。

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