表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

第二章二節 介錯


霧人は眠っていた。

慎太郎たちによって首を絞められ、眠られされたのだった。

結局、舞と正一が死んでしまった。

これはかなりの痛手となっていた。

霧人だけでなく、全員が悲しんでいた。

吸血鬼が来たせいで墓も満足に作れずに去ることになってしまった。

 目覚めるとマンションの一室にいた。

頭をガシガシ掻き毟りながら霧人はベットで上半身を上げて、目蓋を擦る。


左肩には雑に包帯が巻かれていた。

起きたころにはすでに包帯が外れかけていた。

それを見て、呟いた

「…雑だな」

ベットのサイドテーブルに置かれた警棒に手を伸ばす。

短い状態になってた。


起き上がると部屋の隅で転がって眠ってる相沢と黒田、あやめ、佐藤と沼田が眠っていた。

―――看病でもしてくれてたのか……

霧人は毛布を引っ張り出してかけてやった。

「まったく、無防備だな。。。いかんいかん」

無防備なのでキスとかしてもバレそうにないなーとかと考えながらも部屋を出る。

俺はどーせチキンですよ。

リビングに行くと義姉が食事を作っていた。

「アンタ、起きて大丈夫なの?」

キッチンから出てきて一声目にそう言った。

「ああ、大丈夫だよ、肩も傷が塞がっててよかった。」

「舞ちゃんは残念だったわね」

義姉は視線を落としていった。

霧人は黙って歯をギリギリとする。

義姉は言った。

「あんただけの責任じゃないわよ」

義姉はキッチンに戻っていった。

霧人はベランダに出て外を眺めた。

ここはマンションで昨日の検疫のあった場所の横にあった。


現場を見ると思い出してくる。

あの時、もっと動けていればと思う。

後悔しても遅いのは分かるが終いには自分が最先端都市230万人の中でも選ばれた7人で凄い超能力を持っていればとか他にもさまざまな現実には有り得ないことも考えてしまった。

胸糞が悪いこと極まりなかった。


部屋に戻りソファに腰かけてTVを見るがお花畑がほとんどでCMばっか流れてるところもある。


ソファから立って一言

「出かけてくる…」

「え?駄目よ。怪我もしているのだし」

「生存者がいるかもしれない…」



義姉は霧人の顔を見るとギョッとしていた。

そんな義姉にも構わずに霧人はふらふらと霧人は出て行った。

酷い顔してたかな?


生存者なんてそんなのは建前に過ぎない。

昨日の現場が目的地だ。

吸血鬼は驚くほどというかエンカウントしなかった。

血痕があちこちにあった。

そして、見つかったのは赤目の死体。

舞の姿はなかった。

霧人は拳を握りしめて地面を叩く。


間違えなく、感染した。

彼女は化け物となって町を徘徊し同族に襲い掛かっているんだ。


霧人は辺りを見回した

警官の遺骸の傍に落ちてる白い物体を見つける。

霧人は拾う。

銃だ。

この銃はS&W M37であるとは霧人が知る由もないが。

装填されてる弾を排出し確認すると1発残っていた。

何であの時に撃たなかったんだよ?

警官の遺骸を見て恨めしく思ってくる。

空砲なんかではない。


≪いっそここで死ぬか?≫

頭の中でささやく声が聞こえる。

たしかに、もう希望は失った。

ここまで広がっておいて元通りの日常なんてことは無理がある。

M37の銃口を自分のこめかみに押し付ける。

躊躇いはなかった。

自暴自棄になっていたのだろう。


霧人は深呼吸した。

思い切って引き金を引いたが弾は発射されなかった。

もう一回、弾の有無を調べるが確かに一発だけ残っていた。


そこで初めて恐怖を感じた。

手はガッタガタに震えていた。

俺は何て事をしようとしていたんだと。

…気が付いた?

いや、こんなのは言い訳だ。俺は臆病だ。無力だ。

何もできやしない。


とりあえず、戻ることにした。

M37をホルスターを警官から取って着けた。

柳葉刀も探したが見つけることができなかった。

愛刀は諦めて鉈があったのでそれで譲歩しようと思った時、背後から近づいてくる音が聞こえてきた。



霧人はその人物を見て、絶句した。


「クッ、ま、舞か…」

霧人の呟きに対し、舞は両腕を広げて襲い掛かるような体勢を取った。

身体は痛むが霧人は警棒を握った。

鉈は何となくだが使いたくなかった。

舞は襲い掛かってきたので後ろに跳んで更に警棒を使って、爪を打った。

爪がバラバラに飛んで散らばった。

次に頭を打とうとするが舞は右腕で頭を庇った。

舞が警棒を腕で受け止めたまま何秒か続いた。

その時に舞の目が赤く輝いているのを見た。

そのまま、腕を引いて警棒で再び殴りかかった。


しかし、舞は拳で警棒を叩き落とした。

霧人は警棒を落とした。

――マズった!!

霧人は舞のほうを向いたまま、距離を取った。

左肩が痛むと思ったら傷が開いてきていた。

赤い血が服に沁みついていた。

左肩の包帯はスルスルと地面に落ちていた。

それを取ると両手に巻きつけて人の首を絞める時のように構える。


右手、左手と霧人に向かってくる手を避けて、包帯を腕に巻きつける。

そして、舞を素通りするようにして背後に回り込み、舞の腕で舞の首を絞めつける。

そのまま、舞の体が持ち上がるほどに引っ張るが包帯は千切れてしまった。

舞の体は地に着地すると襲い掛かってくる。

霧人は腹を蹴られて倒れた。


霧人は咳込んで腹を抑えた。

舞は霧人に馬乗りになった。

手で抵抗するが足で腕を押さえつけられて攻撃を防ぐ手段はなくなった。

霧人は焦って抵抗するが脱することはできなかった。


このまま、間違えなく殺される。


目を閉じた。


霧人はあきらめていた。



「何をあきらめてるんだ?」

田中が鉄パイプで舞を殴って霧人から切り離した。

「いい加減にしろよ!後輩!!!」

別な声が響いた

「勝手に出かけるとか貴様はバカかぁぁあああ」

黒田が軽く回し蹴りを霧人に喰らわせ、相沢はレイピアの後継だと思われる木の棒を持って来た。

「コレは昨日の看病中に作ったんだけど貫けるかな…?」

「いやいや、俺はすでにボロボロだ」

「まったく、こんなにも仲間がいるんだぞ」

慎太郎が武器は持たずに霧人の後ろに現れる。

「お前だけのせいではない。」

「あの時、舞の言葉のまま先に行くように全体を促したのは俺だ。

   俺のせいでもある。」



「霧人、さっさと終わらせてあげろ、彼女を苦しめるな」

沼田が木刀を構えて言う。

多少、腰が引けているの敵が舞で赤目の吸血鬼だからだろうか。

人をボコボコにしておいてそんなことを俺に任せるか。

あゆみに手伝ってもらい霧人は立ち上った。



「お前の苦しみを終わらせてやる」



全員が動いた。

慎太郎が指揮を執って、沼田が舞の注意を引き、相沢、田中、黒田が舞を押さえつける。

佐藤が霧人の背中を力強く押した。

霧人は警棒を握りしめた。

―――よかったな。こんな世界でもお前のことを考えてくれてる仲間がいるぞ。


「だぁぁぁああああああ!!!」

全力で狂いなく舞の頭を打ち砕いた。





舞の体が崩れ落ちた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ