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第一章六節 安全確保


「とにかく、止血だ止血!」

「傷口押さえろ!!!」

「消毒するぞ!!!」

様々な怒声が響き渡る。

現在は霧人も含めた全員が適当な民家に退避してきていた。

暫くすると沙織が治療のためにやってきた。

「義姉さん、傷の具合はどうなの?」

「私も専門的なところは分からないけど…見た目の割には傷は浅いわ」

消毒を終えて、沼田の損傷部を包帯でグルグル巻きにしながら沙織は言った。

今日はここで一晩かーなどと正一が呟く。




しばらくして沼田の治療をおえるとボチボチ休み始めた。

「てか明日は荒れるのか…」

煎餅を食べながらTVを見ていた舞が呟いた。

てか他人の家でよくここまでくつろげるなと霧人は感心しつつ舞を見る。

「明日の食料調達はどうする?ここも移動するか?」

矢継ぎ早に慎太郎が皆に問う。

「今日の移動は不可能だ。今日はやりすごすしかない…見つかればデッドエンドだ」

霧人が慎太郎に向って言う。

しかし、この家は急遽駆け込んだ家なのでバリケードは正面玄関前に机と椅子を並べてる程度の凡そバリケードとも言えないほどのものだ。

かといって今から仕組むには遅い。

今は吸血鬼に見つからないようにするのが重要であると思われる。

下手に外で細工中に見つかってもマイナスでしかない。

完璧なバリケードを作れるわけでもないのだ。

あやめの提案でせめてでもと窓に家具を配置し始めた。

外では吸血鬼が頻繁に通っていく。

この家に隠れているのがバレていないとは思うが通るたびに緊張する。

知らぬが仏とはよく言ったものだ。

知らなければ死すだろう。

暗くなってきているので下手に窓から外を覗くことも明かりを灯すこともできない。

やることもないので皆は眠り始めた。

この家は大所帯だったのか冷蔵庫には食料が腐っている物もあったが結構余っていた。

冬で寒いから助かった食材も多くあるだろう。

この家もかなり寒かった。けが人にはよくないだろうがファンヒーターもあって電気もまだ止まっていないという謎の状況は続いている。

お蔭で部屋を暖めることもできるのだが。(リビングのみ)

何より非常食の量が多く、階段下の倉庫には缶詰が大量にあった。


「カニ缶はいただいた」

霧人が倉庫で見つけたものを開封しながら言う。

対して慎太郎は平等に分けることを求めるが既に霧人の口の中に中身は発射されたところであった。

ちなみにカニ缶の中にある紙はなんであるかというと防腐などではなくてガラス片のようなものの発生を防ぐためであるのだよ。

その後は黒田に頭をど突かれたがカニを食えたことで霧人は満足であった。

米もレンジでチンではなくてしっかり炊飯器を使えるのでそっちを使う。

お蔭で俺たちが白飯のありがたみを身を持って知ることとなるのはもっと後になりそうであった。


スーパーでの収穫もゼロではない。

缶詰だけでなくジュースなどの清涼飲料水の確保も多少はできている。

トイレの使用は夜は控えることとなった。

佐藤さんがトイレを流すときの音が外に聞こえてしまうかもと言ったことで不安になったので多数決で決めた結果が夜間は使用しないようにとのことであったがこの結果は女性人たちを苦しめることとなった。

沼田の容体もよくなっていた。

結構、血が流れてしまったことによる貧血で具合はよくはなさそうだったがトイレから連れ出した時の数倍はマシに見える。





――― 数日後 ―――






「傷は塞がったのか?」

沼田が町を見て回ったりするのに一緒に出てきたのを見て霧人は話した。

「ふむ、お蔭様で良好だ。ありがとう」

「俺に礼を言うのか、義姉さんに言ってくれよ」

「いや、君がいなければ私も死んでいただろう…」

なんやかんやで新しい敵が出てきても犠牲者はゼロで乗り越えることができたのは凄いと思う。


「沙織さん、ここから見えるあのマンションでいいのですか?」

「そうそう、わかりづらいと思うけどそこの近くが境界で警察やらが銃器で武装して道を塞いでいるわ」

―――だったらしっかりと見れるということか。

今日は周りを見るために来た。

マンションの屋上まで上がって双眼鏡を使って道路を車で塞ぎ、その前に立っている人影を見た。

盾やライフルを構えている重装備の日本人が3名。

横には白いテントが張ってあった。

なぜコソコソと見ているのかというと理由は簡単。

誤射が怖いからである。

まさか撃たれることはないとは思うがいざ行こうと思っても怖い。

けどこの町の住民は全員殺害命令的なのが出ていることも否定できない。

だからこうしてマンションの屋上から見ている。

もし、住民皆殺し令が出ているなら町中を見て回るなり空爆なりをすると思うが。


「やっぱ、いい装備してんな~」

陸自の持っている64式小銃を見ながら霧人は言った。

「銃に詳しいのか?」

「いんや、そうでもないよ」

「男子ならこれぐらいは常識だよ」

「そうか?俺は知らなかったぞ」

田中は俺は非常識だったのかと勝手に落ち込んでいる。

大丈夫ですよ先輩。それは先輩がある程度はまともな証拠ですから。

不良の割にはと付け加えておくが。


そんなのは放置しておいて

次はリュックから長いコードを取り出してカメラに繋げる。

カメラを軍人の方に向けてコードで下の階のPCと繋げる。

義姉にPCの情報を送ってハックさせる。

これで逐一、情報を手に入れることができる。


「だがこれで一安心だ」

霧人は身体を鳴らしてストレッチしながらいう。

「?何が安心なのかしら?」

「俺らは実際にこの町以外の世界が無事だという確かなものは見てはいなかったろ?だから自衛隊がこうしていることで外が無事なのはわかるからね」

「そうかい、そいつはよかった」

田中は屋上の扉へと向かった。


この後は罠を仕掛けに行かないとならない。

沼田は木刀で腰に差しながら霧人に聞いた。

「いちばん近い設置場所は?」

「このマンションの近くの学校前だ。」

この罠は吸血鬼たちを霧人の家や現在の家に近づけないようにさせるためのものだ。

昼間は目が見えないことを利用した罠だ。

鳴子を仕掛けて隠れ家から遠ざけるためのものだ。

そして、食料を回収する店から遠ざけるためにも仕掛ける。

吸血鬼の一定のエリアへの侵入を防ぐためにロープで道を塞ぐ。

50cmの高さの隙間を開けていた。

車を使用できるように二通りの道は塞がないでおく。

これで多少は気を抜いても大丈夫だ。

最近は夜間には細心の注意を払わないとならなかったので皆のストレスは超上昇。

そして、霧人の不幸指数は急上昇。

主に八つ当たりが酷い。


「やっとだ!やっと、奴ら(主に黒田)の魔手から逃れられる!」

「それはよかったな」

唯一とはいわないがまともなキャラの沼田はそう言った。

本当に彼女を見習って欲しいと霧人は本気で思う。

「しかし、彼女は君のことが好きなのではないか?」

「まさかないですよ。ツンデレってやつですか……いいかもしれませんね」

黒田はツンデレではなくどちらかといえばツンツンなのだが…。

しかし、それもアリだと思ってしまう自分もいた。

思えば、自分は随分と変わったと思う。

先日まではクラスメートと会話なんて無に等しかったのに今は沼田や黒田たち、先輩の田中とまで話すようになっている。

災難な状況だがこればっかりはよかったと思う。

そんな感情は抱いては不謹慎だと言われるかもしれないが霧人は楽しかった。



「霧人君、吸血鬼が二体だ。赤目じゃない」

「片付けましょう」

柳葉刀を腰から抜きながら言う。

田中も金属バットを掴む。

霧人は音を立てる。

それに釣られた吸血鬼の頭に柳葉刀を振り落すだけ、これで吸血鬼は死に絶える。

もはや霧人にとっては慣れっこであった。

一日に最低でも2,3体は殺している。

赤目は沼田が怪我をした時からは結局見ていない。

あれは例えるならば学園都市のLEVEL5が出てくるようなのような確率で出現するものなのではないだろうか?


腕時計を見ると時刻は4時になっていた。

霧人は後ろを歩いている沼田と田中を振り返り、

「そろそろ戻らないとな…、太陽が沈む」

「そうだな、囲まれるのはごめんだぜ」

「急ごう」

沼田が疲れた調子で言った。


「鈍ったのか?眠ってばっかで」

「女性に何て事を言うのだ」

沼田は霧人にチョップするが霧人は軽く頭を逸らすと回避する。

「口は災いの元なり」

何かを悟ったように田中先輩は呟いた。



現在は霧人の家。

黒田が心配そうに、頻りに窓を見つつ、

「本当に少しは気を抜いても大丈夫なの?」

「ああ、たぶんな…結局、塞いだ後に内側には吸血鬼は見えなかったし、別な家を囮として使っている」

「…囮?」

相沢が初耳だと言わんばかりに言うが昨日話した。

「だから、適当な家を選んで電気をつけたりして、人間がいるように思わせるんだよ」

「……効果があるかはわからないけどね」

と佐藤さんが付け足した。


こうして、一晩が過ぎた。

やはり、気を抜いて休めるのはいい。

朝の目覚めがまったく違った。

最近は夜に目覚めてしまうことも多々あったが少しは安心して眠れるようになった。

このまま、安全にほとぼりが冷めるまで暮らしていけると思っていた。


翌晩、急速に状況は変わった。

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