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彼の生まれた家

拓さんは がに股歩きで、タバコを吹かしながら、狭い路地を進んでいく。


私は 鞄と 龍吾に借りたノートを胸に ぎゅっと抱え込むようにして、拓さんの後を ついて行った。


周りに目をやると 看板が日本語ではない。ハングル文字や 英語だったりして、さっぱり何の店かわからない。


自転車で すれ違う おばちゃん同士の 会話が、おそらく韓国語で、きっと、私のことを何か言っている。



「姉ちゃん、晃西高校か?」

拓さんが話し掛けた。


「は、はい」


「龍吾のダチか?オンナか?・・・ふんっ聞くまでもないか。」


拓さんはなんだか 一人で 納得したようだった。


「オレは 龍吾の兄貴じゃ」


「えっ!?」


「似てなかろう。父親が違うんじゃ。」


拓さんは 私のことを見もせずに 淡々と話す。



「ここが、ワシの家じゃ。ちょっと待っとれや。」


拓さんは 玄関を開けずに外から 龍吾を呼んだ。


彼の家は お世辞にも いい暮らしをしているとは言えないような、瓦は割れて 落ちかけ、窓はヒビが入り、板壁も剥がれかけた家だった。


「龍吾、聞こえんのか、龍吾。お前にお客じゃ。女の子が来とるぞ」


そう拓さんが 叫んで、まず顔を出したのは、私たちと ちょうど同じ歳くらいの男の人だった。


「拓兄、冗談じゃろう?あ、ほんまじゃ。オンナが来とる。」


彼は 私の顔を2階の窓から見て 部屋に引っ込んだ。

「うそじゃろう?」


次に窓から顔を覗かせたのは、髪の短い、真っ赤な口紅の女の人だった。


私は 恥ずかしくて顔を下に向けた。


龍吾は やっと 窓から顔を出し、

「あっ、お前っ!」

と 驚いた顔をした。


その後、バタバタと階段を下りる音がして 玄関の開き戸が開いた。


「お前、何をしよるんじゃ、こんなところまで来て」


「龍吾に 助けてもらったお礼が言いたかったんじゃと。」

拓さんが からかうように言った。


「余計なこと せんでええわ。二度と来るな!!」



龍吾は 私に大きな声で 言い放ち、戸をバタンと閉め、また2階に上がって行った。


「あ〜あ、ひどいのお、龍吾は」

拓さんは くわえタバコで笑って言った。


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