運命の出会い
昭和44年春
私は 念願の 兄と同じ、
晃西高校に 入学した。
入学式の日、
診療所の前で 家族四人で写真を撮った。
私の笑顔は 希望に満ちていて 両親や兄も 嬉しそうに笑っていた。
けれど、両親は診療所の仕事があるため
式には出られなかった。
晃西高校の 制服は 真っ黒のセーラー服で スカーフが白。
憧れの制服だった。
私は 兄と一緒に 船に乗って通学するのだが、渡船場に着くまで、 兄は私に高校生活についての注意を 覚えきれないほど たくさん話してくれた。
予習 復習は 必ずすること。
信じるものは 自分のみ。
人を当てにしないこと。
休み時間も無駄に使うな。周りは自分よりも倍勉強していると思え。
必要ない授業なときは 必要な勉強を 隠れてしろ。
などなど・・・
なんだか寂しいと思った。
県下でも 有数の進学校は息苦しい気がして 不安が過ぎった。
船に乗ると 高校3年の兄は 耳栓をして 参考書を広げ、勉強を始めた。
私はというと、島を出てそれぞれの 高校に 通い始める 中学の同級生たちと いろんな話で 盛り上がっていた。
彼女たちは 市内の 女子高だったり、商業高校に通う。
そして 船着き場で みんなと 別れ、 私は 参考書から 目を離さない 兄の後ろを キョロキョロしながらついて行った。
晃西高校は 市内のメインの通りの中にあり、両親と たまに近くまで 買い物に 行くことは あったが 改めて、新鮮な気持ちで 校門をくぐった。
「緊張してるのか? みんなのやる通りにしていたら慣れるぞ、そのうち。」
兄は 一言行って スタスタと 行ってしまった。
私は 学校内を 新入生らしき人たちの後をついて行って やっと自分の教室に たどりついた。
教室に 入ると 驚いたのが 生徒が男子ばかりなのだ。
女子もいるが 三分の一程度。
知っている子は 一人もいない。
わたしは 黒板に貼ってある席順を見て 自分の席に着いた。
私は 自分の後ろの席の男子に話かけた。
「はじめまして。どこ出身?」
その人は 長い脚をくんで、難しそうな本を読んでいた。