妄想の帝国 その116 ユメノクニのニホン国
6月だというのにカンカン照りのなか自称ソウリたちが叫んでいるのは…
ニホン国のとある場所。6月だというのに強ーい日差しのなか、遮る日陰もないだだぴろーい場所で、固まって叫んでいる人々がいた。
「プラスチック原料は足りてるのよー」
「ソウリのおっしゃる通りですー、われらザンケイ新聞は総理のお言葉を速やかにつたえー」
「サヨク連中はうそをつくなー、ヘンノコの事故はー」
「われわれこそ、ニホンジンよー、世界に咲きほこるーうううう、あ、暑い」
先ほどまでの勢いはどこへやら、ふらふらと倒れる初老の女性。
「そ、ソウリ、しっかり」
「…なんか、ぼうっとする……、声も枯れてきたわ」
「ソウリ、今日はもうこの辺で」
「そ、そうね。コッカイは欠席でいいわよね」
ソウリのよばれた女性はよろよろと歩き出す。それに続く、男性たちも力なく、足元がふらついている。彼らの着ている服は、生地や仕立てはしっかりしているが、汚れ、ほつれ、あちこちにシミができていた。強烈なにおいを放つものもおり、
「う、ク、臭い…、もう何か月、いやどれぐらい風呂に入っていないのか…」
「た、耐えるんだ、もうすぐ雨が降れば、洗えるじゃないか」
「そうだ、この間、シャンプーの容器をみつけたんだ!まだかなり入っていたんだ、それを使えば」
「お、おい大丈夫か、何年も前に捨てられた…いや、運び込まれたものだろう?」
「大手メーカーの添加物たっぷりの中国製だから大丈夫だ、きっと」
「そうだな、いっそ総理に使っていただけば、失礼だが、かなりその匂いが…。いやガタヤマさんやらオンデラさんたち女性陣たちと取りあいになりかねん。最近、あの二人とも険悪になってきたし」
「ガタヤマさん、おとといの配給の時、様子がおかしかったからな…。もしかして、出る気なのか」
「そ、そんな!あんなにもゼイロンとかでサヨク連中を叩いていたガタヤマさんが、あいつらの占領したトンキョー地区に行くなんて、裏切りだ!!」
「そうだ、そうだ、一人でずるいぞ!オレたちが家族も何もかも捨てて、総理の率いる真の政府を守るために、ここユメノクニに逃れたというのに」
「そうだ…けど、結局サヨク政府の配給で食ってんじゃん、俺たち」
「な、何をいうんだ、配給なんて、腹を満たす程度じゃないか!スーパーフード食とか栄養は足りてるけど、味気ないし。ギンザ松松屋のステーキが食べたい!」
「…つまり、生かしてもらってんじゃん、俺たちはさ。ユメノクニは捨てられたとはいえ、つかえるものの宝庫だし、温室もあるから自給自足もできるって総理たちがいうから…」
「あー、まー、経歴も何もかも、家庭生活もうそだよーと夫にバラされている総理のいうこと信じたオレらも悪かったんだろうけど、だけど、あのサヨク連中のお情けにすがっているなんてー」
「それが現実だろ。支離滅裂な法案を無理やり成立させたのに、何一つ、国旗をいじるなだって、ろくに取り締まりどころか、無駄な労力使いまくり現場の警官やら何やらをブチ切れさせ、あらゆる部署の実務担当者を怒らせた挙句、大規模デモ。ビビったソウリたちとマスコミ連中と一緒に官公庁からも官邸からも逃げ出す羽目に」
「だ、だからやつらに対抗するためだったんだから、オレたちの戦略的撤退だったんだ」
「…対話の準備はあるって言われてるのに、いつものように正論でぶちのめされ、謝るのが嫌なソウリについてきただけだろ。俺だって、あいつらに自分の非を認めるのは嫌だけど、間違ってたんだ。みろよ向こう側を」
いつのまにか、男性たちはソウリらの列は離れ、だっだぴろい、埋め立て地の端まで来ていた。
かすかに見える向こう岸には、緑で覆われたビル群と水のモニュメント、涼し気な風が吹いてくる。
「同じく逃げた都知事のオオイケ・リリィやらザンネン党,メイジの党の連中がいなくなったら、トンキョーの緑化やら何やらがすぐ進み、今やシンジュクジュクなんか、世界で過ごしやすく老人も子供も過ごしやすい都市ナンバー1.レイワンのフナなんとかが知事となりバリアフリー、ジェンダーフリーのすごいとこだ」
「そ、そんなサヨク思想の都市なんてーいやだあああ、オレは家事も育児もしたくないし、モンゴル系以外のやつらがそこらにいるのは嫌なんだああ。お、女にもガイジンにも頭なんて下げたくない、あやまりたくないいい。ー、それが真理でも正論でいやだあああ」
「…じゃあ、このユメノクニでウダウダ言ってろよ。崩れかけた温室で夜露をしのぎ、晴れたら、抗議と称して自分らの屁理屈を似非ソウリたちを叫んでろ。間違えに気づいても、軌道修正もできないロクデモナイオッサンでいろよ。俺は変わるから」
といって男性は走り出した。
「ま、待て、裏切り者おおお、お、おいていくなああ」
「ダンナカ・マキンコ顧問、また自称亡命希望者です」
「亡命希望者?ああ、あのダカイチ総理モドキについてったダメ連中のこと?だいたいあいつらのいるユメノクニはニホンの領土、というか、ごみ集積跡地で、あの連中が真のニホン国だーとか騒いでるだけだし、食糧不足っていうから最低物資ぐらいは届けてやってるだけなんだけど」
「本人たちはあの嘘つき女がソウリのつもりなんでしょう。以前ニホン国初の女性トップとか騒がれましたし、まあ経歴から何から何までうそだったんで、取り消されましたけど」
「ほんと、バカなこと山のようにしてくれて、後始末が本当に大変だったわよ。それ乗り越えた共産ニッポンのタムケンさんとレイワンのオオイジさんはすごいわよ。あの二人こそ、真の初女性トップよ」
「ダンナカ顧問はよろしいんですか、あなたこそ、初のトップと期待されていたのに」
「もういいわよ、年も年だし、顧問で。だいたい古い政府の体質を引きずってるとか、言われてるしねえ、あたらしいニホン国で大きな顔するより御意見番ぐらいのがいいわよ。で、ガタヤマが最後じゃなかったわけね、今日の希望者。まー通常通りの手続き…、って変な媚をうってきたっての、ガタヤマは」
「はあ、そのう、実はダンナカ顧問を尊敬してたとか、敵ながらタムケン様はすごくてとか、聞きもしないことをベラベラと、AI監察官が対応してるんで、そんなおべんちゃらに引っ掛かりはしませんが」
「そうね、聞き流して、規約に同意させて、とっとと更生施設にいってもらいましょう。きっと明日もくるんでしょうから、ユメノクニの自称ニホン国から」
「そうですね、夢というか、妄想から覚めたのがくるんでしょう」
「そうね、朝がくればね」
とダンナカ顧問は緑化植物に覆われた新官邸から、焚火の炎がうっすら見えるユメノクニの廃屋を眺めていた。
どこぞの国では下手なディストピアドラマのような展開をしてますね。あまりにわざとらしいというか、現実味が薄いホウアンモドキを連発されても言うだけで何もできないのではないかと。オクニがギャグをやってるように見えて逆にやってる人らが怖いですわ。




