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無くて七癖~ウザ眼鏡から素敵眼鏡に婚約者が変わりました~  作者: 砂臥 環


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9/10

⑨ウザ眼鏡だった人との、ウザ眼鏡とはもう言えない再会

 

 庭園とそれに隣接して建てられた、広いオープンテラスのあるカフェが会場の、卒業パーティー。その最中には、警備の面から学舎は手前の一部を除き、立ち入り禁止となり封鎖される。

 ウェイン令息が探すのを諦めた理由のひとつも、封鎖前の警備の巡回かららしい。

 各教室を施錠確認をする為、もし学舎内のどこかに引き込まれたなら、警備が発見する筈だろうと。


「連れ出された可能性が高いのかしら……?」

「だとしても、馬車の停留場までは少し距離が。 以前ご忠告した通り、私は彼等が怪しいと。 あのふたりは授業をサボる際の人目につかない場所や、人気のないルートに詳しかった」


 ウェイン令息は、相変わらず三下のふたりを疑っている様子で『どこかにザカライア様を拘束し、プラウス嬢()に恥をかかせるのが目的では』と言う。

 ホレスの関与指示も疑っているようだ。


「ふたりは小物です。 そうでなかったら、侯爵令息に手は出せないのではないでしょうか」

「確かにそうね……」


 ウェイン令息曰く、だからこそ誰かに言うことができなかったそう。

 なにしろホレスが関わっているなら、お家騒動。少なくとも周囲はそう見る。

 ましてやそれで卒業パーティーを台無しにするなど、今後に差し障る醜聞……秘密裏に処理するのが望ましく、こちらも軽々に動けない。


 杜撰なようで、案外よく考えられている。


(そういえば……)


 ホレスの成績は良くなかったものの、決して悪くもなかった。

 それ以外の言動が目に余るわ鼻につくわで甚だアレだった上、当然のように勉強しているところなど見たことがなかったけれど。

 逆に勉強していなくてあの成績なら、地頭はいいのかもしれない。


(でもそれだと交替している意味が不明だわ。 仮に自作自演の罠だとして、自分を人質にザカライア様を脅して──とか無理矢理なこじつけならばできるけれど)


「プラウス嬢、大丈夫ですか?」

「いえ、ええ……なら寮かしら」

「それも考えましたが、誰かに見られるリスクはより高いかと」


 ウェイン令息の話からわかったことは、『彼はホレスの交替どころか、厳しい監視も知らない』ということ。もっとも、彼の言うことが嘘でなければ、の話だが。


(それに監視の目を盗み、彼等が接触することは難しかった筈……)


 もう学園はすぐそこ。


「───ウェイン様、私はとりあえず学園敷地内を探してみます。 ご報告くださり感謝しますわ、私のことはどうぞお気になさらず」


 私は馭者に、裏手からひっそり学園に入るよう指示する。


「おひとりで探すつもりですか? あまりに危険だ、私も手伝います」

「大丈夫ですわ。 でも、でしたら──」


 私はニコリと微笑み、彼にひとつ頼み事をする。


 どう動くか、既に方向は決まっている。

 最早、迷いはない。





「──で、なんでお前まで捕まってるんだよ!?」

「あらヤダわ『お前』だなんて」


 幸か不幸か(※本音がチラ見え)、ホレスはこの通り元気だった。

 そして彼の様子と状況から、嘘は吐いていない模様。


「言っておくけど、最初から貴方を心配・信用してここまで来たわけじゃなくてよ?」


 ぶっちゃけると、ウェイン令息もそう。

 彼の話は『真実かどうか』という点に於いて、途中からもうどうでも良かった。

 可能性を考えたらキリがなく、私では判断しかねる──という結論(・・)に至っていたので。


 残念ながら私は、そこまで頭が切れるワケではない。

 だが幸いそれを自認している上、別の自信もある。


 だから『そんなことよりサッサとホレスを見付ける』が最善策である、と早々に腹を括り、そう行動すると決めた。

 私は、心配している風のウェイン令息に『裏手に不審な馬車の行き来がなかったか』と『男子寮に病人などを装って人が運ばれてきていないか』の確認をお願いし首尾よく彼を撒くと、魔道具(ブローチ)の通信スイッチを押した。


 ホレスの居場所は容易に判明した。

 しかし、その途中で捕まり今に至る。


 まあ捕まったって言っても、突如現れた三下ふたりに『大人しくしないとザカライア様を殺す』と脅されて着いて行ったのだけど。


「勿論、捕まったのはわざとに決まってるでしょう? 怯えながらも屈辱的に従ったフリをしたけれど、実際は『ラッキー探す手間が省けたわ!』よ」


 私の言葉に困惑を隠さないホレスに、妙な動きはもうない。

 まだ信用しているワケでもないが、ウェイン令息が彼を『ザカライア様』と判断した理由は、一応だけど説明がついた。

 ホレスは今、眼鏡をかけていないのだ。


 ぞんざいになったのを差し引いても、私の知ってる『ウザ眼鏡』の時のホレスとは口調も少し違う。

 おそらくこっちが素。なら、ザカライア様の目が曇っていたワケでもないようだ。


「だがどうやってここを出るつもりだ? こんな場所、知らなければ見つけるのは難しいというのに……」

「でしょう? ならやっぱり『ラッキー』は正しいじゃないの」


 そう答えたが、ホレスの言い分もわかる。


(……まさか、学園内にこんなところがあるだなんて)


 私達は今、地下牢に入れられていた。


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― 新着の感想 ―
ホレス…… ウザ眼鏡のときにはやはり、ホレスなりの事情があったんですね。ザカライア様だけが見抜いていたと思うと、感無量です!
ホレス、そうだったのか( ˘ω˘ )
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