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無くて七癖~ウザ眼鏡から素敵眼鏡に婚約者が変わりました~  作者: 砂臥 環


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8/10

⑧迎えに来た男

 

交替(・・)したんだ!』

「交替?! ちょっと待って……」

『それより伯爵はいないのか?! 今君は家か?!』

「ちょっ、ちゃんと説明して!」

『捕まってる! 多分ココは──まずい、また連絡する!』

「あっ?!」


 一方的にそう言うと、ホレスは通信を切った。


(交替した? ……捕まってる?!)


 なにがなんだかわからないが、どうやらピンチの様子。

 叫んでいるかに思われたけれど、どうやらそれは声の逼迫感からのようで、魔道具を通しての息遣いからはむしろ声を潜めていることが窺えた。


(『交替』……ザカライア様が狙われていたってことかしら)


 声だけでなく、ふたりの見た目はソックリ。

 (ちか)しい者でも姿形は勿論、眼鏡なのもあって顔の微妙な違いからの判別すら難しいだろう。


(ザカライア様の危険を察知したホレスが、交替を提案した? ザカライア様は今、ホレスのフリをしているの?)


 ホレスは厳しい監視下に置かれていた──逆を言えば、ホレスなら安全(・・・・・・・)ということだ。

 彼の言うことは、一応辻褄が合っている。


 だが信じていいのかわからない。

 だって、私の知っているホレスは『ウザ眼鏡と書いてホレスと読む』くらいなのだ。

 ザカライア様は頭の良い方だけれど、兄想いなだけに、目が曇っている可能性は無きにしも非ず。

 騙されて交替し魔道具も取られてしまい、監視からこちらに連絡ができない、とも考えられる。


(だとすると、今の伝達はなにかの罠かも……ああもう! 情報が足らなさ過ぎよ!)


『お前は詰めが甘い』──父の台詞が過ぎる。


 侯爵様……いや侯爵家家人の古株にでも聞いて、ザカライア様のホレス像の真偽(話の裏)を確認しておけば良かったのだ。

 せめて一度、ホレスの様子をこの目で確認しておけば……


(……今更だわ!)


 私は後悔と不安を振り払うようにブンブンと首を振る。

 今、そんなことを考えている場合ではない。


 生憎両親は式典の方だけを見て、侯爵様ご夫妻と共に食事と観劇に行ってしまっている。

 卒業パーティーは学園を卒業する子供達のものであって、保護者は基本的に参加しないのだ。


 なにを信じ、どうするかを決めなければ。

 早急に。


(まずはホレスから再び連絡がくるのを待つ? それとも──)


 焦りながらもなんとか働かせようとする私の思考を遮ったのは、残念ながらホレスからの連絡ではなく、ノック音。


「お嬢様」

「なに?!」


 苛立ちをあらわに返事をしながら扉を開けると、普段は冷静な執事が困惑顔で言う。


「迎えの馬車が参りましたが、ザカライア様ではないようです」

「……なんですって?」

「かの方の代理で来た、と。 フレドリック・ウェインと名乗られました」

「!」

「侯爵家の馬車なのは確認済ですが、如何なされますか?」

「──」


 色々なことが壊れたメリーゴーランドのように、ぐるぐると回る。凄い速さで。

 だが悩んでいる暇はない。


「……ハワード」

「はっ」

「お父様にこれまでの経緯を急ぎ報告して。 私はパーティーに行くわ」

「御意」


(悩むのは動きながらでいい!)


 こうなったらもう、罠でも構わない。

 わかっているいくつかを元に探るべきだ。





「プラウス嬢、お待たせ致しました」

「ウェイン様、ザカライア様はどうなさったの……?」


 わざと不安げに尋ねる私に、彼はチラリと周囲を見てから困った笑顔を向ける。


「少々トラブルに巻き込まれたようで、間に合わないので私に迎えに行くようにと。 まずは馬車に」

「……ええ」


 伯爵家家人に見送られながら、ウェイン令息の手を取り馬車に乗り込む。


「ドレス、とてもお似合いです。 美しい婚約者を一番に見ることができず、ザカライア様もさぞかし残念でしょう」


 心配であることを匂わせながら、気遣うようにそう言う。実に紳士的である。


 だが彼を信用しているワケではない。

 なにより彼は、ザカライア様に信用されていない。迎えを任せる筈などないのだ。


 だからといってすぐ敵と看做(みな)すのは早計だ。

 彼がなにを知り何故ここにいるのか──それが嘘にせよ本当にせよ、今は情報を取得する必要がある。


「それで、トラブルというのは?」

「まずプラウス嬢、実は私がザカライア様から頼まれたというのは嘘です」

「! 」


 意外な告白から話は始まった。


 ウェイン令息はザカライア様を学園でお見掛けしたそうで、『卒業式の様子を見にきたのでは』と言う。

 反省だけでなく打算的な意味からも『ホレスのことについて謝罪を』と思ったものの、下心を見抜かれてしまうことへの不安と躊躇いから、なかなか声を掛けることができずにいたそう。


「僅かに目を離した隙に、消えてしまわれましたが、あまりにも早い。 不審に思い暫く周辺を探したのですが、諦めてパーティーの準備をしに家へと戻りました。 それでも気になったので、用意が終わってから早めに学園へ向かったところ、まだ侯爵家の馬車があり……馭者も困った様子で。 『やはりなにかあったのだ』と」


 とりあえず私に伝えねば、と思った彼は『ザカライア様はトラブルに巻き込まれ、今動けないから迎えに行くように言われた』と馭者にもこちらに告げたのと同じ嘘で言いくるめ、伯爵家まで来たらしい。

 判断に困っていた馭者も、行先がこちらであることから受け入れたのだろう、と彼は言う。


(ウェイン令息の言うことにおかしな点は見当たらないわ……でも)


 不審な点がひとつある。

 彼はどうして学園に来たのが『ザカライア様』と断定できたのか。


 ザカライア様は三下三人を『兄の悪友』と認知していたのだから、互いに顔見知り程度には知っていた可能性はある。

 だが、ふたりはソックリなのだ。

 むしろ付き合いも長く、学園に通っていたホレスと勘違いするのが自然な気がする。


(やはり、完全に信用はできないわ)



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ミステリー小説っぽくなってきた!!
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