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1章 勇者→??

 まだ昼時なのに、空は大粒の雨を含んだ雲とその暗闇の中に稲光が広がる。


 そんな土砂降りの雨の中、俺は魔王のいる城へひたすら走った。


 視界に入ってくる異形の魔物には、躊躇いもなく、刃を振り払った。


 振るった刃の感覚が重く感じられてくるが、構わず走り続けた。


 そんな苦労も魔王の城にたどり着くと、一気に感じなくなった。


「やっと…これで終わる」


 今までの苦労や人々が感じる苦しみもこれで終わると思うと自然に声が漏れた。


 魔王の城に入ると、魔物たちはほとんどが戦いの前線に行っているようで、視界に入る魔物は数える程度である。


 それらに気づかれないように、城の奥へと進んでいく。


 曲がり角から突然現れた魔物がいるが、目を合わせる前にその首を刎ねた。


 敵に見られたか…?


 事切れた魔物を静かに床に下ろして辺りを見回す。


 ここでバレたらすべてが終わる…………いないか。


 周りに気配はなかった。


 さらに城の奥へと進んでいく。


 大きな廊下を奥へ進んでいくと突き当りが見えてくる。


 突き当りからは強烈なプレッシャーが俺に乗りかかってくるのを感じた。


 ここに…魔王がいる!?


 剣を構えながら、扉を開いた。


 中はかなり大きな広間になっている。


 部屋には篝火が点いており、その奥には大きな玉座が映し出されていた。


 俺は剣を構えつつ、静かに玉座に近づいていく。


 すると、玉座のある暗闇から鋭い眼光が見える。


「何者か?」


 強烈なプレッシャーが玉座から放たれる。


「ふむ…人間にその出で立ち…勇者とやらか」


 暗闇からの問い掛けに俺は答えず、ジリジリと距離を詰めていく。


「返事はなしか…やめておけ。お前が今からする選択は後悔を生む。大人しく帰るか下れ」


 さらに強いプレッシャーが放たれるが、気合で距離を縮めていく。


「仕方なしか…()()()()()()()になっても後悔するがよい」


 玉座から強烈な魔法が放たれ、黒く巨大な魔力の塊が飛んでくる。


――避けられない。


 俺は剣でその魔法を受けるが、弾き飛ばされる。


 声が出そうになるのを堪えて、剣を構えて突き進んでいく。


 再び玉座から放たれる魔法の軌道を見て、避けつつ進んでいく。


 いける。技が届く距離だ。


 俺は全力の魔力を剣に込めて、魔力を帯びた剣の切っ先を伸ばして玉座を貫いた。


「グウ…」


 剣が刺さった手ごたえがあった。


「やはり…こうなったか…神は人間が好きらしい…」


 玉座の陰から手が伸びて剣を掴む。


 手は引き抜こうとするが、俺は剣に力をさらに込めた。


「グウ…勇者…後悔するなよ…神は手ごわいぞ…」


 そう言い終わると、剣を引き抜こうとする力がなくなった。


 た…倒したのか…?


 玉座に近づいてその姿を見ると、その時に大きな稲妻が落ちて、部屋を大きく照らした。


 照らし出された玉座に座っている者を俺は見た。


 それは…………俺だった。


 そして俺の意識は闇へと消えていった。


◇ ◇ ◇


「……おう様、魔王様」


 誰かが俺をを呼んでいる。


 女性の声。


 ゆっくりと瞼を開くと、見慣れない部屋だった。


 大きなベッドに寝かされている。


「……う、うん……」

 

 体を起こすと、目に入ってきたのは浅黒い肌に大きな体。

 

 鋭い爪にごつごつとした腕。


 傍らで心配そうに見ている女性には浅黒い肌、紫光の瞳、二つの角……魔人だ。


「な、な、な、なんで!?」

 

 俺は狼狽えてベッドから転げ落ちる。

 

 そして、見上げた先に見えた鏡に映し出されていたのは紛れもなく、魔王と呼ばれる魔人の姿であった。



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