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第4話 ランニングミサイル

 気持ちよく寝ていたのに揺すられて目が覚めた。


「先輩!急に辞めるなんてひどいですよ!昨夜は大変だったんですから!」


 部下の小鳥遊だ。ちっちゃいのに元気でナイスバディ。なんであんな所で働いてたんだか。


「朝まで働いて大変だったんですよ?事情を聞く前にちょっと私も布団に入れてください」


 もぞもぞと布団に入ってくる。おい寒いだろ、布団をめくるな。


「ふふっ、先輩、暖かいですね」


 という妄想で自分の脳を労わりながら夜を過ごした。ペラペラで垢の染み付いた布団でも恋しい。




 今朝は調子がいいので牛丼を買いに行こう。店内で食ったほうが冷たい茶がタダで飲めるんだが、他人がいると心が休まらない。俺は孤高のチー牛なんだ。


 ゴミ出しをして自転車に跨ると、トイレが恋しくなった。

 コンビニの袋を下げて牛丼を買うのと、牛丼の匂いをさせながらコンビニでトイレを借りるの、どっちがマシだろうか?

 今日も考えることがいっぱいだ。




 飯を済ませてスライムを蹴り飛ばす。ずっと同じ作業で退屈なので、軽くタイムアタックを意識しながら作業をしていた。

 よし!いいぞ!9800!あと一息だ!いけるいけるやれるって!どうして諦めるんだそこで! 


 ピンポーン♪


「あ、はーい。出ます」


 軽く汗をかき、息を弾ませながら宅配便を受け取った。自宅でハァハァ言ってる奴は嫌だっただろうな。もう顔合わせたくないな、担当変わってくれないかな。


 届いたのは布団と貯金箱。まずは布団を開封して膨らませておく。安物の布団は小さく圧縮されて、しかも臭いのだ。仕方ないね。


 貯金箱は500円玉貯金で100万円貯まるやつ。100円玉だと25万円くらいらしい。

 缶切りで開けてから集めた100円玉を流し込むが、半分くらいしか溜まらなかった。5つも買ったんだし、これ両替しちゃうか。


 自転車の籠に剥き出しで入れて銀行へ。窓口で両替してもらうと、合計13万2800円。手数料が1650円も取られてしまった。俺の3日分の食費なんやが?良い商売してますね。


 まぁ仕方ない。少量ずつやれば無料で出来る事は知っていたが、逆に目立つと思って窓口を使ったんだ。この金は当面雑に使うつもりだ。たまには美味い物を食ってもいいし、無駄な買い物をしてもいい。


 帰りにスーパーで寿司でも買っちゃう?そんな事を考えながら帰ろうとしたら自転車が無かった。嘘だろ?

 思わず目を背けた先、1kmほど先を走る自転車。あれ俺のじゃねぇか!


 すぐに走り出した。歩道は障害物が多い、車道に出て走る。

 自転車も進んでいるが遅い。30秒ほどで追いついて、乗っているやつの背中を構わず蹴り飛ばした。

「馬鹿野郎!俺の自転車パクってんじゃねぇよ!」


 無事に自転車を取り戻して家に帰った。ケツとハンドルが生暖かくて嫌だった。




 無事に膨らんだ布団をいつもの場所に敷いて寝転ぶ。一番安い布団とはいえ、新品は気持ちいいな。肩幅より少し広い程度しか無いが。


 スライムを倒しに行こうとか思ったが、夕方になってから赤スライムを倒した方が効率がいいと考えて、PCで動画を見ることにした。


 Vtuberが食事事情を話している。最近は家を出るのが面倒で、ほぼ宅配を使っているらしい。

 無駄に高いと聞いて使った事が無いんだが、これからはそういうのもアリか?俺も時短しながらまともな飯を食う時代か?


 興味が湧いて調べた。ビッグマックセットが配送料込みで1680円。興味が消え失せた。

 さあ、今日もラーメンを食おう。



 夕方になって赤スライムを倒して回る。やっぱりこっちの方が効率がいい。気分がよくて速度が上がり、1時間の収穫は20000円を越えた。

 体の調子はどんどん上がる。お金も貯まる。それでも俺がいるのは、トイレのドアが見える草原だった。


 世界はこんなに綺麗で、遥か遠くまで広がっているのに、自分が何かに縛られている気がして……。


 やる気が失せて、Vtuberを眺めて寝た。

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