第3話 豊作
朝起きたら着信履歴がいっぱい溜まっていた。
知るかボケが。
全部無視してシャワーを浴びた。朝もラーメンだ。カット野菜とウィンナーは日持ちするし、最低限の栄養が取れている気持ちになれる。
トイレを開けて草原の確認だけをして、部屋に戻ってPCをつけた。
これからもスライム狩りをするとして、どうせやるなら楽な方がいい。それと、安心できるように余分に集めておきたい。
どうやればいいか?まず簡単なのが武器だ。包丁や蹴りではなく、槍でもあれば楽だろう。100円を拾うのは…ゴム手袋?粘着物をつけた棒?強力な磁石ならくっつくと聞いたことがあるが、どこで手に入るか分からん。
うーん。どっちもあんまりよろしくない。魚釣りを趣味にする人は多いが、漁師が釣り竿で魚を釣るだろうか?漁師なら網や罠を使って追い込むだろう。一部を除いてな。
効率よくスライムを狩るためには、罠で殺すのが一番いい。100円玉を集めるには、スライムを一箇所に集めるのがいい。
獲物を一箇所に集めて殺す罠。つまり餌で集めてから殺すわけだ。
うまくいけば放置で稼げるし、100円玉も簡単に集まる。
うーん。餌で集めて、電撃でコバエを殺すやつを剥き出しで並べておいて、倒した後は賽銭箱で受けるってのはどうだ?餌は分からんが、通販で全部集まるだろう。
うん。これを作っておけば楽に稼げるんじゃないか?
などと想像を膨らませ、また今度やろうと決断した。
ノンビリと朝を過ごし、今日も草原に立つ。
「セイ!」
やっぱ蹴り飛ばすのが一番だわ。
時計を見ながら元気に肉体労働に勤しむ。頑張れば1時間に8000円くらい集まるな。普段使いのリュックに小銭を入れて、溜まってきたら部屋に戻って通販の箱に流し込む。
蹴り飛ばしたり拾ったりの連続で疲れるかと思ったが、体は絶好調だ。今ならスクワット1000回やっても平気だぜ。たぶん。
もういくら集めたのか。昨日の分と合わせたら5万円くらいにはなっていそうだ。
無心で蹴り飛ばし、ポンッと変化するのを待って拾う。んー今度の100円玉デカいな。
いや違うわ。100円玉じゃない。これ宝石だ!
うひょー!レアドロップか!?一定数討伐報酬か?
スライムに似た淡いブルーの、パチンコ玉くらいの宝石。売れるかな?鑑定に出して変な物だったら困るな?そんなことを考えながら眺めていると、スゥっと手のひらに沈んで消えてしまった。
「はぁ!?」
瞬間!脳内を駆け巡る存在しない記憶!頭の中に無理やり知識がぶち込まれた。
理屈を越え、無数に存在する「スキル」。そしてそれを脳と体に刻み込むスキルオーブの存在。
落ち着いた時、自分に起きた事を冷静に認識できた。スキル「浄化」。それが俺の手に入れた物だ。
素晴らしい。これでもう一生掃除しないで済むぞ。
大喜びで部屋に帰り、万年床を浄化した。布団が消え失せた。
◇◆◇◆◇
全部やる気が消えて今日はもう止めた。
頭に詰め込まれたスキルについて考えると、浄化は自分でちゃんと対象を指定しないと不浄なものを全て消し去ってしまうらしい。自分に向けて使わなくてよかった。
消し去るってどこにいくんだろうな。どこかで誰かが俺の布団を使っているんだろうか。まぁ、十分に働いてくれたよ。
予備の布団なんて無いので、今日寝る布団すら無い。ソファーなんていう気の利いたものもない。無いものは仕方ないが、とりあえず通販で注文しておこう。
通販サイトで布団を探す。今までは一番安い小さくてペラペラな布団だったが、キングサイズとか買ってゴロゴロするのもいいんじゃないか?それともベッドとか買っちゃう?金ならある!
などと妄想しながら一番安い布団を買った。ついでに貯金箱も買っておく。
大量の100円玉で買い物したり、馬鹿みたいにカバンに詰めて両替に行ったりしないぞ。100円貯金がいっぱいになったので両替に来たというふうに装うんだ。
たぶん明日には届くだろう。そしたら缶切りで開けて100円玉を詰め込み、銀行に持っていこう。
完璧なシミュレーションをして、ラーメンを食って寝た。