第20話 解体スキル
昼の部の開始。
早速蜂蜜の蓋を開けて置いてみた。
「コケーー!!」
「コケガァァ!!」
狂ったように鶏が寄ってきた。
こいつはすげぇ、蜂蜜は魔物を寄せるんだな。
鶏たちは俺が止まれと命じれば、素直に止まってしまう。哀れだ。
ひたすら走ってくる鶏たちを倒し続け、卵を拾う暇もなかった。
夕方まで狩り続けて、やっとスキルオーブが出たのを確認し、蜂蜜の蓋を閉めた。
スキルは解体。頭の中にはスキルの使い方がインプットされている。
こいつはすげぇぞ、鶏の捌き方がわかる。解体する手順だけじゃない、どこを切るべきか正確にわかる。十七HITで十七分割にできそうなスキルだ。
早速カバンに卵を集め、鶏を五羽持ち帰る。前に首を落としてみたが血はほとんど出なかった。
もう血が出る状態じゃないようだ。だが普通の肉じゃないし、絶対駄目ということもない。雑菌がいなければいいわけだしな。
部屋に戻って包丁一本で解体した。本当は色々な形の包丁があったほうがいいことが分かる。鶏くらいならなんとかなるが、牛になるとかなり無駄が出そうだ。
仕上がった肉は赤みが強い。血が抜けてないからかな?匂いを嗅いでみるが全然平気だ。生でも行けそう。
とりあえず全部捌いて冷蔵庫へ。廃棄物は草原に放ってきた。
さて、モモを1枚食ってみるか。
皮を下にして鍋に入れてから着火。中火でしばらく放置して、染み出してきた脂がパチパチ跳ねる音と香りを楽しむ。
ちょっと覗いて焼けているのを確認してひっくり返す。鍋を斜めにして脂をかけ続けるといいらしいが面倒くさい。強火にして焦げ目を付けた。
肉を取り出し、脂と肉汁をそのままに水入れて再び着火。マルサイラーメンをぶち込む。
取り出した肉を一口サイズに切ると、まだ中心に火が通っていない。分かっていたのでそのままラーメンにGO。豪勢なチキンのラーメンだぜ。
すげぇうまそう。意気込んで食べた。下味を付けてない肉は正直きつかった。
塩は偉大。それが感想だ。
さて。捌いた鶏肉をラップに包み直し、それを取り置いていたスーパーの袋に詰める。
町に出て、昨日の女子中学生だか高校生のアパートへ向かった。
ピンピンポンポーン♪
こんばんは、怪しいおじさんのお出ましだよ。
「はい。どちらさまですか」
「夜分に失礼します。昨晩、うちの猫がお世話になったようでお礼に」
「えっ、あの猫ちゃん家猫だったんですね。すみません、首輪がなかったので野良かと」
「いえいえ、ウチはちょっと離れたところで小さな牧場をやってまして。普段は自由な姿で遊ばせていたんです。いつの間にか車に乗っていたようで、逃げられてしまいました。お世話になったと言っていましたよ」
「あはははは。猫ちゃんすごいですね」
「えぇすごい猫なんです。これはお礼です、うちのトリちゃんです」
スッと鶏肉を差し出す。これなら受け取りやすいだろう?しかもウチが農場なら肉を持ってきても怪しくない。
「えっ……トリちゃん?って?」
「昼過ぎまで生きてましたから、新鮮で美味しいですよ。ぜひ召し上がってください」
「あ……、あ、ありがとうございます」
「それでは失礼します」
いやぁいいことしたな。恩には恩で返す。チキンウィンナーにはチキンで返す。完璧だ。
とてもいい気分で眠った。あの子はいい子だな。