第19話 ねっこ
蜂蜜を蹴り落として、冷えた頃に池に投げ込んでおいた。
池を盛り上げて、明日は川を作ろうと思う。
カバンに詰め込んだ花はアパートの端っこに放っておいた。ゴミを投棄したわけじゃなく、何か変化があるかもと思ってな。
街に出た。何か面白いことが無いかな。
しかしなーんもない。そらそうだ、そんなしょっちゅう人攫いがあってたまるかよ。
仕方ないので一度部屋に戻った。そして素っ裸になり、変身を使う。
「うにゃおん」
猫だ。何をするかって?猫は可愛がるもんだろう。
家を出てうろうろ、狙いはOLだ。
何故美少女ではないか?美少女のだと友達と共有されて騒がしくなったり、親とのいざこざがあるかもしれん。
だが寂しいOLなら、すんなりと可愛がられてささっと逃げて終わりというわけだ。
俺はキャッフードくらい躊躇いなく食える。なんら問題はない。
駅前に出て獲物を探す。美醜にこだわりは無いぞ、優しそうなやつだ。
10分ほどあーでもないこーでもないと選り好みしたが、キリが無いので適当にターゲットを選んだ。
てくてく歩いている前に回り込み、うにゃーんと可愛らしく鳴いてやる。これでイチコロよ。
「なにこのブッサイク。しっしっしっ!」
ふぅ。何もなかった。やっぱりこういう時に狙うのって少女だよな。
目についた少女の前で同じ様に鳴いてやる。
「うわぶっさ!」
はぁ。世の中どうなってんだよ。猫にまでルッキズムを発揮するとかイカれてるよ。
可愛い猫に変身することは出来る。でもなんか悔しいじゃん。俺は絶対ブサ猫で押し切るぞこのやろう。
次の少女を探した。男?なんで男を選ぶ理由が?
次にやってきたのは高校生か中学生か?よく分からんがどっちでもいい。
「うにゃあん!にゃにゃあん!」
腹を見せてゴロゴロ転がり、足元でスーパーアピールタイムだ。
むぎゅ!
「フギャアア!!」
踏みやがった!信じられねぇぶっ殺す!
「わぁ!ごめん大丈夫!?痛かったよね!?」
なんだ気づいてなかっただけか。あと2秒遅かったら頭が爆発してたぞ。
少女はひとしきり俺の体を見回して、俺がけろりとしているのを確認して安心したようだ。
「ごめんね。首輪がついてないね。うちで御飯食べる?何にもないけどね」
「にゃんにゃん」
少女にしがみついて家まで連れて行ってもらった。
「はいどーぞ」
「うみゃうみゃ」
う~ん食べ慣れた味!100グラム58円のチキンウィンナーじゃあねぇか!
「ごめんねうちにはこれくらいしか無くて」
少女の家で出たのは激安ウィンナーと水だけだった。
それだけ貰って撫で回される。お客さん、ちぃと足らんのんちゃいますか?
少女は俺でたっぷり遊んでから、簡単な食事を作り、ローテーブルで勉強を始めた。
「うにゃっち!」
「あっ!」
俺は自分で扉を開けて外に出た。
まったく、面白いこともないし食い物もショボかったぜ。
久しぶりに人の暖かさに触れた気がした。
◇◆◇◆◇
翌日。朝から草原に入る。
池が大きく盛り上がっている。10mあるんじゃね?
でも川を作るならここだけ高くでも作りにくいよな。無理ではないが。
ちょっとずつ坂にしたい。傾斜は小さくでもいいんだ、こんなに池を育てる必要はなかった。
川床を掘って、その横のエリアは土手にした方がいいか?そこまでしなくていいか。
池が高すぎてめんどくさい。ちょっと放っておこう。
それより牧草エリアだ。ここで500匹達成を目指すことにした。
昼まで粘ったが100匹も倒せない。数が少ないんだ。
部屋に戻ると昨日取っておいた蜂蜜が目に入った。10mクラスの蜂蜜だ。蛇が寄ってくるくらいだし、鶏が寄ってきても……おかしいけどやってみるか。
とりあえず飯だ。マルサイラーメン屋台豚骨を鍋にぶち込み、1つ10円未満のインスタント味噌汁を追加する。そこに天かすを入れるとドロドロの臭いトンコツラーメンになる。
更に今日は冷凍餃子をぶちこむ。こいつは肉・ニラとニンニク・ワンタンで出来ていて、1つ12円ほどのやすい具材だ。ウィンナーより安いのに存在感が強い。
完成したいのはプーンと臭みのあるドロドロのラーメン。こういうのでいいんだよ。