第15話 衝動
色々と掴めてきた。とにかく今やるべきことは、採れるスキルオーブを取ることだろう。
灰森では浄化を使い、疲れたら土人形を踏み潰す作業になった。
土エリアを増やし、ドロップした土団子は草原の上に投げておく。これが肥料なら、草原エリアにも特別な変化があるかもしれない。畑も近くに作りたい。
炭の方は途中から拾い集めて部屋に移した。燃やすというのは植物・動物にとても有効だ。動かないモンスターが相手なら、これで足りる。
作業を続けていると、先に土人形からスキルオーブが出た。
効果はゴーレム使役。
頭の中にゴーレムの使い方が書き込まれるが、肝心のゴーレムの作り方は付いてこない。セットにしとけよ……お預けだ。
灰森では夕方まで粘って、やっとスキルオーブをゲット。
スキルは煙玉。ボンッと小さく爆発させて煙が立ち込めるスキルだ。一応魔法だが、使い所がわからないな。
作業が終わった時、灰森の高さは平地に戻っていた。
まだスキルオーブを取れていないのは、花畑の花と畑の野菜だ。
畑はともかく、花からはスキルが出ないかもしれない。何故なら、魚は沢山の種類がいたのに、明らかに総数で500になった辺りでスキルが出たからだ。
1種のエリアから1つのスキルなのかも。
10mほどの山になった上にある花畑。登れなくはないが、これ以上育てるわけにはいかない。
明日は花畑を低くする作業と、土を畑にする作業だ。
まだそれなりの高さを保っている草原の赤スライムからは、1万円札が1枚出た。少しだけ盛り上がった草原からは、期待通り500円玉だ。
あんなに嬉しかったのに、今じゃ一番どうでもいいアイテムになったな。
部屋に戻り。食事に出かけることにした。夜はあそこには行けない。
出かける前に鏡の前に立った。汚れもヒゲも、浄化で消し去る。
近頃は視力も上がったせいで、肌の小さなくすみや産毛がしっかり見えて気色悪い。すべて浄化で消し去った。
服を脱ぐと、筋肉が盛り上がり、ガチガチに仕上がった体。この短期間にモンスターを倒しているだけで、こんな体になるなんてな。
シャツと半パンだけで町に出る。
もう金なんてどうでもいい。どうせなら記念に高い飯でも食ってみたいな。
だが駅前まで出ても大衆店しかない。というか、高級店なんて入ったことないし、どこにあるのかも知らん。
電車で都市の中心まで移動すれば何か見つかるだろうか?
……そこまでするのも面倒だな。
仕方ないので、ぶらぶらと探し歩いた。
町は不潔で、無意味な装飾だらけだ。何が楽しいのか分からないが、若者たちがゲラゲラとはしゃいでいる。
つまらない。ここにあるすべてが無駄だ。あの辺りは全部潰して畑にすればいいのに。こっちは燃やして、火エリアになるか試したい。
あのガキ共を倒したらどんなアイテムを出すんだろう。
歩いていると、敏感になった耳に微かな悲鳴が届いた。
近くの建物に飛び上がって声のした方を見ると、裏路地で女を車に押し込む男たちの姿。
いいぞ、犯罪だ。
気付かれないように追いかけた。
車が止まったのは丘の上の豪邸。シャッターが開いて車は中に入っていく。
こんな金持ちそうなのに、買わずに攫うのか。暴力性を抑えきれない状態なのかな?
気兼ねなく殴れると思ってついてきたが、もしかしたら俺と同じ様な悩みを抱えた仲間なのかもしれない。場合によってはあそこに連れて行ってやるのもありだな。
小さなトカゲに変身して侵入する。
車は広い車庫に入り、男たちが女を引きずり出していた。なんと女はもう一人いたようだ。
何をするのかと見ていたら、男達は服を脱いで女にのしかかる。
車に男が5人、他に集まってきたのが3人、合計8人の男達。
金もありそうな連中なのに、それで女二人を攫って来て、ただ嬲るのか?理解に苦しむな。
もういい。期待外れだ。変身を解いたら素っ裸になって間抜けなので、大きな鰐に変身して男どもを殺した。
女は狂った様に叫んでいるが、俺が元の姿に戻ったらもっと叫ぶだろ?まだ服は脱がされてないんだからギリギリセーフだろう。
力が余っていたので屋敷を粉々に砕いてから家に帰った。
結局食事をしていないのに、不思議と満足感に包まれていた。
俺はまた一つ、戻れない道を進んだようだ。