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第14話 恐怖は消える

 部屋に帰っても眠ることができず、ガタガタと震えていた。

 恐ろしい。俺が今まで触れてきたものは何だったんだ。最初に扉を開いたのが夜だったら、それだけで終わっていた。


 何が安定だ。こんなわけの分からないものを利用して、戦って利益を得るなんて。いつだって、もう少しで危険なことになっていたじゃないか。

 いつから俺はあんなに楽観的になっていたんだ? 思い返せばメチャクチャな行動ばかりだった。武器も持たず、防具も考えず、時には裸で攻撃を受けた。今日は一万円札だって使ってしまった。


 俺は頭がおかしくなっていた。おそらくあの日、初めてあそこに踏み込んだ日から。

 間違いない。だって今、もうあそこに戻りたくなっている。

 夜は危ないから昼間に行こうと。魔物に対する強烈な敵意が俺の中にある。触らないと決めても焼いてしまう。何も欲しくないのに倒してしまう。


 どうすればこの欲求を抑えつけることができるだろうか? いや、その場合どうやって生きていくんだよ。金を稼がなくてはいけない。


 自分の意志の弱さは知ってる。頭だってよくない。俺はきっと、あそこを諦めることはできないし、諦めてくだらない仕事をして生きることはもっとできない。

 もう贅沢を知ってしまった。まともな人間からすれば何をと思うだろう。だが、抑圧し続けた俺の心は、もう解放されてしまった。


 暴力の快感。世界を思い通りに作り変える楽しみ。他者を圧倒する力。殺して奪い取る力。思うままに振るう力。

 知ってしまえば、もう我慢できない。三大欲求なんて目じゃない欲望だ。

 駄目だ、抗えない。あそこに行かなければ、俺はきっとすぐに人を殺してしまうだろう。暴力なんていう生ぬるいものじゃない。殺したい。殺して奪いたい。


 性能の低い脳を使って懸命に考えた。

 答えはひとつしかない。覚悟を決めろ。

 俺はあの世界で生きていくんだ。今は、夜を超える力をつけるためのモラトリアム期間でしかない。


 モンスターを狩り、レベルアップとスキルを得て、また新たな土地を生み出し、地面のレベルも上げて、より強いモンスターを倒す。

 もう引き返すことはできないんだ。


 震えは止まっていた。急に眠くなって、眠った。


 ――気がついたら朝だった。頭がスッキリしている。

 昨日のことを忘れたわけじゃないが、恐怖は消え去った。やっぱり、頭がおかしくなっているんだな。

 構うものか。しょうもない武器もいらん。ただ、嫌になるまで戦ってやる。


 扉の向こうは、いつも通りだった。

 花畑の山は10mくらいはありそうだ。灰森も盛り上がっている。


 まずは灰森からだ。1mほど盛り上がったそこに入り、現れるガストに浄化をかける。

 ほんの少しだけ抵抗を感じたが、まだまだ浄化で倒せると感じた。炭は拾わず、スキルオーブ狙いでガストを倒し続ける。


 続けていると、急に強い倦怠感を感じた。ゲームなどの知識から考えると、MP切れってやつじゃないか?

 確証などないが、休憩を兼ねて魚を倒すことにした。


 こちらは簡単だ。水の中に入って襲われたら、水面を叩く。

 今の俺が全力で水面を叩けば、それだけで小さな池の水は大半が外に飛び出す。魚も一緒だ。それを包丁でとどめを刺した。


 気分が良くなるまで続けるつもりだったが、スキルオーブが現れた。

 一体ずつ倒すガストよりも、こっちの方が早い。スキルの中身は――


「水鉄砲?ここで水魔法かよ」


 使い方は頭にインストールされた。指の先から水が飛び出てくる。

 ただそれだけだが、力を込めると高圧洗浄機くらいになった。さらに、出しっぱなしではなく、貯めてから単発で打ち出すと、地面に穴を開けるくらいの威力となった。


 これならスライムたちにも有効だろう。だがその前に思いついたことがあって、土人形に弱い水を当ててみた。


 弱い水を受けて、ボロボロと崩れる土人形。すぐにむき出しになったコアも、煙を上げて動きを止めた。


 草原スライムの浄化は灰エリア特効。池魚の水鉄砲は土エリア特効か。花畑のどくばりも、どこかで特効になるんだろう。

 対スライム特効を見つけよう。そのために、この世界をクリエイトするんだ。

 あらゆるエリアを再現する。海も、島も、氷も。

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