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第10話 えっほ!えっほ!

 ちょっと手違いがあったが、池を作っていこう。


 スコップを突き刺し、芝をベリベリと剥がし、土をザクザク掘る。どんどん掘る、ガンガン掘る、気分はドリモグだぁ!


 ガキン!


 一メートルほど掘ったところで、スコップが固い何かに当たった。大きな石だ。試しに位置をずらしても全然切れ目が見えない。おいおい、これ岩盤か?


「うーん……まぁ、いいか」


 予定より浅くなったが、もともと大きな池を作るつもりもなかった。そもそも、手元にあるブルーシートも最大で10m×10mだ。深さは妥協して、広さ優先ってことで。


 ガシガシ掘り進め、ブルーシートのサイズに合わせて穴を整える。普通なら丸一日かけても終わらない作業だろうが──今の俺は違う。


 力が、溢れているのだ!


 ゴリゴリ掘って、スパスパ整地。あっという間に、巨大な穴が完成した。


 そのままブルーシートを広げて敷き、固定する重しは……まぁ無いけど、いいや。この際、水の重さでなんとかしてもらおう。ホースから勢いよく水を流し込む。

 これ結構水道代かかりそうだなぁ。


 水を入れている間に、掘り出した土を山にしておく。

 もしかしたら何かに変化するかもしれない。土ゴーレムが出るだけでOK。


 雑に土を集めて小山を作った。なかなかいいんじゃないか?だがやっぱり少ないなぁ。

 本格的に山を作るなら重機がほしい。だが入口はトイレのドアだ。

 んー、俺がもっともっとレベルアップすれば何とかなるか?


 土の処理が終わって池(予定)を覗き込むが、まだまだ底にちょっと水が溜まった程度だ。だいぶかかりそうだな。

 端っこはブルーシートに角度を付けてあるから、全体のサイズは8*8*1mくらいかな?風呂に水を貯めるのと比較して……これ明日だわ。


 諦めて部屋に帰った。



 トイレのドアを閉められないので向こうが気になって仕方ない。

 夕方になったら小銭を稼ぎに行こうかな。それまでにちょっとネットで買い物だ。


 岩を砕くツルハシがほしい。

 俺の力に耐えられるような、全体が鋼鉄で出来ている物を探したが、どうもクソ硬タイプのツルハシは小型の片手用ばかりしか見つからない。登山用なのかな。

 木の柄のツルハシでも掘れるんだろうか?全力で叩きつけたらすぐに折れちゃいそうだ。


 ゲームみたいに武器屋とかいないのか?鋼の剣を1500円で売って欲しい。

 とりあえず仕方ないので、木の柄の両手用ツルハシを注文しておいた。


 よし、一段落したことだし。蜂蜜を舐めよう。

 一つ一つ瓶に詰められた蜂蜜。一旦回収はしたが、大半は向こうに並べて置いてきた。


 瓶の蓋をひねると、カチリと小さな音を立てて開いた。

 ふわりと立ち上る香りは、まるで陽だまりに咲く花々が一斉に微笑んだかのよう。

 濃密でありながらどこか清らか、鼻の奥にやさしく届く甘やかな芳香が、ひと息で心をほどく。


 スプーンを差し入れると、とろり、とろりと重く滑らかに落ちてくる黄金色の液体。琥珀を溶かしたかのような光沢が、自然の奇跡を物語っている。


 口に含んだ瞬間、まず舌に触れるのは濃厚な甘さ。でもそれは決してくどくない。やがて柑橘のようなほのかな酸味と、花の蜜特有の香りがふわっと広がり、深く、まろやかに余韻を残して喉を通る。まるで一匙ごとに、花の記憶と太陽の温もりが体に染み込んでくるようだ。


「なんか高級な感じすぎて舌に合わないな」


 俺の舌は庶民舌なのだ。高級チョコより麦チョコ、松茸よりもシメジなのだ。これ売れないかな?道具屋出てこないかな。



 時間を潰して、夕方になって草原に戻った。

 水はまだまだ半分すら遠い。一旦忘れよう。

 積んでいた土は無くなっていた。というか小さな丘になっていた。草原が少しだけ盛り上がっている。なんでかな?下の芝をそのままにしたから?


 それより大きな変化があったのは蜂蜜だ。一生懸命集めた蜂蜜が無くなっていた。

 そして、蜂蜜を置いてあった場所が大きく盛り上がっていた。


 土を積んでいたところは、高さ1mで直径5mくらい?丘というほどでも無いかも。

 蜂蜜を積んでいたところは、高さ5mくらいはありそうな山。直径は同じく5mくらいで、頑張れば登れなくも無い感じ。ちょうど二階建ての家くらいだな。


 丘の上でも赤スライムがぴょんぴょんしている。山の上は角度の問題で上手く見えない。

 理由は分からんが、とにかく一回登ってみるか。なんか楽しそうだし。


 えっほ!えっほ!山の上の景色を調べなきゃ。えっほ!えっほ!


 ん?急に暗くなった?


 ズドォォン!!


「うぎゃぁぁぁぁ!」


 突然襲い来る巨大赤スライム!俺は山の下に叩きつけられた。

 追撃に大きく跳ね上がる巨大赤スライム!その巨体が俺を押しつぶそうと迫る!


「だぁぁぁぁぁっ!!」


 小細工は無用!俺は思い切りしゃがみ込んで全力で飛び上がった!

 俺の頭!お前のボディ!どっちが強いか勝負だ!


 どぷ!俺の体は巨大赤スライムの表面を突き破り!突き抜け……る前に止まった。


(しまったぁぁ!)


 まずいまずい!息が出来ないぞ!

 無茶苦茶にもがくがどうにもならない。こんなところで死ぬのか?


 いや違う、俺には奥の手があるのだ!


「変!身!巨大ウニ!」


 体をウニに変える。巨大なウニのトゲが赤スライムの体を突き破った!


 べしゃあ!


「ぶはぁ!」


 危ないところだった。スライムは打属性に強い。当たり前なんだよなぁ。


 ポンッ!


 軽快な音と共に赤スライムの残骸が消える。そこに残されたのはいまいち見慣れない物。


「うひょ!新一万円札だ!」


 名前は覚えてない。おっさんの顔が印刷されたお札が10枚もあった。

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