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支店の開設に向けて

……………………


 ──支店の開設に向けて



 俺たちヴォルフ商会はついにフリーデンベルクに正式な支店を作ることになった。


「場所を決めないといけないね」


「だねぇ。フリーデンベルクは広いから」


 俺とリーゼはそんなことを言いながらフリーデンベルクに出す支店のための準備を進めていた。お店に必要な備品などの調達と運搬するための梱包だ。


「そのことでしたらお任せください」


 と、ここでクリストフさんが申し出る。


「いい場所に心当たりが?」


「ええ。前々から目を付けていた場所があるのですよ」


 そう言ってにんまりと笑うクリストフさん。


「おお。それじゃあ、一応自分とリーゼも確認しにいっていいですか? 商品も運ばないといけないですし」


「ええ、ええ。もちろん商会長であるジンさんの判断が一番のものですよ」


「では、フリーデンベルクにてお会いしましょう」


 いつものようにクリストフさんが先に出発し、それから俺とリーゼが車で出発。


 フリーデンベルクを目指して旅をし、現地でクリストフさんと落ち合う。


「クリストフさん! それで、目を付けいた場所とは?」


「こちらです」


 俺たちはクリストフさんに案内されて、フリーデンベルクの街を進む。それから行きついた先には──。


「この建物です」


「おお? なかなかに立派な建物じゃないですか!」


 その建物はちょっと古びているが、フリーデンベルクに並ぶ他の建物と遜色ないぐらい立派なものであった。三角屋根で、窓も多く、色鮮やかな建物だ。


「しかし、これだけ立派な建物が空き物件なんですか?」


「そうなんですよ。見ての通り古びているので改修が必要ですし、それに大通りに面しているので値段も高い。なかなか手を出せる商人はいなかったようです」


「ほうほう」


 事故物件とかじゃないよな……? と思いながらも、俺は既にこの建物が好きになり始めていた。この建物ならばグリムシュタット村からフリーデンベルクに頻繁に往復しなくても、商品を保管しておくことができそうだ。


 それにこの前まではサラリーマンで誰かに使われるだけだった俺が、ヴォルフ商会の事務所に続いてこんなに立派な建物を店舗にできるのは正直嬉しい。


「分かりました。ここで決定しましょう!」


「おお! ありがとうございます!」


 クリストフさんもここを気に入っていたらしく、俺が決めると大喜びであった。


「しかし、手続きとかは……?」


「ご安心を。こちらでやっておきます。魔法使い連盟のテレジア様や市長のゲオルグ様も力を貸してくださるそうなので、大丈夫ですよ」


「それなら安心ですね」


 俺とリーゼはフリーデンベルクの支店開設までフリーデンベルクに滞在することになり、宿に泊まって手続きが終わるのを待った。


「手続きの方、終わりました。これであの建物はヴォルフ商会のものです!」


 それから3日ほどで手続きは終わり、クリストフさんがニコニコの笑みで証明書類を俺たちに渡した。リーゼが読んでみたが、ヴォルフ商会の支店として問題なく建物を使えるようだ。


「では、早速支店として機能するようにしないと」


「そうだね。まずはお掃除から!」


 俺たちはカギを貰ってクリストフさんが購入した建物に入る。


「うん。ちょっと古びてるけど問題ないね」


 埃が溜まっているけどれど、建物として崩壊してはおらず、俺たちは安心して店舗の中に入り、持ち込んだ品を広げる。まずは掃除道具からだ。


「じゃあ、綺麗にしましょう!」


「おーっ!」


 俺、リーゼ、クリストフさん、そしてエリザさんの4人で掃除を開始。


「エリザさんも掃除を手伝ってくれるんですね?」


「この前の懐中電灯の礼だよ。あれは便利だ」


 まだ電池は持っているらしく、エリザさんは腰に下げた懐中電灯をポンポンと叩く。


「あとで予備の電池を差し上げますね。古いのと交換してください」


「あいよ」


 それから全員で箒で埃を掃き、雑巾でごしごしと床や壁、天井を磨き、丸1日かけてなんとか店舗は綺麗になった。


「次は商品を運び込みましょう」


「それは私に任せて!」


 商品を店舗に運びこむのにはリーゼの魔法が役に立った。魔法ですいすいと商品が店舗の中に運び込まれ、建物内にストックされる。


「よしよし。あと必要なのは……?」


「看板ですね。ヴォルフ商会の看板を下げなければなりません」


「おお。そうでしたね」


 フリーデンベルクのどこの店舗を見ても、その店が何の店なのか分かる看板が下げられている。ヴォルフ商会も立派な看板を下げなければ!


「看板屋さん、みたいなものはあるんでしょうか?」


「もちろんありますよ。まずはどのような看板にするかを決めてから、それから発注しましょう」


「う~ん。ヴォルフ商会というぐらいだからオオカミの看板、ですかね?」


 俺はノートにオオカミのイラストを描いたが、我ながら絵がへちょい! これでは全く看板に使えそうにないな……。


「こんな感じ?」


 俺の書いたイラストをリーゼがもっとカッコよくしてくれた。おお!


「そうそう! これでいいんじゃないかな?」


「よーし! 決まりだね!」


 俺たちはそれから看板のデザインを決定し、看板などの製造を手掛ける木工ギルドに発注した。木工ギルドからは2、3日でできるという返事を貰ったので、俺たちはその間ヴォルフ商会の支店になる建物に泊まり込んだ。


 そして──。


「できた!」


 俺たちは木工ギルドから配送されてきた看板を店に下げた。カッコいいオオカミの看板が店舗を飾り、みんなが満足そうにうなずく。


「いやあ。これでいよいよフリーデンベルクにヴォルフ商会が本格的に進出するんですね! まだ1年ぐらいしか経っていないのに感無量ですよ!」


「そうですね。では、ウルリケさんたちに連絡しましょう」


「ええ!」


 ヴォルフ商会のフリーデンベルク支店ができたところで正式に雇用するウルリケさんと臨時で雇う数名の魔法使いの人を招いた。


「凄いですね! こんな一等地にお店を構えるなんて!」


「これもみんながこれまで頑張ってきたからですよ。これからもよろしくお願いします、ウルリケさん」


「こちらこそです、ジンさん」


 ウルリケさんには支店長を任せることになる。責任重大だが、みんなで支援するし、ウルリケさん自身も優秀だしどうにかなるだろう。


「さて、では今日はフリーデンベルク支店開設を祝ってパーティをしましょう!」


「わーっ!」


 俺たちは持ち込でいたお酒を冷蔵庫で冷やし、料理をフリーデンベルクの飲食店から買ってくるとヴォルフ商会の支店でパーティを開いた。


「このお酒、美味しいですね!」


「気に入りました? ビールって言うんですけど」


 ヴォルフ商会も立ち上げ当初から人数が増えて、賑やかになっているのを実感。


 これからもみんなで仲良くやっていければいいなとそう思いながら、俺はリーゼや他の従業員とともにお酒を飲み交わしたのだった。


……………………

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― 新着の感想 ―
生ビールサーバー購入して、生ビールを飲める様になっても良いかもー、
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