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お城に招待されました

……………………


 ──お城に招待されました



「これは……!」


 周回上の光景に驚いた表情を浮かべるのは金髪碧眼の美少女だ。


 リーゼロッテさんや子供たちとは明らかに違う高級そうなドレスを纏っており、ウェーブした綺麗な金髪は背中まで流れている。そんな青い目の女性だ。


「これはニナ様!」


「え?」


 リーゼロッテさんが慌てて膝を着き、子供たちも同じように膝を着いた。いきなりのことに俺はどうしていいのか分からず、とりあえずリーゼロッテさんの真似をして、膝を着いておいた。


 恐らく高貴な立場の人なのだろう。そう言えば異世界って貴族とか王様がバリバリ現役なんだよな……?


「いいのです。顔を上げてください、リーゼロッテ。子供たちも」


 ニナと呼ばれたその女性がそうみんなに声をかける。


 そう言われてリーゼロッテさんと子供たちが立ち上がり、俺も続く。


「それよりこれは一体……?」


 ニナさんはそう言って集会場で今も映画を映しているスクリーンを眺める。ちょうどヘリコプターが列車に近づいるド迫力シーンの真っ最中だ。


「リーゼロッテ。これはあなたが魔法で?」


「いえいえ。とんでもない。こちらにいるジンさんが持ってきてくれたものですよ」


 そう言ってリーゼロッテさんはニナさんに笑顔で俺を紹介。


「スオウ・ジンさん。以前、お菓子を持ってきてくださったタダシさんの家族の方です。ニナ様もタダシさんは覚えておられるでしょう?」


「ああ! あのご老人ですね。確かに珍しいお菓子をいただきました。とても上品な甘さであって美味しいお菓子……」


 祖父はどうやらお嬢様っぽい人にも饅頭を配ったらしい……。


「では、そちらの方はジンと申されるのですね。改めまして私はニナ・フォン・グリムシュタット。この地の領主グリムシュタット伯爵アルノルトの娘です。どうぞよろしくお願いしますわ」


「ど、どうも。よろしくお願いします……」


 やばい。俺は貴族や王様みたいな人とどう話せばいいかなんて知らないぞ!?


「ジン。これはどういうものなのか、教えていただけませんか?」


「は、はい。これはですね。カメラという機械で取り込んだ映像を再生しているのです。このようなものを映画と呼びます」


「カメラ、ですか?」


「ここにグレードは落ちますが、似たような機械があります」


 俺は首を傾げるニナさんにスマホを取り出して、カメラを起動した。


 そして、リーゼロッテさんにカメラを向ける。


「リーゼロッテさん。何でもいいので喋ってみてください」


「え? なら、こんにちは~! リーゼロッテです~!」


 リーゼロッテは俺に話しかけるようにカメラに向けて手を振ってそう言った。カメラがどういう機械かはリーゼロッテさんには説明していたが、彼女もまだ完全には理解できているわけではなく、カメラを意識してはいない。


「で、ですね。これがこのように記録されるのです」


 俺はスマホの画面をニナさんとリーゼロッテさんに見せる。


『え? なら、こんにちは~! リーゼロッテです~!』


「おおっ!?」


 スマホの小さな画面の中でさっきのリーゼロッテさんの様子が再生されるのに、ニナさんもリーゼロッテさんもびっくりしていた。


「映画はこのカメラのずっと上のグレードのカメラで撮影されいます」


 俺の説明は耳に入ってるのか、いないのか。ニナさんとリーゼロッテさんはじっとスマホの画面に見入っている。


「リーゼロッテ。これは魔法ではないのですか?」


「いいえ、ニナ様。魔法ではありませんよ。どうやらジンさんが暮らしている世界は、このグリムシュタット村よりずっと発展しているようなのです」


 と言ってリーゼロッテさんがペットボトルを拾ってきて見せる。


「見てください。ガラスでもなく、陶器でもなく、軽くて頑丈な容器。それも寸分違わず同一に作られています。このようなものを作るのは、グリムシュタット村にいる職人の手でも不可能でしょう」


「確かにですね……」


 リーゼロッテさん、ただコーラやお菓子を無邪気に楽しんでいたのではなく、ちゃんと俺の世界のことを理解しようと観察していたらしい。その指摘は的確で、ニナさんはペットボトルを手に考え込んでいる。


「それにです。このお菓子ですが、塩と砂糖がふんだんに使われています。どちらもこれほどふんだんに使える品ではないのは、ニナ様もご存じかと」


 リーゼロッテさんはそう言ってアメとポテチをニナさんに差し出し、ニナさんはポテチをつまんで口に運ぶとびっくりした顔をしてのちに笑みを浮かべていた。美味しかったのだろう。


「ふむふむ。確かにこのグリムシュタット村に存在する品としては奇妙です。前にタダシさんは別の世界に暮らしていると仰っていましたよね?」


「ええ。恐らくはこのグリムシュタット村から遠く離れた場所か……あるいは……」


「あるいは?」


 ニナさんがリーゼロッテに問う。


「タダシさんもジンさんも異世界から来られたのではないかと」


「異世界ですか。そうなのですか、ジン?」


 あ。そうか。異世界の人から見たら、地球の方が異世界になるんだよな。別にこれは否定しなければいけないことでもないし、どちらかと言えば知っておいてもらった方がいい。素直に話そう。


「はい。異世界に当たると思います。自分が暮らしているのは地球という惑星の、日本という国です。その日本の中でも熊本県という地方とこのグリムシュタット村が繋がっているようなのですよ」


 俺はそう状況を説明した。


「おおー! やはりジンさんもタダシさんも異世界の人だったのですね。これで腑に落ちました。納得、納得です」


「まさか異世界とこのグリムシュタット村が繋がっているとは……」


 リーゼロッテさんが仕切りに頷いており、ニナさんはそう言いながらもさっきからポテチをぱりぱりと食べている。ポテチが気に入ったらしい。


「しかし、これだけの品を個人で購入して、持ち込んでいるのですか?」


「そうですね。ちょうど臨時収入がありまして」


「なるほど、なるほど。これを私たちに売買するつもりはないですか?」


「売買、ですか? この機械の方は電気がないと動かいのですよ。リーゼロッテさんにも電気については説明しましたが、こちらにはそういう技術がまだないようでして。買っていただいても使えないかもしれませんよ?」


 まだこちらで発電を本格化することには俺は慎重だ。期待させてしまい、その期待を裏切りがっかりさせたくはない。


「いえいえ。もちろん我々にこのような未知の技術を扱うのは難しいでしょう。ですが、このお菓子や飲み物はどうですか?」


「ほう。お菓子や飲み物を買いたいと」


「ええ。このような綺麗な包みのお菓子は貴族の間で喜ばれるでしょう」


 そう言ってニナさんが見るのはアメの入っている袋だ。


「この精巧な果物の絵に清潔感と高級感のある銀の内側。これは間違いなく貴族たちに売れますよ。彼らは大金を払ってこれを買おうとすることでしょう」


 確かに言われてみれば、ただのアメの袋でもこの世界では珍しい品なのか……。


「分かりました。持ってこれる限り、お菓子をお持ちしますね」


「素晴らしい! そうと決まれば商談をいたしましょう。こちらが提供するのは貴族への販路。異世界の方であるジンはお持ちではないでしょう?」


「そうですね。では、こちらはお菓子をそちらに買い取っていただくということに?」


「まさに。早速ですが、父でありこのグリムシュタット村の領主でるアルノルトも交えて話しましょう。城にいらしてください、ジン。それからリーゼロッテもこの方が無害であることを証言するために一緒に」


 ということで、俺はお城に招かれてしまったのだった。


 世界初の異世界貿易が始まろうとしている!


 ……売るのは数百円のお菓子だけどね。


……………………

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― 新着の感想 ―
御用商人処か直接伯爵様と対面ですかぁ、当座の取引をするにせよ、いずれは貴族御用達な数々を取引にせねば、でも兎も角、通貨は?需要と供給が噛み合うといいなぁ、行き来が可能なら、助手も必要かも?、パラグライ…
異世界良い世界。
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