幸運のお守りの効果?
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──幸運のお守りの効果?
異世界から戻ってきて、祖父の家を暮らせるようにリフォームし、庭の片づけを手配していたときだ。俺がスマートフォンであまり期待せずに前に買った宝くじの当選情報を眺めると──。
「え!? 当選してる!?」
なんと1等賞15億円が当たっていた!
「嘘だろ……。全然期待してなかったのに……」
そこではっとして俺はリーゼロッテさんから受け取った幸運のお守りを見る。それは今も銀色に輝いていた。
「……これはそうなのかも。リーゼロッテさん、ありがとう……」
この宝くじの当選を俺はリーゼロッテさんのおかげだと確信した。
しかし、これで元手が一気に15億円に増えることに。
「となると、いろいろやりたいことが増えるな」
太陽光発電を持ち込んだり、車を持ち込んだり、映画もみんなで見れるようにプロジェクターを設置したり、あとは日本や地球の他の国の美味しい食べ物や飲み物を持ち込んだり……。
「とりあえずはできることからだな。焦り過ぎず、焦り過ぎず」
俺は次はみんなで映画を観たいというリーゼロッテさんの頼みに応じるために、プロジェクターなどを買いに市内まで向かった。
「これとこれとこれ!」
電気店で思い切って一番いいホームシアター用のプロジェクターを買い、それに必要な電気を供給するバッテリーなどを購入。他にも必要になりそうなものは、これを機会にありったけ買っておいた。
電気店の店員は『この人、こんなに買い込んでどういうつもりなんだろう?』という怪訝そうな顔をしていたが、俺は構わず支払いを済ませた。
「あとは……」
それから俺はクーラーボックスを購入。暑い時期になるとお菓子が痛んだりするかもしれないというのと、今度は飲み物を運ぶためである。
「ふふふ。リーゼロッテさん、喜んでくれるかな?」
俺はそう思いながらジュースやお茶などの飲み物を箱で購入して車に詰め込む。
リーゼロッテさんのことが最近では常に頭に浮かぶ。
ふわふわした優しい感じの美人さんで、笑顔が可愛く、俺の好みのタイプなのだ。できれば、お付き合いしたいという思いがあったりした。
しかし、いろいろと問題はあるだろう。俺は今のところ異世界で活動できているが、リーゼロッテさんのような異世界の人が日本で暮らせるかという問題だ。
まあ、まだお付き合いもしてないのにこんなことを心配して考えるのは、捕らぬ狸の皮算用だ。まずは堅実に物事を進めていこう。
俺は買い込んだ品をレンタカーに詰め──。
そこでふと思った。もう車も買っちゃおうと。
* * * *
車は即日納車とはいかないが、可能な限り早く納車されることになった。
納車に必要な車庫証明などの必要な書類を揃えれば、届くということだ。
それまでは引き続きレンタカーのお世話になる。
「さて、今日もまた異世界へ!」
俺はついでに購入した台車に買ってきた品を乗せる。流石に抱えていくには大荷物になりすぎてしまっていた。
ホームシアター用の器材、DVDにブルーレイ、お菓子と飲み物。それらを台車に載せてごろごろと俺は異世界に向けて押していく。
いつものように倉庫の扉を潜れば、そこは異世界。
俺はリーゼロッテさんの家に台車を押していくが──。
「やや?」
リーゼロッテさんの家の前に子供たちがいる。それにリーゼロッテさんも。
「あたしにもちょうだい! あたしはこっちの甘いのがいい!」
「ぼくも、ぼくも!」
子供たちはリーゼロッテさんにどうやらお菓子をねだっているようだ。
「リーゼロッテさん」
「ジンさん! ほら、みんな~! あの人にお礼を言わないと~!」
俺がリーゼロッテさんに手を振るのにリーゼロッテさんが子供たちにそう言う。
「ありがとう、お菓子のお兄ちゃん!」
「ありがと~!」
子供たちは俺の方に駆け寄ってきて口々にお礼を言うと、俺が押している台車に興味を示してきた。
「これはなーに?」
「これはね。映画を映すための道具だよ。リーゼロッテさんがみんなで見ようって言ってなかった?」
「ああ! ドラゴンが出てくる紙芝居だね!」
リーゼロッテさんでも映画の説明は難しかったのか、子供たちには紙芝居として伝わっていた。それから子供たちは珍しいものがあるのにきゃっきゃっとはしゃぎ始める。どんな国でも子供は無邪気なものだ。
「リーゼロッテさん。これぐらいの何もない壁があって、みんなが座れるような広さのある場所ってあります?」
「ええ。それなら集会場が使えると思います」
「案内してもらえますか?」
「こっちです」
俺はリーゼロッテさんに案内され、村の集会場にはいった。集会場はホームシアターを展開するに十分な広さがある場所だった。これならば問題はなさそうだ。
そこにリーゼロッテさんと子供たちが6名。集まって、俺が何をするのかを興味深そうに眺めている。
「では、準備しますね」
俺はスクリーンを展開し、プロジェクターを設置する。それからそれを非常用バッテリーに接続。電気が供給され、プロジェクターが起動した。
「白いカーテン、ですか?」
「ふふふ。すぐに分かりますよ」
壁に掛けられた白いスクリーンをリーゼロッテさんたちは怪訝そうに眺めていた。
さらにカーテンを閉めて暗くなった集会場の中はもう映画館も同じだ。
さて、あとは何を上映するかだ。子供たちの年齢的にあまり過激なものは精神衛生によくないだろう。この前の恐竜の映画はちょっと過激かも。かといって地味だと面白くないだろうし……。
よし。なら、有名なスパイものを上映するとしよう。
「始まるよ」
俺はブルーレイをセットして再生を開始。
「おお!」
「なにこれ、なにこれ!」
「凄い! 絵が動いてるよ!」
子供たちは映画の内容は放っておいて映画というものそのものに興味を示した。子供たちの何人かはスクリーンの方に向かっていき、何がどうなっているのかを確かめようとしている。
初めて動く映像を見た地球に人たちもこんなリアクションをしたって、公共放送のドキュメンタリーで見たっけな。
「お菓子もあるからね。飲み物も好きなのを持っていって」
「わーい!」
ここでお菓子や飲み物代を請求する必要はない。リーゼロッテさんのおかげで宝くじに当たったのだから、これぐらいはサービスしないと。
「甘い飲み物だ!」
「本当だ! 美味しいね!」
「こっちのは果物の味だ!」
子供たちは大喜び。
「? ジンさん、これは何という飲み物ですか?」
そう言ってリーゼロッテさんが興味を示したのは、子供たちが取らなかった黒い液体が詰まったペットボトル。
そう、コーラだ。
「これは炭酸飲料ってやつです。しゅわしゅわする不思議な飲み物ですよ」
「見た目はあまりよくないですが……興味があります!」
「じゃあ、挑戦してみましょうか?」
俺はペットボトルの蓋を開けて、しゅわしゅわと音を立てるコーラをリーゼロッテさんに差し出した。
「……お姉ちゃん。それ、飲むの……?」
「毒だったりしない……?」
コーラを手にしたリーゼロッテさんを子供たちが心配そうに見る。
「私はジンさんを信じますよ」
そう言ってリーゼロッテさんがぐいっとコーラを口に。
「わわわ! 口の中が! 口の中がしゅわしゅわします!」
「お口に合わなかったですか?」
「いえいえ! これは美味しいです! 新しい感覚ですよ! しゅわしゅわです!」
リーゼロッテさんはそう言って大はしゃぎしていた。
天然の炭酸水というものはこの世界にも存在するだろうが、恐らくそれはこのグリムシュタット村には普及していないようだ。炭酸の感触が楽しいらしく、舌でちょびちょびとリーゼロッテさんはコーラを味わっている。
「リーゼお姉ちゃん! ぼくにも一口頂戴!」
「あたしにも!」
リーゼロッテさんが毒見を済ませたためか、子供たちもコーラを欲しがり始める。
「取り合わなくてもまだまだあるからね」
「流石、お菓子の兄ちゃんだ!」
コーラを試してみる子供。お菓子に夢中の子供。映画に真剣な子供。そして、それら全部を楽しんでいるリーゼロッテさん。
そんな感じで集会場における上映会が進んでいたときだ。
「これは何の騒ぎですの?」
不意に若い女性の驚くような声が響いた。
俺たちが慌ててそっちの方を向くと、そこには──。
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