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第8章:日本、清の巨龍に挑む

1854年夏、日本、東京。

アメリカとの協定を成功させた日本は、次なる目標を定めた。アジア最大の市場、清王朝――中国だ。2025年の技術と経済力を持つ日本にとって、清の膨大な人口と資源は魅力的だった。だが、交渉の相手は、欧米に屈しつつもアジアへのプライドを捨てない清の朝廷。果たして、日本は清を味方にできるのか?


東京の外務省では、林美咲外務大臣と田中が作戦を練っていた。

「アメリカは協定で我々の経済圏に入った。次は中国だ。清の市場を開けば、アジア全体が我々の影響下に入る」

林が地図を広げると、田中が頷いた。

「清はアヘン戦争でイギリスにやられてますが、アジア諸国には上から目線です。プライドを刺激しないよう、力と利益で説得しましょう」

決定後、海上自衛隊の艦船と飛行機を伴った使節団が、上海へ向けて出発した。船には自動車、機械、医療機器が積まれ、飛行機には交渉団が搭乗。日本の意気込みは本気だった。


1854年8月、上海近海。

清の役人たちが港で日常業務に追われる中、海上に巨大な鋼鉄船が現れた。海上自衛隊の護衛艦「いずも」だ。さらに、空から飛行機が轟音を立てて飛来し、上空を旋回した。

港の役人、李鴻章は目を疑った。

「何だ、あの船は!? イギリスの新兵器か?」

だが、船から降りてきた田中が流暢な中国語で告げた。

「我々は日本政府の使節団です。貴国の朝廷と交易の交渉をしたい。皇帝に謁見を求めます」

李鴻章は警戒しつつも、その堂々とした態度と奇妙な技術に興味を引かれた。

「日本だと? あの小島がこんな力を? …よし、北京に報告する」


数週間後、日本の使節団は北京の紫禁城に到着。咸豊帝と朝廷の高官たちが、異様な客人を迎えた。田中は丁寧に頭を下げ、提案を切り出した。

「我が国は貴国と友好な交易を望みます。貴国の絹、茶、鉱物を我々が買い、代わりに自動車、機械、医療品を提供します。関税はほぼゼロで、互いに繁栄しましょう」

咸豊帝は眉をひそめた。

「日本? アジアの小国が我が大清と対等だと? 笑止千万!」

高官の一人、琦善が嘲笑した。

「我々は天皇の国だ。イギリスに屈した貴様ら如きが、何を偉そうに!」

だが、田中は冷静に小さな装置を取り出し、スイッチを押した。部屋に映像が映し出され、日本の東京と海上自衛隊の演習が流れた。ミサイルが海を切り裂き、飛行機が空を支配する姿に、朝廷は息を呑んだ。

「これが我々の力です。イギリスを凌駕します。貴国が我々と組めば、欧米の圧力を跳ね返せますよ」

咸豊帝の表情が硬直した。プライドは傷ついたが、現実的な脅威を感じたのだ。


朝廷内で議論が沸騰した。

「日本と組めば、イギリスの支配から逃れられる。だが、アジアの小国に頭を下げるのか?」

李鴻章は現実派として進言した。

「陛下、日本の技術は本物です。彼らの船は我が海軍を一瞬で沈め、空の機械は北京すら攻撃可能。拒めば危険です」

だが、保守派の琦善は反発した。

「我が大清が日本に屈するなど、祖先に顔向けできぬ! 交易など不要だ!」

田中はさらに畳みかけた。

「貴国の民はアヘンで苦しみ、欧米に搾取されています。我々の医療品で民を救い、機械で産業を興せば、清は復興します。プライドを捨てるのではなく、力を取り戻すのです」

咸豊帝は沈黙し、やがて呟いた。

「…日本が我々に従うなら、交易を認めぬでもない」

田中は微笑みつつ、巧みに答えた。

「我々は貴国を尊重します。交易は対等ですが、貴国の顔を立てる形にしましょう」

プライドを保ちつつ利益を提示する日本の策略に、清は揺れた。


数日後、協定が結ばれた。日本は清の市場に参入し、絹や茶を大量輸入。一方、清には自動車と機械が流入し始めた。だが、清のプライドは完全には折れず、協定には「日本は清の朝貢国として扱う」との名目が加えられた。実質は日本の勝利だったが、形だけは清の面子を保った。

田中は帰国後、林に報告した。

「清は手強いですが、市場は開きました。アジアの経済圏が我々の手中に近づいてますよ」

だが、清内部では不満が燻り、イギリスがこの動きを警戒し始めた。交渉は成功したものの、新たな火種が生まれた兆しが…。

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