第15章:インド沖、帝国の落日
1856年秋、世界各地。
アジアからオーストラリア、ニュージーランドまで、2025年の技術と経済力を持つ日本の影響は世界中に広がっていた。清、インド、東南アジアを掌握し、南半球を実質的な「日本領」に変えたその勢いは、もはや誰にも止められないかに見えた。そんな中、イギリスは最後の抵抗を試みるが、インド沖での決戦で完全敗北し、「日は沈まない帝国」の名を失う運命が訪れた。
日本の影響力は、アジアを超えて欧州やアメリカにも及んでいた。
清では、日本の技術で近代化が進み、欧米列強の影が薄れた。インドでは、東インド会社が日本傘下に入り、現地勢力が日本の支援で独立を夢見た。東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドは、実質的に日本の経済圏に。
アメリカでは、日本の自動車と電子機器が産業を塗り替え、ペリー提督の協定が新たな繁栄の礎となっていた。
パリやベルリンでも、日本の「ラジオ」や「カップラーメン」が話題に上り、商人たちが「日本と取引したい」と騒ぎ始めた。日本の使節団は欧州にも進出し、
「我々と組めば、貴国の未来が開けるよ」
と各国に交渉を持ちかけていた。
ロンドンでは、日本の台頭に耐えかねたイギリス政府が動き出した。外務大臣パーマストンは閣僚会議で叫んだ。
「日本が我が帝国を崩壊させる! アジアを取り戻さねば、『日は沈まない帝国』の名が泣くぞ!」
海軍大臣が提案した。
「インド沖で日本と決戦だ。我が最新鋭艦隊を動員し、彼らの傲慢を叩き潰す!」
1856年10月、イギリスはインド洋に誇る艦隊を派遣。蒸気船と帆船を合わせた50隻、最新の大砲を備えた「ウォーリア」を旗艦に、日本への挑戦を決めた。
1856年11月、インド沖。
イギリスの艦隊がインド洋を進む中、日本の海上自衛隊が迎え撃つ形で対峙した。護衛艦「いずも」とイージス艦「あたご」を中心に、戦闘機とヘリコプターが飛び立った。
イギリス艦隊司令、チャールズ・ネイピアは双眼鏡を手に自信満々に叫んだ。
「我が艦隊は世界最強だ! 日本如きを海の藻屑にしてやる!」
だが、次の瞬間、空から戦闘機が轟音と共に降下。ミサイルがイギリス艦に命中し、「ウォーリア」が一瞬で炎に包まれた。
「何!? 空から攻撃だと!?」
ネイピアが叫ぶ間もなく、「いずも」から発射された対艦ミサイルが次々と艦船を撃沈。木造の帆船は紙のように燃え、蒸気船も日本のレーダーに捕捉され逃げ場を失った。
戦闘機が上空を支配し、イギリス艦の砲撃は届かず。わずか1時間で、50隻の艦隊は10隻以下に。ネイピアは絶望の叫びを上げた。
「我が帝国が…こんな小国に…!」
日本の司令官は冷静に通信を送った。
「イギリス艦隊、降伏せよ。これ以上の犠牲は無意味だ」
ネイピアは屈辱に震えながら白旗を掲げた。インド沖の海戦は、日本の完全勝利に終わった。
ロンドンに敗報が届いた時、閣僚たちは呆然とした。
「インド沖で全滅だと!? 我が艦隊が日本に敗れるなんて…!」
パーマストンは机を叩き、崩れ落ちた。
「『日は沈まない帝国』が…沈んだ…」
イギリスの植民地支配は崩壊し、アジアでの影響力はほぼ消滅。新聞は「帝国の終焉」と報じ、ロンドンの街は沈黙に包まれた。
世界は日本の勝利に震撼した。
清の咸豊帝は、
「日本は欧米を凌駕した。我が味方で良かった…」
と安堵。アメリカの大統領は、
「ペリーの協定が正しかった。日本は我々の未来だ」
と賞賛。パリやベルリンでは、
「日本と組まねば、我々が次だ!」
と各国が日本の機嫌を取る動きを見せた。
東京で、田中は林に報告した。
「イギリスをインド沖で破り、アジアは完全に我々の手中に。世界が我々を見ていますよ」
林は地図を広げ、笑った。
「イギリスが沈み、日本が昇った。次は欧州を固めるか、アフリカに手を伸ばすかだね」
日本の勢いは止まらず、世界の覇権を握る日が近づいていた。