第14章:日本、南の大地を染める
1856年夏、オーストラリアとニュージーランド。
アジア全域を影響下に置いた日本は、次なるターゲットとして南半球のオーストラリアとニュージーランドに目を向けた。2025年の技術と経済力を武器に、現地住民を鼓舞し、日本移民を大量に送り込むことで、名目上は英国領であるこれらの地域を、実質的な「日本領」に変えていく策略が始まった。
オーストラリアのシドニー港に、日本の海上自衛隊の護衛艦「いずも」が姿を現した。港に集まった英国植民者と先住民アボリジニが驚く中、外務省の田中が降り立ち、英語で演説を始めた。
「我々は貴方をイギリスの圧政から解放します! 日本の技術で暮らしを豊かにし、貴方の声を尊重しますよ」
アボリジニの長老、ワラビは日本の「トラクター」を見て目を輝かせた。
「これで土地を耕せば、食に困らぬ。日本は我々の味方か?」
田中は頷き、武器と医療品を渡した。
「イギリスは貴方の土地を奪った。我々が守ります。共に立ち上がりましょう」
アボリジニたちは日本の支援に感激し、英国植民政府への反発を強めた。シドニーの英国総督、ジョン・ヤングは焦った。
「日本が先住民を扇動してるだと!? 我が支配が揺らぐ…」
だが、日本の飛行機が上空を旋回する姿を見れば、武力で抑えるのは不可能だった。
日本はオーストラリアに移民を送り込む計画を加速。東京から数千人の農民、技術者、商人が船で到着し、土地を開墾し始めた。彼らは「トヨタ」のトラックで農地を耕し、「カップラーメン」や「ラジオ」を現地に広めた。
移民のリーダー、山本健太は現地住民にこう語った。
「我々は貴方と共存します。日本の技術で一緒に豊かになりましょう!」
英国植民者の中には、日本の安価な商品に惹かれ、
「イギリスの物より日本のほうが安いし便利だぜ!」
と交易を始める者も現れた。
移民は急速に増え、シドニーやメルボルンに「日本人街」が形成。日本語の看板が立ち並び、アニメやJ-POPが若者を魅了した。アボリジニの若者、ジャルーは日本のラジオを手に笑った。
「日本の歌、かっこいいな! イギリスよりずっと楽しいぜ!」
英国文化は影を潜め、日本の影響が広がった。
ニュージーランドでも同様の動きが。オークランドに日本の船が到着し、現地マオリ族の首長、タミハナに使節が接触した。
「イギリスは貴方の土地を奪った。我々が支援します。武器と機械で貴方を強くしますよ」
タミハナは日本の「ライフル」を手に、決意を固めた。
「これでイギリスを追い出せる。日本は我が兄弟だ!」
日本はマオリに技術と武器を提供し、反英勢力を結集させた。
同時に、日本移民がニュージーランドにも流入。農地を開拓し、「ホンダ」の自動車で物流を効率化。マオリと協力して街を築き、「日本風の市場」が各地に広がった。英国総督は嘆いた。
「マオリが日本に寝返り、移民が我が土地を埋め尽くす…どうすればいいのだ?」
オーストラリアとニュージーランドの英国忠誠派は、日本の圧倒的な経済力と現地支援に押された。
シドニーの英国商人、トマス・ベネットは、日本の買収提案に屈した。
「日本が我が会社を5万ポンドで買うと言う。ロンドンに頼っても金は来ない…売るしかない」
企業は次々と日本傘下に。経済は日本に依存し、英国の支配は名ばかりに。
現地住民と日本移民の結びつきも強まり、英国総督の命令は無視されるようになった。アボリジニやマオリは、
「イギリスは我々を奴隷にした。日本は我々に力をくれた!」
と日本への忠誠を誓った。名目上は英国領だが、実質的に日本が支配する地域へと変貌した。
ロンドンでは、オーストラリアとニュージーランドからの報告に閣僚が震えた。
「日本が我が植民地を奪った! 先住民が反乱し、移民が我が文化を塗り潰す!」
外務大臣パーマストンは怒鳴ったが、海軍大臣が冷たく告げた。
「日本の艦隊と飛行機があの地域を押さえています。奪還は夢物語です」
イギリスは南半球での影響力を失い、打つ手がなかった。
東京で、田中は林に報告した。
「オーストラリアとニュージーランド、実質我々の領土です。現地は我々に感謝し、経済も手中に」
林は地図を眺め、笑った。
「アジアから南半球まで我々の色に染まった。次はどこを染めるかね?」