第13章:日本、アジアの支配を握る
1856年春、インドから東南アジア全域。
清での成功を足がかりに、2025年の技術と経済力を持つ日本は、イギリスやオランダの植民地支配に大胆な一手を打った。巨額の出資で植民地企業を買収し、現地勢力を支援して味方につける――その動きは、アジア全域を日本の影響下に置き、本国に忠誠を誓う勢力を無力化しつつあった。
インドのカルカッタでは、日本の使節団がイギリス東インド会社の高官、ジェームズ・ハドソンと再び対面。外務省の田中が切り出した。
「ハドソン様、貴社の経営はロンドンの重税で苦しいと聞きます。我々が救いましょう。東インド会社を10億ポンドで買収します」
ハドソンは目を丸くした。
「10億ポンド!? 日本にそんな金が?」
田中は笑い、映像装置で日本の経済力を示した。自動車、機械、電子機器が世界を席巻する様子に、ハドソンは息を呑んだ。
「我々が買えば、ロンドンへの税金を払わず済む。貴方は社長として残り、利益の2割を手にできますよ」
ハドソンは葛藤した。ロンドンへの忠誠か、目の前の富か。だが、日本が清を掌握した事実を思い出し、決断した。
「…分かった。日本に売る。だが、本国にバレたら俺の首が飛ぶぞ」
「心配無用。我々が守ります」
こうして、東インド会社は日本の傘下に入り、インドの綿花と茶の貿易が日本に流れ始めた。
日本は会社買収だけでなく、現地勢力にも手を伸ばした。マラーター同盟の指導者、ナーナー・サーヒブに、日本の使節が接触。
「イギリスを追い出したい貴方を支援します。自動車と武器を差し上げます。共に戦いましょう」
ナーナーは日本の「戦車」(実際は装甲車)を見て興奮した。
「これがあればイギリス軍を粉砕できる! 日本は我が救世主だ!」
日本は武器と技術を提供し、マラーターを反英勢力の中心に据えた。イギリス忠誠派のインド人貴族は、
「日本が来てから我が地位が揺らいだ…どうすればいい?」
と困惑したが、日本とマラーターの連合を前に手も足も出なかった。
東南アジアでも同様の動きが。ジャワ島でオランダ東インド会社を運営するヤン・ファン・デン・ボッシュに、日本が接触した。
「貴社のスパイスとゴムを我々が買いましょう。5億ギルダーで会社を譲ってください。貴方は社長として残り、利益を手にできます」
ヤンは驚いたが、日本の飛行機がジャワ上空を飛ぶ姿を見て、抵抗が無意味と悟った。
「オランダ本国が許さねえぞ…だが、5億なら話は別だ。売るよ」
日本はオランダ東インド会社を買収し、スパイスとゴムの交易を掌握。オランダ忠誠派の植民地官僚は、
「本国に報告しても遅い。日本に支配された…」
と嘆くしかなかった。
日本は現地勢力にも積極的に支援を拡大。シャム(タイ)の王、ラーマ4世に使節が訪れ、
「イギリスとオランダから貴国を守ります。機械と軍艦を提供しますよ」
ラーマ4世は日本の護衛艦を見て即決した。
「日本が味方なら欧米を恐れぬ。交易を結ぼう!」
シャムは日本の技術を受け入れ、ゴムと米の輸出を増やした。
ビルマでは、反英勢力の首長に日本が接触。
「イギリスを倒す武器を差し上げます。共にアジアを取り戻しましょう」
首長は日本の「ライフル」を手に、目を輝かせた。
「これでイギリスを追い出せる! 日本に忠誠を誓うぞ!」
ビルマのイギリス忠誠派は孤立し、なすすべなく衰退した。
イギリス本国では、アジアからの報告に閣僚が頭を抱えた。
「東インド会社が日本に買われただと!? インドが我々の手を離れた!」
外務大臣パーマストンは怒鳴ったが、海軍大臣が冷たく告げた。
「日本の艦船と飛行機がアジアを支配しています。武力で奪還は不可能です」
オランダも同様に混乱。ハーグでは、
「東インド会社が日本に売られた!我が植民地が消えたぞ!」
と嘆きが広がったが、日本への対抗策は見つからなかった。
イギリスとオランダの忠誠派は、現地で孤立。日本の経済力と現地支援に押され、影響力を失った。
東京で、田中は林に報告した。
「インドから東南アジアまで、我々の傘下に。イギリスもオランダも手出しできませんよ」
林は地図を指し、笑った。
「アジアは我々の庭になった。次は欧州本国に乗り込むか、アメリカをさらに固めるかだね」
日本の勢いは止まらず、世界への野望が膨らんでいた。