第4話 ロマリアいきなり大苦戦
盗賊の鍵さえ取ってしまえば、もうアリアハンに用はない。魔法の玉を貰って、さっさとロマリアを目指そう。
洞窟の途中で、聖なるナイフ(+14)を見つける。誰に装備させるべきか。
通常プレイであるならば、既にレーベで購入済みであろうから、ロマリアで売っぱらって新装備代金の足しにする。未購入の場合は、攻撃力をあてにしていなかった魔法使い等に装備させる、というのがパターンであろう。
しかしこの今の状況においては、聖なるナイフ(+14)は棘のムチ(+18)の次に強い武器である。主力の銅の剣(+12)より強い。しかもこの聖なるナイフの一番の特徴は誰でも装備出来る事。このパーティの中では誰もが欲しがっている武器なのである。
仕方ない。消去法だ。
まず棘のムチを装備しているかるびは必要なし。
「そーだな。オレはこっちの方がいい」
武力増強の為にはホルモンに装備させたいところだが、ここら辺の敵には棍棒(+7)の一撃で倒せる。よって必要なし。強い敵が出てくる様になってから考えよう。
「うむ……」
気持ち的にはいまだヒノキの棒(+2)を持っているテールにあげたいところだが、いざという時の戦力にならない。よって聖なるナイフはつくねに進呈。その代わり銅の剣はスライド式でテールへ。
「良かった。欲しかったのよ、これ」
「あっしもヒノキの棒からランクアップして嬉しいでヤス」
さて、さしたる苦労もなくロマリアに到着。しかし安穏と出来るのもここまで。
そう、ここから敵が一気に強くなるのだ。
ロマリア・カザーブで買える武器・防具が、一気に実用的なものになっている事からもそれが分かるだろう。
ただし、その手のものを購入出来ない以上、町やダンジョンから入手出来るものとモンスターの宝箱に期待し、足りない分はレベルアップして補うしかない。ここから『買ってはいけない』の苦労が、一気に現実的になるのであった。
まずはロマリアのツボとかタンスとかから、皮の帽子(+2)と挫けぬ心(体力+10)を入手。挫けぬ心はつくねが装備、性格が『苦労人』に。いや、装備する前から既に苦労人だった様な気がする。
「そう思うんだったら、みんな少しは協力して!」
勢いで、そのままカザーブへ。
途中、敵が強い。本当に強い。とことん強い。何度も死にかける。
これまでは、ほとんどの敵はホルモンの一撃で倒してきたが、ここら辺のは半分くらいしか削れない。つくねの聖なるナイフとホルモンの棍棒、交換しようと思ったが交換したところで一撃一殺は無理だろう。そうなったらまだ戦力の総合UPの方がまだマシ。敵が軍隊蟹やさまよう鎧でなければ、かるびの刺の鞭がまだ効くのが救い。
でも軍隊蟹やさまよう鎧が持っている宝箱が欲しいから、つい最後まで残してしまい、それがまた苦戦の原因になっていたりして。※1
さてカザーブ内で入手出来たのは、ステテコパンツ(+10)に毛皮のフード(+10)。
そう。このステテコパンツが意外と有難かった。第二章で、いらない! なんか言って悪かった。何せこの時点で最高の防具なのだ。なぜか旅人の服より丈夫。難点は女性が装備出来ない事。
「いらないわよ。そんなの、ってかるび、あなたが穿かないで」
「ぶかぶか~っ」
やはり、かるびには装備できなかった。
となるとホルモンとテールのどちらが似合うか、って事じゃなくて、純粋に防御力UPの為にホルモンが装備。
「って、意外と似合ってるし」
「う、うむ」
テールもホルモンが着ていた旅人の服(+8)をお下がりで貰い、ここでようやく布の服(+4)が現役装備から外れる。
毛皮のフードは女性専用だから、かるびが使う事にする。
ちょっとは装備が充実したが、それでも苦しい事に変わりはない。何せ本来なら、鋼の剣(+33)や鉄の鎧(+25)を装備して戦う様な所なのだ。ステテコパンツをありがたがって喜ぶような所ではない。
一休みしたらすぐにノアニールへ出発。無理をしてでも行きたい所だ。まだ村人は寝ているけど、壷やタンスをあさるのはOK。
皮の腰巻き(+24)を入手。これは本当に嬉しすぎ。やっとまともな防具に出会えた。これも男性専用という訳ではなかった。ちょっと勘違いしていた。※2
とはいえ後方のかるびに装備させるつもりはなく、ホルモンが装備。自動的にホルモンのステテコパンツ(+10)はテールに。
「えーっ、ホルモンがさっきまで穿いていたステテコパンツっスか。勘弁して下さいよ」
「一回、洗え!」
テールも今は遊び人だから、相応に似合っている。
その足でエルフの村に行く。地底の湖に挑戦する為ではない。カザーブ近辺でもヒィヒィ言っているのに無謀すぎる。しかもこのダンジョンに武器・防具を持ったモンスターは出てこないのだ。攻略はかなり後になると思われる。※3
行きたかったのは村の方。とは言ってもここの道具屋は変化の杖がないと利用出来ないし、あっても買わないクエストしているから関係ない。用事があったのは、単に小さなメダルを拾う為だ。
これで10枚目もクリアした。
メダルおじさんの所へ持っていくとガーターベルト(防+3)をくれた。しかし女性専用だ。
「つくねさん、どうでやスか? 似合いそうでやスぜ」
「わ……、私はいいわ。そ、そうね。いい機会だからかるび、あなたが着なさい。防御力が3上がるわ」
「え、オレ? 着方分かんねぇよぉ」
「私が教えてあげます。あ、ちょっと、まだ脱がないで。もう、男達は出て行きなさい」
「ちぇ、つまんねぇっス」
「うむ」
かるびは今まで全く縁がなかった女性用ランジェリーに悪戦苦闘している。
「ああ、ちょっともぉ、そんな乱暴に扱ったら千切れちゃうでしょ。こうやって腰のベルトをパッチンと」
「うあああ。な、何か変な感じ。こ、これでいいの?」
かるびはセクシーギャル……と言うにはまだ無理があるが、少しは恥じらいを覚えた……様な気がする。※4
「はあーーーっ」
「どうしたのよ、ため息ついて」
「いや、さぁ。こうして女性専用装備が身に付けられると、本当に女になっちまった気がして」
「何言っているの? 当たり前の事じゃない」
「色々、ややこしいんだよ」
「変なの」
さて、装備が増強されたところでシャンパーニュの塔へ行く。
とは言っても、この装備のままカンダタ退治は無理。蝙蝠男の持つ聖なるナイフ(+14)を期待しながらレベルアップに励み、塔の中の宝箱・青銅の盾(+7)の入手が目的。
さんざん蝙蝠男は倒したけど、彼の宝箱は入手出来なかった。
仕方ない、地底の湖に行こう。
でも、ここは敵が強い。強すぎ。
特にマタンゴの眠り攻撃が怖い。このマタンゴとバンパイヤが一緒に出てきたりなんかすると、全滅の可能性大!。というより既に2・3回全滅しているし。
何とか銀のロザリオ(防+4)と皮のドレス(+15)と鉄の槍(+26)を入手。ようやくホルモンの武器がランクアップした。
これで何とかサマになったようだ。
よし。カンダタ退治に行くとするか。
「あれ、ちょっと待って。ひょっとして私、HPかなり上がったんじゃない」
「みたいっスねぇ。ホルモン氏の118は別格としても、あっしが75でつくねの姉さんが62。かるびちゃんは50っスか」
本来、勇者は力もHPも上がりやすい筈なのだが性格がセクシーギャルなのと、つくねが苦労人で体力が上りやすいから、いつしか追い越したらしい。
「む。そこまで差があるなら並び替えんとなぁ。俺、テール、つくね、かるびの順番で装備も多少入れ替えるか」
「ちょ、ちょっと待ってよ。そんな、あたし、最後尾なんて、やだ」
「仕方ないでしょ。全滅しにくい様に工夫しないと」
「でも、あたしが勇者で、あたしが一番頑張らないといけないのに、皆にいい子いい子されているみたいで」
「いいじゃない守ってあげているの。でも攻撃の要はかるびちゃんなんだから。役割分担していると思って」
「そうだな。最後尾だからって攻撃力も攻撃の順番も変らん。ただ敵の攻撃を受けにくくなっているだけだからな」
「でも……あ、あれ?」
「どうしたの?」
「今回あたしが3番目から最後尾に行くとして、2番目ってずっとテールよね」
「ええ。一応、HP相応に高いから」
「でも遊んでばかりよね」
「ばっかりって訳じゃないけど、いざという時でも寝ちゃったり啖呵切ったり、あんまり役に立っていないわね」
「えへん!」
「でも2番目だから、よく攻撃されるよね」
「攻撃されても遊んでるけどね」
「それって場合によってはあたしとかつくねが受けるべき攻撃も受けているってことよね」
「2番目だから、3・4番目の私たちよりは受けているでしょうね」
「そうか……」
「だからどうしたのよ」
「テールも一応、役に立っているんだ」
「や、役にって、普段でも3回に2回は攻撃にも参加しているでしょ」
「でも攻撃力低いから、役に立っているって思えなかったんだけど、でもちゃんと役に立っていたんだ」
「それ、ある意味ひどい言われようよね」
「テールも役に立っていたんだ」
「そりゃあっしだって遊びたい時は遊ぶっスが、一応生命はって遊んでヤス」
「威張って言う事か!」
※1 軍隊蟹は『旅人の服』、さまよう鎧は『銅の剣』を持っている。普通だったら、もう要らない! と言っているところだろうけど。
※2 ムオルで、オルテガの兜と一緒に入手する経緯もあって、男性専用と勘違いしていた。
※3 唯一、人喰い蛾が毒針(+10)を持っているが、確実な1しかダメージ与えられないし、魔法使いと盗賊しか装備できない。
※4 ストッキング履く訳じゃないのに、ガーターベルトだけ身に着けるというのはどうなのか。ストッキングも一式セットなのか?