表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

第1話 電源をいれてみました

 さてそれではゲームをスタート。冒険の書を作るとする。

 まず最初に決めるのは、勇者の名前。ま、何でもいいんだけど、どうせなら愛着持って進めたいのも人情。いつもの自分の本名をモジったものは、公開を前提としているからパスし他も色々試行錯誤して、最終的にお肉の部位関係でいく事にする。


 まずは勇者、性別は”女”で。理由はやっぱり男として育てられたという、ひねくれた生い立ちが捨てがたいから。出来る限り性格は『おてんば』にしたい。おてんば萌え。※1


 となると『おてんば』に似つかわしい名前。『シャトーブリアン』『サーロイン』は文字数制限で使えないし『ロース』だと太っているとか不細工なイメージが。『ランプ』は手塚治虫の悪役だ。使うとしても魔法使いか盗賊だな。『ハラミ』※2 は……ああ、いきなり妊娠してしまう!。それはそれで別萌えだが、今回はパスしよう。


 となると無難なところで『カルビ』かな。そういう名前のコミック・キャラクターがいた気もするけど、今ちょっと思い出せない。どうせなら、ひらがなで『かるび』にして、性別は"女"、と。


 性格で『おてんば』を希望した理由は、武器・防具にあまり期待が出来ない以上、自前の力と体力を強化して進めたい事と、男の子として育てられている以上『いくじなし』や『なまけもの』じゃまずい。『男まさり』でも良いが、萌え度が全然違う。


 という訳でスタート時の各質問※3 に対しては、出来るだけ男らしくをこころがけ、細かい事は気にしない感じで進めていく。自分自身の元の性格・行動パターンは無視。『おてんば』な性格だったらどうするかどう行動するか、のみ考えて回答。最後の質問にも大胆に行動!。


 結果『乱暴者』……。

 やりすぎた、かな?。


 やっぱり最後の質問でのシチュエーションで魔物になってしまった時、村人を殺しまくったのがまずかったかな。とはいえ全滅はさせなかったぞ。ちゃんと母親に「私はどうなってもかまいません……。で、でも子供にだけは、どうか……」と言われたから、その子だけ残して他は全て火を吐いて燃やしたけど。ええ、その母親も。

 でも考えてみたら幼子一人だけ村に残したところで、他の大人がいなかったら飢え死には確実だから一緒か。

 いや、その廃墟となった村を、偶然通りかかった旅人に助けられ、そこから新たな物語が……って別の物語始めてど~するよ。

 まぁ仕方ないか。まだ『人でなし』にならなかっただけ。※4


 とりあえず、主人公は女の子で設定。これから、壮大な浪漫のはじまりだ!!


     ☆


 さてゲームが始まる。

『それは、かるびが16歳になる誕生日の事であった』

「起きなさい。私の可愛い、かるびや」


 母に起こされた。あれ? 何か違和感がある。何だろう?

「おはよう、かるび。もう朝ですよ」

 そうか、起きないと。あれ? あれ? 昨日、こんなパジャマ着てたかな?

 違う。なぜか、お出かけの勇者の服を着たまま寝ていた。でも何か違う感が。

 起き上がろうとして、太ももの間の股間が妙に寂しい。朝、起きた時の充実感が無い。

 上から、まさぐる。


「うわぁ、ない。ない!」

「どうしたの? かるび」

「オチンチンがない。女の子になっちゃった!」

「変な子ねぇ。あなた、ずっと女の子じゃない?」

「え゛!?」


 何で? どうして? 昨夜に寝るまでは、男の子だった筈なのに。

「今日は、とても大切な日。かるびが王様に旅立ちの許しを頂く日だったでしょ。

娘のお前を、この日の為、勇敢な男の子の様に育てたつもりです」

 え? あ? そういう設定なのか?


 とりあえず起きて、母についていく。

「さぁ、母さんについていらっしゃい」

 母はずんずん歩いて、家を出て、道を歩いて、お城の前まで連れて行ってくれた。

「ここから、まっすぐ行くとアリアハンのお城です。王様にちゃんと挨拶するのですよ。さぁ行ってらっしゃい」


 ここで意地を張って会いにいかない展開も面白いのだが、王様の許可を得ずに冒険を始めてしまった場合、仲間を連れ出す事が出来ない。出来ないなりに一人だけでプレイも面白いが、それを楽しむのは今回の予定に入っていない。最後の最後まで意地を張り続けても良いが、どうせ商人を必要とする時に、許可を得て連れ出さないといけないから中途半端だ。※5


「よくぞ来た。勇敢なるオルテガの息子……いや……娘じゃったか」

 王様からも、自分の事を男なのか女なのか、しっかりした認識がない。

 何せ、かるび自身もその事で戸惑っているのだ。

 とはいえ、義務的に王様から定例の説明を聞けば、支度金50Gと棍棒×2とヒノキの棒、旅人の服をありがたく頂き、同時にルイーダで仲間を連れだす許可が貰える。


 しかしまぁ頂いた装備品。普通なら、『ヒノキの棒なんかいらねーや』とその場で捨てるなり速攻で売ったりするのだが、今回は装備一切を買わない事にしているからこの攻撃力+2のヒノキの棒が意外と重宝な気がする。もしこのヒノキの棒がない場合は、当面は素手で戦わねばいけないキャラが1名発生することになるからだ。


 王様の許可を得たら、家に帰って母に報告して、まずは一晩ぐっすり寝る。別にHPもMPも減っちゃいないが、おそらくかるびは慣れぬ一日で疲れただろうという配慮。


 というより、最初から女の子ではなく、男の子だったのになぜか女の子になって、しかも勇敢な男の子の様に育てられたという、ひねくれた設定の方に疲れたかもしれない。

 寝る前に、変わってしまった自分の身体を、じっくり観察したのかどうかは読む人の想像に任せて、まずは自分の強さを調べる。


 勇者かるびのパラメーター。

Lv01。HP 12・MP 8・力 14・すばやさ 9・体力 6・賢さ 4・運のよさ 3

性格『乱暴者』。

装備:銅の剣(+12)、旅人の服(+8)で、攻撃力26・守備力12である。

「あんだよ、何でこんな事になっちまったんだぁ!?」(CV.林原めぐみ)


 朝起きたら、まずは家捜し。台所の薬草と自分の部屋の引出しから力の種を取り、次に爺さんの部屋へ行く。


「お前の父親オルテガは立派な勇者じゃった。この爺の息子じゃ!。かるび! お前もこの爺の孫じゃ! 頑張るのじゃぞ……って、聞いとるのか? おおズンズン入ってきてタンスを……おお、それはワシのヘソクリの5Gじゃ。待て、勝手に持っていくでない。それはワシの、ワシの、おおおおお、ワシのヘソクリぃっっ!」


 その勢いで、町やお城のあちこちからもかき集める。薬草、毒消し草、小さなメダル。まだ鍵は手に入れていないので行ける範囲がちょっと狭い。とりあえず手に入れてしまった小さなメダルは井戸の下のメダル王……じゃなくてメダルおじさんに預けておく事にする。


※1 実際には『セクシーギャル』が、最もステータスが上がるらしい。


※2 ハラミは横隔膜の横の部位の事で、妊娠した牛のお肉の事ではない。


※3 この性格診断テストは、偏見に満ちた一方的な決めつけで強制的に性格を決められてしまうので、プレイする人達から結構不評らしい。

 会話の相手は自称『全てを司る者』と言っているが、正体は精霊ルビスではなくアレフガルドの雨雲の祠にいる妖精なので、プレイしていたら終盤で会う事になる。絶対神ではなく単なる妖精の戯言なので、腹を立てるだけ無駄という話も。

 ただ、その雨雲の祠に行って彼女に会った時に彼女から「あの時は失礼な事を言ったかもしれません」と謝ってくるが、仮にプレイするのに不利な性格を割り振られて、散々苦労していたとしても、もうクリア直前状態なので、大体はもう許す気分になっていると思う。ヘタにヘソ曲げられて、雨雲の杖貰えなかったら困るし。


※4 そんな性格ありません


※5 王様の許可を得ていないと、ルイーダの店で仲間を紹介してくれないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ