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月桜学園シリーズ  作者: 月影 紗夜
一巻 私がモテるとかありえない
7/18

あいつが優しくしてくれたから

私は次の日、学校に向かっているとフードと帽子とマスクを付けた不審者、じゃなくて楓君を見つけて「おはよう」と言った。

楓君も「夏純ちゃん。おはよ」と言ってくれる。

昨日の出来事を話すと「あのさ、蛍君の事そんなに知りたいの?」と聞かれて頷くと「そっか…なら教えるよ」と言った。

えっ?と驚いていると、「蛍君は月空学園に通っているよ。楓、LINEも交換してたし」と言った。

「どこで知り合ったの?」と聞くと「ここに転校して来る前は月空学園に居たから」と楓君は答えた。

「月空学園って隣町だよね?」と私が言うと「そうだね」と楓君は答えた。

私の家から電車で十五分くらいで着くんだよね。

じゃあ、まだ会える?


今更じゃないかな?

その時、楓君が「そういえば、昨日、颯君が…」と呟いた。


でも、すぐに「なんでもないよ」と言った。

教室に入ると「おい!夏純」と風神君に呼び止められた。「何?」と言うと「お前、昨日小夜と帰ったんだって?

ふざけんなよ」と言ってきた。

クラス中が騒ぎ始めている。

私は「なんなの⁉」と叫ぶと風神君は「何、話したんだよ?」と聞いて来るが「そんなの、小夜君に聞いてよ」と言い自分の席に着くと楓君が「大丈夫?颯君、酷いよね」と言った。

違う、風神君は別に酷くない。彼は空気が読めないんだ。

だから、きっと。

私を陥れたいんじゃなくて思った事をすぐに言ってしまうんだよね。


風神君の事、悪く言わないでほしい・・・なんで?

私、あいつのせいで女子に嫌がらせ受けるかもしれないのに?

どうして憎めないんだろ?


思い出す。中学一年の時の事を――入学式、緊張するな。

朔の奴、急に熱とかほんとふざけないでよね…。

はぁ、クラスは五組だった。隣の席は、風神君だった。


カッコいいなって初めて会った時は思ったんだ。

でも、彼はとても人気で話せるわけなかった。

皆、デビル様ー‼と言ってはしゃいでいる。


何それ、と思った。デビルって悪魔でしょ?

人の事、悪魔扱いって事?


風神君はあなた達の見せ物じゃないのにと腹が立った。

だから、本人に聞いた。


「風神君ってデビル様って言われてるけどほんとにそれでいいの?


あれじゃ見せ物みたいで私はムカつくな」と言ったら

「確かにな」と彼は言う。


不愛想で冷たくてまるで蛍みたいだなって思ったんだよね。


だけど、風神君は不器用なだけで優しかったんだ。


私が教科書忘れて焦っていたら勝手に私の机に置いて彼は忘れたと先生に言った。


体操服を忘れた時はジャージを貸してくれて「これ上下着ればバレない」と言う。


体調が悪かった時はいきなり手を掴まれて保健室に連れていかれた。


あれは本当にびっくりした。無口なくせに行動力はすごかった。


一人で泣いていた時にハンカチを投げつけて去っていった事もあった。


あんな事されたら涙も止まっちゃったよ。


困っていたらいつもさり気なく、何も言わずに助けてくれて…好きだったんだ。


でも、その全てが蛍と重なって興味がないと自分に言い聞かせた。


だから、自然と自分から距離を作っていたんだと思う。


でも、そんな事に彼は気づかなくっていつまでも優しくしてくるから、怖かった。


このままじゃ同じ事の繰り返しになってしまうと思ったから。


好きなのに、傍に居たいのに、友達になりたいのに…私ってバカだよね。

クラス替えの時に風神君は「二年もお前と同じクラスだったらいいのに」と呟いた。


あれは、私にとって特別な言葉だった。

ずっと頭から離れなかった――


そして、今年も同じクラスだった。

席は離れていたから関わりはなかった。


でも、いつも目が合った。

ふとした時、風神君を見ると決まって目が合う。


ドキッとするから急いで逸らしてしまったけど…。

そして、今に至る。


最近は、ほんとに自分勝手すぎるけれど…。

でも、憎めないのは一年生の時、


あいつが優しくしてくれたから。



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