そういう所が嫌なの
次の日になる。朝ご飯を食べていたら朔がやって来た。
もう制服に着替えて鞄も持っている。
昨日の出来事が頭に蘇り、「えっ⁉はっ⁉」と叫ぶと朔に「うるせぇ!」と怒鳴られた。
でもさ、悪いのは朔だよ。
いきなり告白なんてするから。
私はサッと用意を終わらせ、朔と一緒に家を出る。
学校に行くまでの間、緊張して黙ったままで居るとさく朔が「鞄」と言う。
「えっ?」と私が言うと「持つ」と言ってきた。
「ありがと」と呟きながら 朔に鞄を渡す。
分かっているの。
朔が私を大切にしてくれていることくらい。
朔は蛍と一緒で元がカッコいい。
だけど女子にチヤホヤされないのは、彼がわざと地味でカッコ悪い奴に見せているからだ。
なんでそうするかバカな私でも分かる。
私の傍に居るには人気者だったら蛍のように傷つけてしまうと思っているからだ。
本当に優しいよね。私の為に地味で居るなんてさ。
ずっと私に合わせてくれる。
私が地味だから地味で居てくれてさ。
きっとこんなに私を大切にしてくれてる人は朔だけだと思う。
だから、そんな朔に告白された事は嬉しいけど複雑だ。
だって、朔は私と居れば最終的に辛いだけだと思う。
彼は優しいから。
幼馴染ならまだ良かったんだよ。
恋人になれば私はきっと上手く接しられない。
いつまでに返事した方がいいかな?
朔の事が嫌いなんじゃない。好きなの。
でも、恋とは違うと思う。っていうか私、恋なんてした事ないのにさ。
分かるわけないじゃない!もう、どうしたらいいのよっ⁉朔の傍に居たい。
だけど、恋人にはなりたく…ない。怖いから。不安だから。もう嫌なの。
その時、朔が
「怖いの分かるよ。でも、俺は兄とは違うから信じてくれ!
絶対にお前の事、傷つけない。
今まで通り地味に生きるから」と言った。
だから、嫌なんだよ。そうやって私の為に朔が無理をするから嫌なのよ。
私は気づくと涙が零れていた。
「そういう所が嫌なの」と言って私は走って逃げた。
学校に着くと楓君が居た。
私が声を掛けると「おはよう。夏純ちゃん」と微笑んでくれた。
楓君は私の顔を見つめて来たかと思ったら「何かあった?」と聞かれる。
エスパー⁉と驚いていると「泣いた跡が残っていたから」と言われた。
だから、私は正直に全て話した。過去の事も全部ね。
そうしたら楓君の瞳から一滴の涙が零れて来た。
「えっ?」と私が言うと彼は、
「辛かったよね。よくがんばったよ。夏純ちゃんは悪くない」と言った。
彼の涙は綺麗だった。
見た人の心の悲しみを浄化するようなそんなものだった。
そこに風神君がやって来て「これ。時雨から」と言って私の鞄を渡された。
朔の事を思い出す。酷い事、言っちゃったな。
帰ったら謝ろう。