無理しているだろ
雪空公園に着く。ここからは班で雪空町を探索する事となっている。
二時半までに雪空公園にまた着けばいいの。
綺麗な空、氷の城、何をしても楽しくない。寂しくて悲しくて辛い。
私ってばどうしちゃったのかな…。こんなのいつも通りじゃない。
アイドル部のマネージャーになるまでの人生、ずっとこんなもんだったよ。
小説や音楽さえあれば寂しさなんて笑い飛ばせていたじゃない。
なのに…どうして?こんなに苦しいの?こんなの…私じゃない。
昼ご飯の時も大好きなメニューなのに素直に喜べない。
楽しみだった事、全部が苦しさで辛い。
颯が「夏純?」と心配そうに顔をのぞき込んで来る。嬉しいのに、辛い。
私は彼からサッと離れてしまう。颯が傷ついたような顔をしていた。私、最低だ。
どうしよう。颯に嫌われたかもしれない。その時、翠ちゃんが颯に話しかける。
颯は最初は無視していたが今はもう、普通に話している。お似合いだな…。
私と颯が仲が良い事ってきっとありえないよね。傍に居るなんて迷惑だよね。
もういいや。この胸の痛みなんて捨ててしまおう。そう思うのに…消えない。
痛くて仕方ない。なんで?忘れてしまえば楽なのに…。どうして捨てられないの?
集合時間になり次はバスに乗る。私達は二号車だ。五号車まである。
バスでは翠ちゃんが颯の横にサッと座る。楓が私に声を掛けようとした瞬間、
「俺の隣に来て」と天海君に言われる。楓は私達の後ろに座る。
天海君はバスが発車すると「七夕、無理しているだろ」と言ってきた。
え?バレていたのと驚いていると「ずっと暗い。ぎこちない」と言われる。
目線を逸らすと「翠が風神を好きって言ったくらいからだろ」と当てられる。
つい「関係ないじゃん」と私が言うと天海君が「そうだけど…心配、なんだ…
お前が、暗かったら…なんか、その…俺、嫌」と言った。
途切れ途切れのその言葉を理解するには時間がかかった。
理解したとたん顔が熱くなる。それって、どういう事?と思っていると
「と、友達が暗いと嫌って事だよ!」と天海君に言われ納得する。
そりゃそうだよね。私ってば勘違いするところだった。
天海君に「風神の事、好きなのか?」と聞かれ私は固まる。好きってどういう?
「レンアイの話?」とぎこちなく私が聞くと彼が頷く。なら答えは一つだ。
「私、恋とかした事ないからよく分からない」
天海君は「そっか」と呟き私達は無言のまま、雪桜島にバスは向かって行く。
雪空町から二時間で着くと先生が言っていた。寝ようかな…。
寝れば辛い事を忘れられるって思ったから。
次に目が覚めたのはトンネルの中だった。今、雪空町と雪桜島の間らしい。
⁉私、天海君にもたれていたみたい。天海君は窓側だから窓にもたれて寝ている。
バレて、ないよね?私がそっと離れると天海君は目を覚まし「…はよ」と言う。
眠そうな顔をしている。とくに目が!髪も寝癖ついているし!
なんかめっちゃ天海君って無防備な気がする。それに…可愛い?気もする。
彼があくびをしただけなのにドキッとしてしまう。最近、私の心臓おかしいよ。
後ろの楓をチラっと見るとぐっすり寝ている。
天海君が「七夕って誕生日いつなんだ?」と聞かれ「九月二十六日」と答えると
「一昨日だったのか」と言われ頷き「幸せな誕生日だった」と言うと天海君は
「どんな事があったんだ?」と聞かれ朔からプレゼントを貰った所から話し出す。
最後は小夜君の四つ葉のクローバーの話で終わらせた。
天海君は視線を逸らし、何故か寂しそうに「良かったな」と言った。
私はそれに気づかなかったふりをして笑顔で頷いた。
長い沈黙が訪れる。小夜君と居る時は別に気にならないのに…。不安になる。
何か話さなきゃって思ってしまう。今日の私、変だな。
天海君が「翠に言われていた作戦は俺に任せて…七夕はゆっくり休んで」と言う。
彼は優しい。だからこそ、心配だよ。ずっと悲しそうだから。
私の事をこんなにも気遣ってくれるなんて…不思議だよ。
彼にメリットはないはずなのに…。むしろ負担になるはずなのに。




