彼を好きにならなきゃよかった
楓は陰で二人の会話をずっと聞いていた。
気付くと涙が流れていた。蛍先輩は本当に夏純が好きなのね。
楓が入る隙間なんてないくらいに…。彼を好きにならきゃ良かった。
夏純が羨ましいとつい思ってしまう。あんなに地味で平凡なのに…どうして?
あの子の周りにはカッコいい子ばかりが集まる。
その時、近くの草むらで泣いている奴が居るのに気づいた。
そっと見ると…⁉時雨 朔だった。
なぜ朔君が居るの⁉あっ…そういえば朔君も夏純が好きなのよね。
だから、かな?とその時、朔君がこっちに気づき「朝影さん。今の見なかった事にしてくれません?」と言ってきた。
彼の瞳が楓の心に刺さった。
楓は「朔君。私の方こそ誰にも言わないでよね」と言うと「当たり前だろ」と言い去って行った。
朔君はどうなの?夏純を好きになって良かったと思っているの?
そんな疑問が口の中に残ったまま楓も逃げるように家に帰った。
何度も何度も涙が溢れて止まらなくて…好きだったって気づいた。
本気で恋していたのかもって思った。
でも、それはきっと朔君もそうなのよね。
朔君…泣いていたな。大丈夫かな?なんか心配だな。
恋って…辛いな。
蛍先輩は『朝影と居ると落ち着くわー』と言ってくれた事もあったっけ…。
本当に思わせぶりなだったな。蛍先輩は。ほんっと酷いよ。また涙がこみ上げる。
蛍先輩のバカっ!あんな事、言わないでよ。気軽に家に呼ばないでよ。
楓を変えたのは蛍先輩のくせに…今更ほっとくとかひどいよ…。
そんな事ないよね。楓に魅力が無いから悪かったのよね。
楓の気持ち、どこに捨てればいいのかな?この好きはどこにいくの…?




