あなたが楓に光を与えてくれた
楓だよ。本当にバカだな…。
好きな人の為に好きな人の好きな人に会わせようとするとか。
目頭から涙が溢れて零れていく。
蛍先輩が好きなだけなのに…。
蛍先輩に明後日の朝、八時に月桜公園に集合してくださいねと送っておく。
涙は止まらない。夏純の事も大好きだし蛍先輩も好きなの。
恋と友。難しい選択を押し付けられたの。
楓は、迷いながら友を選んだ。
だって、初めての友達だったから。
美少女と言うマスコットのような楓じゃなく楓という人間を認めてくれたのが夏純だった。
蛍先輩は楓にとって初恋だった。
クールで優しい彼の傍に居るのが幸せだった。
最初はこの気持ちが何か分からずたくさん悩んだ。
そして、恋だって気づいた。
初めての事ばかりで戸惑っていた。
蛍先輩に好きだって伝えないまま転校した。
蛍先輩に好きになって欲しかった。
でも、どんなに頑張っても無駄だった。
蛍先輩の頭にはいつも夏純が居る。
恋バナをすれば夏純の事ばかり話している。
ほんとに好きなんだなって思った。
楓だって夏純が好き。
彼女のknightになりたいと思ったのは本当だよ。
夏純にバレたからもう男装するのはやめた。
女子の制服を着る。
前髪も可愛く切って髪はまだ伸びていないけれど今はボブカットって感じだ。
だから、可愛く見えるようにブラシをしたら終わり。
そうして、一人泣きながらベッドで眠りにつく。
陰口とか悪口を言う人ってほんとなんなのかな…。
人の気持ち考えれないの?
最低なんじゃないの?なんで皆、同調するの?
そんなにハブられるの怖い?
楓も、小学生の頃いつも悪口を言われていた。
地味子だって言われていた。
事実なのは分かっていた。
前髪が長いからお化けと言われた事もある。
でも、中学生になって蛍先輩に出会った。
彼は同じ美術部だったから。
最初は、住む世界が違う人だって思っていた。
皆の人気者でカッコいい彼と地味でなんの取り柄もない自分。
だけど、彼が言ってくれた。
「絵、綺麗。それに朝影って瞳がめっちゃ綺麗だよな」と蛍先輩が言ってくれた。
絵を描く時は楓、ピンで前髪を留めていたんだ。
ぼさぼさな楓の髪と長い前髪を見て蛍先輩が「オシャレについて俺が教えてやる」と言って家に連れていかれた。
普段クールな彼が楓なんかの為に頑張ってくれた。
本当に嬉しかったんだ。
そして、蛍先輩にイメチェンされて次の日学校に行くと
「あの子、めっちゃ可愛い!」と一気に人気者になった。
そして、人間の醜さを痛いほど知った。
皆、見てくればっか気にしているのだ。
彼はクスっと笑いながら
「これは俺が凄いんじゃない。お前の元が良かったんだ」と言ってくれた。
蛍先輩は楓を褒める。
褒められるのに慣れていなかった楓は、彼に恋してしまった。
あの、見せかけのクールと本当の優しさに。
なのに…どうしてなの?
散々楓を振り回しておいて褒めておいて…。
夏純が好きなんて話…聞きたく、なかったよ。
蛍先輩のバカ。
でも、今はもう大丈夫だよ。
夏純の事を大切にするって決めたから。
その為に楓、陰口や悪口や嫌がらせなんかに勝つんだから!
楓もあの日の蛍先輩みたいになりたいの。
大好きなあの人みたいになるの。
優しくてバカでクールぶっていて正義感が強くて手先は器用なのに、
人間付き合いは不器用なあの人みたいになりたいの!
いつか言いたい事もあるの。
ずっと好きだったっていつか言いたい。
そうしたらあの人、なんていうかな…。
きっと優しく笑ってくれるんだろうな。
ありがとうって言いながら楓の事を振るんだろうな。
それでもいい。だから、伝えたいな。好きだって言いたい。
今もずっと言いたい。でも、言えない。
怖くて臆病な楓には言えない。
『地味子には掃除がお似合いだわ。だからあたし達の分もやっといてよね』
『うわー地味子が居るだけで空気が重くなるんですけどーきゃはは』
散々言われてきた心無い言葉が頭をよぎる。
忘れるようにしていたのにな…。
でも、蛍先輩の言葉も蘇る。
『よっ!今日も一人?じゃあ隣、座ってもいいか?』
『朝影の良い所、俺たくさん知っているんだぜ』
あなたが楓に光を与えてくれた。
だから楓は今、笑えている。




