白い部屋の会話⑦
「その辺は君に任せるよ。」
「任せる…ですか。」
「うまくしてくれれば、それでいいから。」
そう言うと、森の番人は去って行った。いつもこうだ。話し合いの時に、実現が難しそうな内容になると全てエミル任せにする。
エミルはため息をついたが、その足で森の奥に向かった。小人たちの住む大木は、白い部屋から歩いて1時間ぐらいのところにあった。木の高さはそれほどでもなく、幹の色は桃色がかっている。
大木に近づいて挨拶すると、主であるチョカが出てきた。
「エミル。どうしましたか。」
エミルは、今しがた白い部屋の中で交わされた会話を、チョカに伝えた。
「ああ。小人たちのことですね。前からこちらの方にも話があったのですが、他にも住人がいるので難しかったのですよ。でも、最近新しい枝ができて、古い枝の一部が使われなくなったので、そちらならお貸ししてもいいですよ。」
エミルは丁寧に御礼を言って、そこから立ち去った。
エミルは1人、森の道を歩いた。一体自分はどうしたいのだろう。毎年似たようなことを繰り返し、他人のの要求を言われるだけ言われ、それを叶えるために頭を下げる。この後もそんなことを繰り返すのかと思うと、気が重かった。
森の木々の隙間からは、木漏れ日が黄色の光を落としていた。