表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第五話 「重なる運命」


────「宿屋」

────【勇者♀目線】


 どうしてだろう。

 先程まで、絶えず会話していたリンくんなのに。

 いざとなると私の胸の鼓動が激しくなった。


 「こんな感じでいいかな?」


 私は宿屋の部屋のベッドの上に仰向けで寝ている。

 そして身に着けていた下着を側の机の上に置いた。

 お腹の上には、お供のリンくんが乗っている。

 今から、汗まみれの身体を綺麗にしてもらう為だ。


 「えっと…これは、ミレーズさんの強いご希望で、ボクがお身体を綺麗にさせて頂くだけですので…。」


 あくまで…私からの依頼なので、同意のもとだ。


 「大丈夫だよ?私、余程なことされない限り、怒らないから。だから、リンくん?ちゃんと…隅々まで綺麗にしてね?」


 勇者をしていると、皆に見張られている感が強い。

 羽目を外した行動も非常にしずらいのだ。

 本当は私も反省会で騒ぎたいが、人目が怖いのだ。

 酒場を貸切に出来れば良いのだが、お金がかかる為なかなかそういう訳にもいかないのが現実だ。

 だから、私はストレスや鬱憤が溜まってきていた。


 「では…ミレーズさん?いきますよ?」


 ──バヂュンッ…!!


 「ひゃっ?!」


 楕円に近い形状だったリンくんの身体は、大きな音を立てると潰れたように液状化した。

 意識しない身体の部位が触れられ思わず声が出た。


 「リンくん…?隅々まで…宜しくね?」


 ──ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…


 まずは私の手脚を綺麗にするのであろう。

 リンくんの身体は四つに分裂してしまった。

 すると、ゆっくりとそれぞれ手脚へと這い始めた。


 「リン…くん…?ゆっくり…なんだね…。」


 ──ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…


 無言で私の手脚を覆ってしまった。

 気付いたのだが、身体を這いながら吸引していた。

 リンくんの這った後はスッキリしているのだ。

 

 「ありがとうね?私の手脚スッキリしたよ?」


 凄く丁寧で…奴隷時代のスライムとは大違いだ。

 だけど、あの乱暴にされる感じが実は好きなのだ。

 期待していたのとは違って裏切られた気分だ。

 でもまだ、手脚なので…淡い期待を持っている。


 ──ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…


 分裂していたリンくんの身体が集まり始める。

 あっという間に私のお腹の上でリンくんに戻った。

 これからが私にとってのメインディッシュなのだ。

 リンくんはどんな風に綺麗にしてくれるだろう?

 私としては乱暴に身体の奥まで綺麗にして欲しい。


 「ねぇ…リンくん?乱暴にしても良いからね…?」


────【魔王♂目線】


 全く…。

 勇者とあろう者が、スライムに懇願するとは…。


 ボクはミレーズをおもちゃに出来ると喜んでいた。

 だが…手脚を綺麗にしている際に気が付いた。

 他の女達とは違い何か様子がおかしい。

 過去に、スライムに堕とされた事があるのだろう。

 ボクが這い回るのを全身で悦んでいるようなのだ。


 これからボクは、ミレーズの身体を覆うつもりだ。

 大体、首の辺りから下腹部までを予定している。

 その際のミレーズの反応が楽しみではある。


 「お願いします…。リンくん…♡早く来てぇ…♡」


 ボクに手招きをしながら、おねだりまでし始めた。

 従順なおもちゃに堕とすまでが愉しいのだが…。

 堕ちている状態では焦らすくらいしか手はない。


 ──ポヨンッ!!


 「えっ…?」


 ミレーズのお腹の上でボクは跳ねて見せた。

 その様子を不思議そうな表情でミレーズは見守る。


 ──バヂュンッ!!


 跳ねた勢いのまま、ボクは身体を液状化させた。


 「なになになに…?!」


 突然のボクの行動に驚いたミレーズが声をあげた。


 そのままミレーズの身体に向かいボクが降り注ぐ。

 あっという間にミレーズの身体はボクで覆われる。

 

 「あ…っ♡リンくん…♡はぁっ…はぁっ…。」


 何かを期待するかのようにミレーズは声をあげた。

 気にせずボクは、ミレーズの汗ばんだ身体を、ゆっくり焦らすように綺麗にし始めた。


 あれ?

 ミレーズの身体を綺麗にしていてボクは気付いた。

 身体から発している魔力が何故だか凄く懐かしい。

 この世界で魔力は、人格や魂に依存している。

 故に二人として同じ魔力は、あり得ない。


 「リン…くん?どうしたの…?早く…続きを…。」


 感じ取った魔力について、ボクは思い出していた。

 その為、ミレーズの身体を綺麗にする動きが止まってしまっていたようだ。


 あぁ…。

 そうだ、この懐かしい感覚。

 今、久しぶりに触れて思い出した。

 正直、まだボクは信じられずにいた。

 この魔力…。

 絶対に忘れてはいけない、最愛の妻のものなのだ。


 「ねぇ…?リンくん??どうしちゃったの?」


 まだボクが人間で、勇者だった頃…。

 アイシェスという名の幼馴染の妻がボクには居た。

 後にも先にも…ボクの妻はアイシェスだけだ。


 魔王になる事を決め、彼女と娘を残して去った。

 生活するには一生困らないお金や財宝を渡して。


 風の噂で、娘が結婚したと言う話は聞いたが、妻の話は全くと言って良いほど耳にしなかった。

 存命と思われる間、手下達には、絶対に妻と娘には手を出さないように厳令を敷いていた。


 それから、数千年以上は経っている。

 だが、一度たりとも妻のアイシェスや、娘のリンシェナの魔力には遭遇した事がなかった。

 それがだ…。

 今、息を荒くして恍惚とした表情で、ボクにおねだりしているミレーズが、妻の生まれ変わりだと言うのか。


 ボクのミレーズをおもちゃにする計画は、白紙撤回せざるを得ない。

 数千年ぶりに、偶然にもめぐり逢えた妻だ。

 今度こそ、本気で愛し抜きたい。

 まぁ、スライムの身体なのだが…。



────【勇者♀目線】


 ──ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…


 動きを止めていたリンくんがやっと動き出した。

 でも…何故か身体の外側ばかりを綺麗にしてくる。

 身体の中を…乱暴に奥まで綺麗にして欲しいのに。


 ──ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…ヂュッ…


 「リン…くん?身体の…隅々まで綺麗にしてね?」


 普通、スライムなら容赦なく胎内まで入ってくる。

 なのに、リンくんは紳士的でそんな感じじゃない。

 あまりに焦ったくて、思わずお願いしてしまった。


 「えっと…。あのぉ…ミレーズさん?ボクとしては、隅々まで綺麗にさせて頂いているつもりなのですが…。」


 いやいやいや…。

 まだ私の身体の中…綺麗にして貰ってないから。

 リンくんに、そう言ってしまいそうになった。


 「じゃあ…。リンくん?ここと…ここは…?まだ…だよね?」


 私は下腹部の二箇所を…分かりやすく指差した。


 「あ…。そこは…。ボクはミレーズさんの恋人ではないので…入るのはちょっと…。なので、綺麗にすることはできません。」


 その言葉を聞いた瞬間、私は絶望で一杯になった。

 気持ち良くして貰えると、私は心待ちにしていた。

 リンくんに身体を綺麗にして貰っている間ずっと。

 それも…一言であえなく打ち砕かれてしまった。

 

 でも…恋人なら良いってこと?

 ふと言われた事を思い返した。


 リンくんなら…スライムだが恋人にして良いかも。

 一秒でも早く…気持ち良くして貰いたかった。

 もう、手段なんか選んでいる場合じゃなかった。


 「リンくん!!」


 「はい?」


 「今から…リンくんは、私の恋人だよ??」


 「えっ?!」


 「これは…ご主人様からの命令だから!!早く…ここ♡と…ここ♡…の中っ♡奥まで…念入りに綺麗にしてっ…♡」


 「はい…。ミレーズさん、分かりました…。」



────【魔王♂目線】


 図らずも…アイシェスと恋人同士になれた。

 これでアイシェスの記憶が蘇ると嬉しいのだが。


 「あのね…?ミレーズって呼んで欲しいな…。」


 「じゃあ…ミレーズ?いくよ…?」


 そう言うとボクは、ミレーズの身体の中にゆっくりと自分の身体を入れた。


 「あ゛あ゛あ゛あ゛っ…♡」


 ミレーズが待ってたかのような雄叫びをあげた。

 ボクは構わず…身体の中を綺麗にし始める。

 すると、そこでミレーズが奴隷時代に受けたと思しき、痛々しい傷痕を見つけてしまった。


 居ても立っても居られないボクは魔法を唱えた。


 「治療!!」


 すると、みるみる傷痕が消えていく。

 見つけられて良かったとボクは内心、喜んだ。

 だが、ふと気づいたのだ。


 自分はスライムの身体だということを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ