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始まり。
「ねえ、見て!!」
君は、空を指差し微笑んで言った。
「そんなに走ると危ないよ」
無邪気な君を、僕はいつも呆れながらも愛おしく思っていた。
「ここの夕焼けは本当にいつも綺麗だね」
空を見つめる君の顔は、本当に可愛くて、美しかった。
次はどこの空を見に行こうか。
僕たちは、そんな話をしながら川沿いの石段に腰かけた。
君は静かに僕の肩に頭を預けて、しばらく静かな時間が続いた。
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始まりは、何でもない日だった。
いつのものように会社へ向かうバスに乗り、音楽を聴きながら空を眺めていた。
ああ、今日もまた憂鬱な一日が始まる。
そんなことを考えながら小さくため息をついた。
『次は、〇〇です。』
バスの運転手の声が聞こえ、僕はバスを降りた。
「これ、落としましたよ」
気付かぬうちに落としていた僕のハンカチを拾い、優しく肩を叩いたのが君だった。
「あ、ありがとうございます。」
汚れたハンカチを手で払う彼女に小さく会釈をして、僕はハンカチを受け取った。
それが僕たちの出会いであり、これからの人生の始まりだった。