6話 変人高校生、謹慎。
こってりと絞られた後、ゲーム禁止の処置を受けた。
「そう、俺は歩く屍.......刀.......刀........」
「おはよ!剣斗!!!」
「刀.......刀.......ゲーム.......ゲーム.......」
「け、剣斗??どうしたの?大丈夫??」
「ゲーム........」
ゲーム禁止とは、あまりに酷ではないか。
もちろん、俺にも非はある。なんなら100%俺が悪い。
だが、禁止はやりすぎだろ.......!!
いつもなら親は家にいることがそうそうないから慢心していた.......。
「もぉ、剣斗!返事をしてよ!!」
バシッ!!!!
後頭部に痛みが走る。
「な、なにすんだよ!!!」
あまりの痛みに外ということを忘れて声を荒らげる。
近所の人が訝しげにコチラをみているのに気づき、冷静になる。
「け、剣斗が返事をしてくれないのが悪いんでしょ!?」
普段なら、謝って終わりだった。
だけど、俺はゲーム禁止ということもあり無性に腹が立っていた。
「だから、通学路で話しかけてくるなっていつも言ってるだろ!?迷惑なんだよ!」
言ってから、しまったと思った。
唯の大きい瞳が潤み出し、涙がつう、と頬を伝う。
慌てた謝ろうとするがそれよりも早く唯はそのまま無言で学校に走り去ってしまった。
........大人気ないことをしてしまった。
周囲から受ける白い眼差しから逃げるように足早で学校に向かう。
学校に着くといつもの景色が広がる。
いつもと違うのはきっと、俺と唯だけだ。
唯は目が少し腫れていて、グループの女子に心配されている。
それ以外はいつもの日常、変わらないクラスだ。
唯に言った言葉がずっと頭で反響する。
ずっと黙りこくった俺の様子を見かねたのか、海が声をかけてくる。
「どしたん?話、聞こか?」
一昔前に流行ったネットジョークをこんな時に言うのが無性におかしく、昨日の夜からの一部始終を海に伝える。
「それは剣斗が悪い。.......俺ならそんな思いさせないのになぁ」
海はきっと唯のことが好きなのだろう。
唯の心が弱っている?今がチャンスなのだろうが海は自分の実力で唯を落とそうとしているのか、弱みに漬け込む真似はしていない。
「唯ちゃんもこんな朴念仁相手だと難儀だねぇ.......」
「ん?なんか言った?」
「いや、なにも?剣斗も周りを見れるようになりなね」
何か生暖かいものを見るような目で俺と唯を交互にみている海。
何がしたいのだろうか.......。
このあとも学校で唯に話しかけるわけにもいかず、ひたすら唯を目で追うやばいやつとかしてるうちに
気づいたら体育の時間になっていた。
体育教師は生徒指導の化身とすら言われる佐々山。
されど唯の様子が気になり目で追っていたら、肩に手が置かれた。
ぎぎぎと効果音が出そうなほど壊れたブリキ人形のように振りかえると、鬼がいた。
「なぁ、冨樫よ。俺に一つ教えてくれないか?」
にこやかに笑ってるはずなのに目は笑っておらずギラギラ獲物を見ている肉食動物のようだった。コワイ
「は、はい!なんでしょうか教官!」
空気が凍る。
次いでくすくすと笑い声がどこからともなく溢れる。
しまった。
「随分と言いたいようにいうじゃねぇか。せっかく注意で済まそうとしたのになぁ?」
「はい........」
「俺だって、鬼じゃねぇしよ?こっそりの注意で済まそうとしてたけどよ?冨樫、お前、反省の色なしか?」
コワイコワイ
鬼以外の何者でもない......
「お前さんが天宮を好いているのは十分伝わった。だがな?俺もお前ら怪我をさせないために頑張って話しているんだ。ちゃんと聞いてほしいなぁ!?」
この鬼、わざと大きい声を出しやがった。
バシバシと男子の視線、女子コートからの視線が体に突き刺さる。
これ、体罰だろぉ........
実際、昔は体罰が禁止だったが今のご時世いじめ、馬鹿な動画投稿者が後を立たなかったため、矯正目的の体罰が許可されてはいるのだ。
まぁ、この件で体罰されることはあり得ないのだが。
「すみません」
こういう時はひたすら謝るに限る。
「まぁ、俺も大声出して悪かった。次からは気をつけてくれよ」
大声で言った内容は取り消せないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!
だが、このいたたまれない空間から逃げ出したいのでこの後の授業はつつがなく進めた。
サッカーの授業だったはずなのにキックボクシングになりかけてたけど.......
リアルでお前、ボールな!ってのは初めて聞いた.......
帰りのHR終了後、命からがらに学校から逃げる。
「酷い目にあった......」
自分の部屋でひとりごちる。
ゲームが封印された今、やることがない。
「寝るカァ........」
ベットに入り目を瞑る。
無意識のうちに疲れが溜まっていたのかすぐに意識が暗転した。
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