5話 変人侍、命の危機
目に入るのは、レンガでできた天井。もちろん、
「知らない天井だ。」
ノルマ達成に安堵しながらも、ここがゲームの世界で良かったと、心底思う。
現実だったらこんなにネタに走ることはなかっただろう。
辺りを見渡すと、そこには何もなかった。
どうやら、ここはどこかの通路らしい、ということはわかってもそれ以外のことは何もわからない。
「ここ進まなきゃなのかぁ.......」
幸にしてあかり?はあるのか暗くて何も見えないということはなかった。
前か後ろ、どちらへ進もうか。
迷っていると、視界が暗転した。
目を覚ましてもまだ闇が続いたままだが、本能的にわかる。
母が帰ってきたと。電源プラグを抜かれたのだと。
「ねぇ、剣斗。」
恐怖のあまりセットギアを外せない。
開けた先にはきっとサイラムの小面よりも怖い般若の青をした母が待ち受けていることだろう。
どうする?寝落ちしたふりするか!?
「起きてるの、しってるからね?」
脳が凍りつきそうなほど冷えついた声。
相当おかんむりに違いない。
だが、起きているのを知っているのはブラフだろう。
このまま狸寝入りを続けていれば大丈夫!!!
「3......2......1...」
「はいっ!起きています!!!!!!」
無理だ。怖い。狸寝入り、オレできない。
「あら、やっぱり起きていたのね。」
しまった!ブラフだったかぁぁ!!!!
「セットギア、外しなさい。」
嫌だ。外したくない。絶対に目の前には般若が降臨している。
「はい。」
されど、絶対的な捕食者の前で無防備にいる小動物はいない。
だが、抵抗しても無駄なので渋々外すとやはりというべきか、怒った顔の母がいた。
幸い般若になる2、3歩手前だったようだ。
「お母さんがなんで怒ってるかわかる?」
今回は特に怒られることをした記憶がないが、脳細胞を総動員して考える。
.......まさか!
「な、なんで唯に始めたこと教えなきゃいけいんだよ......」
海がきっと母さんに告発したのだろう。
やましいことをしていないと理解しつつも語勢は弱まってしまう。
「はぁ?なんのこと?その話は後で聞くわね。」
墓穴を掘ったか!?なら、なんなんだ.....
「ねぇ、今、何時だと思っているの?」
時計を見ると、20:00。
まさか......
「夕飯の時間、1時間すぎてるんだけど?」
にこやかに告げる母さんの目は笑ってはいなかった。
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