二夜目 2
真悟の隣にパイプ椅子を置き、電話の受話器を取る国士。
「先輩、この電話を使っていいですか?」
「その電話はスピーカーが付いている取材用だからな。 会話が部屋中に筒抜けだぞ。 それでもいいのか?」
「俺は別に構いませんよ。 時間が勿体ないですから」
そう言ってダイヤルを回す国士。
何度か呼び出し音が鳴った後、相手が出た。
『はい、こちら神奈川県警』
全員の視線が国士に集中する。
「ウサギはいますか?」
沈黙。
暫くしてから、相手が詰問する。
『あんた、誰だ?』
「大黒様」
再び沈黙。
『因幡は、外出中です』
「彼に伝えて下さい。 今夜、遊ぼうと」
そう言って電話を切る国士。
集中する視線を無視して真悟に向き直って言った。
「先輩、編集長に伝言を頼みます。 『問題が解決するまでの間、暫くバイトを休みます』と伝えて下さい」
「お、おう、分かった」
手早く荷物をカバンに入れて出口へと向かう国士。
外で待ち構えているパトカーに乗り、「行ってくれ」と一言。
そのまま発車するパトカー。
「……ネットゲーマーって一体」
彼に頼んだ事を後悔しつつある真悟であった。