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呪殺夢  作者: FROGGER
22/22

後夜

 「こんばんは」


 本堂にいた者達が、声の主を見て驚いた。


 「大田黒士、なぜここに?」


 「お前達が一番知っている筈だ」


 長がぎりっと歯ぎしりする。


 「ワシらの最後をあざ笑いに来たのだろうな」


 本堂に響く笑い声に、周りの者が気色ばむ。


 「何がそんなにおかしいかぁ!」

 「全部だ」


 黒士の一喝に、皆がひるんだ。


 肩にかけたカバンに手を突っ込み、中身をぶちまける黒士。


 床に広がる紙の束から逃れるように後ずさる人波の中、長だけが成り行きを見届けている。


 本堂に静寂が訪れる中、長が足元の神を一枚手に取った。


 「これは……参加申し込み書(エントリーシート)


 呆けたように黒士を見る長。


 「ゲームの借りはゲームで返す。 それが俺達ネットゲーマーだ。 そうだろう?」




 本堂に沈黙が続いた。


 人々は、狐につままれたような顔で、お互いを見る。


 観念したかのように、恐る恐る外を見た男達が次々と声を張り上げた。


 「雨がやんでいるぞ」

 「川の水が引いていく」

 「すっかり元通りだ。 俺達、助かったんだ!」


 周りの笑みが、長に伝播する。


 「さぁて、と。 今から逆転勝利とシャレ込むんだ。 これから忙しくなるぞぉ?」


 皆が一斉に頷いた。




 その様子を、遠くで見ていた神主が笑顔になる。


 「神をここまで振り回すとは、恐れ入ったわ。 まっこと、バカには勝てん。 ワシの名を騙るだけはあるわい」


 笑い声をあげながら帽子をかぶり、大きな袋をかつぎ直す。


 大ぶりの木槌を一振りすると、その姿はもう無かった。


 その後、神主を見た者はいない。






 ねぇ、知ってる?


 大黒様の使いって、戸口を渡り歩く戸渡(ネズミ)なんだって。

 大黒様は、だから何でも知っているって話だよ? 





                                       (完)

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