五夜目 4
本堂の闇に浮かぶ蝋燭の光が、老婆の輪郭を形作る。
「大口を叩いてこれか、無様じゃのぅ?」
老婆の前で跪く男。
「汚名をゆすぐ機会を与えてやったものを。 今更見せしめをして事が済むと思うたか。 このたわけめ」
老婆の罵声に、身じろぎもしない男。 恥じ入っているのか、それとも……
「貴様のせいで、此度の所業が浮き世の果てまで知れ渡ったのじゃぞ? 身の程は弁えんと、のぅ?」
沈黙が続く中、老婆の影がゆっくりと後ろを向く。
「これより『呪殺夢』を執り行う。 もはやお前の居場所など、ここには無いわ。 己が無能を呪いながら去ね。 痴れ者め」
周りを取り巻く気配が一カ所途切れる。
外へと続く木戸だと察する男。
(お帰りはあちら、か)
心の中で歯ぎしりしつつ、男は逃げた。
外へ出た男は、目を疑った。
村外れの一角が、淡い光に包まれている。
脱兎のごとく光の方角へと向かう男は、とある民家の前で立ち止まると勢いよく木戸を開けた。
(ねぇ、こんな話、知ってる?)
Iチューブのメッセージが表示されたパソコンの前にいた二人が、振り向く。
「どこに言ってたんですか、運転手さん?」
「……いつだ?」
「遅いですよ、先輩?」
「いつ気付いた?」
戸口に立つ男、坂間真悟が問うた。