五夜目 3
跳津が手配したアパートの一室で、Iチューブの映像が流れる。
「何度見ても胸くそが悪くなるな」
跳津に相鎚を打ちながら映像を止める黒士。
納豆ゲーマーのアカウントを乗っ取って本人の死に様を晒すという、悪趣味極まりない所業に顔をしかめつつ、犯人に結びつく証拠は無いかと閲覧する黒士。
何度目かの確認作業をしたが、めぼしい証拠は、どこにも無かった。
「投稿されてから約一日で削除されたらしいけど、見ろよ。 閲覧数が八千万を超えてるぜ。 日本の成人全員リョナラーかよ」
「Iチューブは世界中に配信されているんだ。 これだけ興味がある奴等がいるって事か」
恐らく動画が削除されても動画のコピーがネットの世界を徘徊しているのだろう。
それを考えると、胃の辺りが重苦しくなって来る。
「今の所、犯人の一人勝ちだな。 犯行の目星が付かないどころか、世間は『呪殺夢』一色だ」
お手上げとばかりに、畳の上でゴロンと横になる黒士。
ふと横を向くと、跳津が電話をしていた。
どっかでスマホを落としたんで、ちょっと調べてみますね」
そう良いながら回したダイヤルは国際電話に繋がったらしい。
「どこにかけているんだ?」
「ロサンゼルスです。 SWATの知り合いからプレゼントして貰った奴だから無くしたくないもんで」
電話を終えた直後、ファックスが作動して一枚の紙が送られて来た。
確認した跳津が怪訝な表情を浮かべ、黒士に紙を見せる。
「これは」
一瞬、息を飲んだ後、ニヤリとほくそ笑む黒士。
「なるほど、そういう事だったのか」