五夜目 1
朝、黒士と跳津は申し合わせたように、同時に起きた。
お互い顔を見合わせた後、ゆっくりと納豆ゲーマーが寝ている方を振り向いた。
部屋に彼はいなかった。
「あいつ、どこ言ったんだ?」
「なんか嫌な予感がする。 夢の中で聞こえた悲鳴、あいつじゃないのか?」
二人は神主さんの所に行き、ここで『呪殺夢』を見た事や朝起きたら近くで寝ていた筈の納豆ゲーマーがいなくなっていた事を伝えた。
「はて、昨日はあなた方二人しか来なかった筈ですがな。 どなたじゃな、その納豆ゲーマーとやらは?」
黒士と跳津は、再び顔を見合わせた。
「奴の事だ、恐らく俺達を尾行して神主さんには会わずに部屋に来たんだろうな。 『呪殺夢』をネタにしようとここに来たら自分がそうなったとか、皮肉にも程があるな」
黒士は、そう言いながら神主さんに向き直る。
「神主さん、奴を探しに行って来ます。 噂通りになってないと良いんだけど」
二人は、そう言って外へ出た。
「私も同行します。 この辺りには底なし沼がありますからな、気を付けなされよ」
神主さんも後から付いてくる。
草原の真ん中で立ち止まる神主さん。
「ここから大小の底なし沼が点在しております。 もう戻られよ」
そう言って、くるりと後ろを振り向く神主さん。
「どうやら、そうも言っていられないみたいですね」
黒士を怪訝な表情で見た神主さんは、ふと黒士が指さす方向に顔を向けた。
そこの沼だけが、赤く染まっていた。
草原の真ん中に、立ち入り禁止の立て札と共に黄色と黒のテープで隔たれた一角。
林立する棒の先に、沼を示す赤い布が巻かれ、何かの祭典かと見まごう程。
一台の救急車を先頭に、葬列のように連なる捜査関係者達の車が続く。
その様子を、悲痛な面持ちで見送る神主さんが印象的だった。